雪がまだ残る開幕を迎えた2月中旬、男七人が熱く接戦し合うM&Oplaysプロデュース「サニーサイドアップ」の稽古場を訪れた。
荒川良々を主演にある男の一生を描くこの物語。作・演出を務め、また自らも出演するノゾエ征爾はこう語る。
「荒川さんのことを考えていたら一本の物語ができました。
赤堀さんや小野寺さん、はえぎわ男子もそこに重ねていったらさらに膨らみました。
このメンバーだからこその作品に行き着きました。
ある男の一生と、彼を取り巻く男たちの、壮大?な喜劇です。」
と。
訪れたこの日も物語は、可能性の膨らみを増していっていた。
父親役の町田水城と息子役の荒川良々が会話をしながら進めるシーン。
通したあと、町田からノゾエに「右手はこういう動き方のほうがいいかな」と問いかけ、動きが決まっていく。また荒川も「この方がいいんじゃない」と提案し、ノゾエの意図するものを体現していく。
荒川の、よりわかりやすく、より面白くしようと積極的に提案していく姿が印象的だった。
また別のシーンでは、赤堀雅秋と小野寺修二がソフトクリームを食べながら歩くのだが、ここはベテラン二人。息の合った動きで物語を進めていく。
しかし通したあと、赤堀からノゾエに「ここは段差があると思って登る動作をしたけどどういうイメージかな」と問いかけると、ノゾエは「溝のイメージです」と応える。それに対し小野寺は「僕はどぶ川だと思っていました」と応える。「溝のイメージでいこう」と細かい部分も全員のイメージを合致させ詰めていく姿は、他のはえぎわ男子たちにもいい影響を与えているようだ。
こうして若手のキャストには、今回の現場が、先輩たちのいい演技を盗むチャンスの場となっている。
いつものメンバーとは違う刺激を貰えるのがプロデュース公演のいいところだ。
プロデュース公演について、プロデューサーの大矢亜由美はこう語る。
「普段、劇団で芝居づくりをしている若い(本当はそんなに若くもない?)俳優さんたちは、演出家がいるにしても、どうしても仲間うちで認め合うような作業に終始してしまう傾向があるように思います。
プロデュース公演では、そんな彼らより、スキルも経験も上の俳優さんと組むことができる。外の風を入れることで、思いもよらない化学反応が起こり、
稽古の現場もいい緊張感の中で行えるし、何より自分より上のレベルの方からは学ぶこと、盗めることがたくさんあると思います。
千載一遇のチャンスを、是非、つかんでほしい!まして今回は稽古場に3人も演出家がいるんですから!何という贅沢!
稽古場では、怖い(?)先輩たちに刺激されて、はえぎわの劇団員も段々目の色が変わってきてます。
もっともっと怖い思いをして、もっともっと面白いものを作って欲しい!心からそう思います。」
先輩俳優たちは自らに挑戦し、若手俳優たちは先輩に必死で追いつこうとし、どんどんと熱を増していく稽古場。
こうして紡がれていく男七人の物語。
本多劇場にて男たちの成長を見届けたい。