『トーマの心臓』製作発表会見レポート

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少女漫画界のカリスマ・萩尾望都の傑作漫画を劇団スタジオライフが 7 度目の再演!!


劇団スタジオライフによる『トーマの心臓』の再演が決定し、このほど神保町にあるティーサロンにて製作発表会見が開かれた。 

少女漫画界の巨匠・萩尾望都の不朽の名作を原作に採り、原作の世界を忠実に3次元へと昇華させた同作は、劇団スタジオライフの代表作にして出世作。会見は、第1部を原作者の萩尾氏を迎えてのトークショー、第2部を劇団員たちによる記者会見という2部構成で行われた。 

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イベント開始前から会場内はエレガントな雰囲気。作品の舞台となるドイツの寄宿学校="シュロッターベッツ高等中学"の制服に身を包んだ劇団員たちが報道陣一人ひとりに紅茶をサーブするなど、原作ファンならピンとくる趣向を様々に凝らして、劇中世界へといざなう。




まずトークショーでは、萩尾氏とスタジオライフの演出家・倉田淳がざっくばらんに懇談を。両者は 1996 年の初演時以来 18 年間にわたり交流しているだけあり、最初から打ち解けた様子で会話の花を咲かせていった。 

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 今でこそ世界中で愛され高く評価されている『トーマの心臓』だが、約 40 年前に少女コミック誌上で連載を始めた当初は読者の人気アンケートで最下位となり、打ち切りの危機を何度も味わったとのこと。そんな秘話を聞いた倉田が「テーマが(時代の)先へ行きすぎていたのでは...」と言うと、萩尾氏は「当時の担当編集さんからも『小学生の女の子が読むんだよ!?』とよくたしなめられましたが、自分が小学生の頃はこれくらい読んでた憶えがありましたし、"人が面白くないと言っても自分は面白いと思う!"と強気でした。自分のことしか考えないものですから(笑)」と。そのユーモラスな語り口に記者席からも笑い声が絶えない。 

 また、倉田が昨年LAで購入したという英語翻訳版『トーマの心臓』単行本を取り出し、漫画カルチャーの世界的広がりと近年の状況について言及。萩尾氏は「ヨーロッパを漫画漬けにしたいですね」と野望(!?)を明かし、その上で、これからも長く活動していくためには「筋力と眼力の強い作家が生き残るんじゃないでしょうか。バレリーナなどと同じで我々も、何日か休むと手が描き方を忘れてしまうので、絶えず描いていたいなと思います」と、40 年以上最前線で漫画界をリードし続ける作家らしい凄みを覗かせた。 

 トークの締めには、萩尾氏から今公演へ向けてのメッセージが。「『トーマの心臓』はスタジオライフと倉田さんに出会って開花した、ものすごく幸福な作品だと思います。ふつう漫画からは読者もだんだん離れていくものなのに、舞台という新しいジャンルで別の方向に組み立てて下さって、8度も上演して頂いて。スタジオライフのファンとしても嬉しいし、原作者としてもこんな幸福なことはありません。今回の舞台も楽しみにしております」と、力強いエールを送った。

続く記者会見では、劇団代表の河内喜一朗、脚本・演出を担当する倉田淳、およびメインキャストの面々が登壇。 


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 河内は「1996 年の『トーマの心臓』初演時、我々がそれまでやってきた小劇場での反応とはまるで違うお客様からの反応を浴び、"これが本当の芝居の反応なのか"と肌で感じたことを思い出します。以来この作品は、再演するたびごとに、前回にはない新たな発見をもたらしてくれました。レゾンデートル(存在意義)をいかに見つけるか――というテーマに向かって邁進することが、舞台上の役者たちを 10代の少年に見せてくれます。スタジオライフにとって、いつの時代もずっと演じ続けるべきテーマではないかと思っております」と作品への思いを語った。「毎回新たな発見がある」という点に倉田も強く同意し、「この作品をスタジオライフのライフワークにさせて頂けたら有難い限りです」と、『トーマの心臓』とともに歩んできた劇団の 18 年間、そしてこれからに想いを馳せた。  役者たちからも一言ずつ挨拶。1997 年から断続的に主人公ユリスモールを演じてきた山本芳樹は「大切に大切に演じさせて頂きたいと思います」と述べ、Wキャストでもう一人のユリスモール役となる松本慎也は「入団 10 年の全てをかけて最高の『トーマ』にしたい」と意気込んだ。 

 一方のエーリク役は、2003 年以来 11 年ぶりのエーリク役起用となるベテラン・及川健と、入団2年未満の久保優二、田中俊裕という新人2名の抜擢によるトリプルキャストで送る。この両極端なキャスティングが、"相手役が替われば芝居が替わる"スタジオライフ名物ともいえるWキャスト・トリプルキャストの醍醐味を、今回も味わわせてくれそうだ。「11 年ぶりのエーリク役です。...11 年です!!(笑) 演劇界の先輩方にはおいくつになっても女学生役を演じきる方がいらっしゃいますが、私もその域に入ってきたのかなと。とにかく若々しく、これが最後だと思って頑張ります」(及川)。 

 また、4年前の公演でユリスモールを演じた青木隆敏が、今回は『トーマの心臓』きっての悪役サイフリート役にキャスティングされているのも見どころ。サイフリートはサブキャラクターでありながら、悪魔的魅力に満ち、かつ物語の暗部を担う重要なキーマンだ。青木は「この4年間で僕の中の"悪い種"が育ってしまった結果の配役だと思います(笑)。僕自身の心の堕落をしっかりと受け止めて、悪の華を咲かせたいと思います!」と、爆笑と期待を誘った。 

 (文・上甲薫) 

 

 劇団スタジオライフ『トーマの心臓』は、

5 月 24 日~6 月 22 日:東京・紀伊國屋ホール、

7 月 11 日~7 月 13 日:大阪・シアター・ドラマシティにて上演。 



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