話題のミュージカルに次々と出演、加藤和樹ロングインタビュー

歌手として、そして俳優として、幅広く活躍している加藤和樹さん。

今年は『ロミオ&ジュリエット』ティボルト役で本格的海外ミュージカルに初挑戦。
さらにウィーン・ミュージカル界の巨匠、クンツェ&リーヴァイの新作『レディ・ベス』では、ヒロインの相手役として抜擢されるなど、ミュージカル界でも注目度が急上昇中!

そんな加藤さんですが、そもそもは「ミュージカルに向いていない」と思っていた、そうです。
彼がミュージカルに目覚めたきっかけ、初代としていまや伝説になっている『ミュージカル テニスの王子様』の話、『レディ・ベス』のオーディションでのこと......

今、彼がミュージカルに対して抱く気持ちをたっぷり語ってもらいました!




●加藤和樹 ロングインタビュー●


AJ-katoukazuki0201.JPG――『ロミオ&ジュリエット』を経て、来春には『レディ・ベス』で"ミュージカルの殿堂"帝国劇場の舞台に! ただ以前、加藤さんはミュージカルに苦手意識があるとおっしゃっていたような。

「ずいぶん昔にあるミュージカルを観たとき、自分が思い描いていたものとは全然違っていてうまく馴染めなかったんですよね。こっちがお芝居にグググッと入り込んでいるのに、「急に歌いだすの?」と(笑)。それがミュージカルなんですが、僕は当時ちゃんと観たことがなかったので。お芝居はお芝居として観たいのに、というのが素直な感想だったんです。加えて、自分はダンスが苦手ということもあり、ミュージカルには向いていないと、積極的にはなれなかったんですよね」

――そういう気持ちが変わったきっかけをお聞きしたいです。

「去年、『コーヒープリンス1号店』というミュージカルに出演して。それも、最初お話をいただいたときは正直迷いました。でも原作の韓国ドラマはオファー前から観ていて面白そうな舞台だと思ったし、僕の本格デビューのミュージカル『テニスの王子様』の上島(雪夫)先生の演出・振付だしということでお受けして。そこで衝撃を受けたのが、主演の山崎育三郎くんとの出会い。彼とはほぼ同い年なんですが、歌が素晴らしいのはもちろん、芝居がすごく良かったんですよ。芝居と歌がバラバラに存在しているような感じじゃなくて、ちゃんと内面から出てくる芝居と歌だった。すごく自由で"そこに生きている"と思ったし、同世代の人でこんなに表現力豊かな人がいまだかつていただろうかと」
――山崎さんのような表現ができるならミュージカルもいいな、と?

「彼の歌は、アーティストとしての僕が歌で表現できる表現の幅をさらに超えていたので、うらやましいというかちょっと悔しかった部分もありました。負けたくないって気持ちもありながら、どうやったらこんな風になれるんだろうなと思って。一緒にご飯を食べているときとかに聞いたら、彼は子供の頃からミュージカル畑で育ってミュージカルスターになるのが夢で、何の知識もない状態でここまで来てしまった僕とは根本が違った。やっぱりちゃんと知ることが大事なんだなと思って、そこからちょっとずつミュージカル自体に興味を持ち始めました」

――うーん、山崎さんの影響力は絶大ですね。

「そんな中でちょうど『ロミオ&ジュリエット』のオーディションがあって。初演には山崎くんが出てたってことで、ひょっとしたらまた共演できるチャンスかもしれないと。わからないなりに声楽を習いにいったりしながらオーディションを受けて、うれしいことに勝ち取ることができました。大きいミュージカルのカンパニーで山崎くんとまた一緒にできる! って。そこで学ぶことはたくさんあるだろうし、自分としてはほんとに新たな挑戦だと思いました。で、蓋を開けたら、彼は出なかった(笑)」

――肩透かしを食らったような?

「僕、驚かそうと思って、キャストが発表になるまで黙っていたんです。そしたら逆に驚かされちゃって。「いっくん(=山崎)あの、実は僕今度ロミジュリに出ることになりまして。でもいっくん出ないんだね」ってメールしたら「えー、マジかー。ごめん」って返ってきましたね(笑)。別に「ごめん」ではないんですけど」

――(笑)。という『ロミジュリ』は、出演していかがでしたか?

「城田優くん(主演)が引っ張っていくカンパニーの中で、ミュージカルのイロハを学びました。慣れないことをたくさんしましたね。小池(修一郎)先生にはよく「空気が回っていない」という言い方をされていたんですけど、普段の自分の歌い方とは全く違う歌い方が求められました。ある意味自分の武器を封じられて、その中で自分なりの良さをどう出そうかと。歌唱指導の先生も、僕が持っているロックの部分と、ティボルトというキャラクターが持つカッコよさや哀愁を混ぜ合わせた方が絶対いいと言ってくださったので、そこを見つけるのが課題でした。ティボルトは気持ちの流れがすごく明確になっているし、ソロの歌の中でそれが如実に出ていて受け取れる部分がたくさんあったので、役作りは全然大変ではなかったんですけど、ただその気持ちを持ったままどう歌に乗せていくかというのが一番大変でした」

――ティボルト役は城田優さんとのWキャストでした。同じ役を演じる同士であり、城田さんがロミオ役のときはライバルであり。

「彼とはテニミュ以来、7、8年ぶりの共演だったので、負けたくないという気持ちがありました。「やっぱりティボルトは加藤和樹でよかった」と言ってもらえるようなティボルトにしたかった。ああいう多くのミュージカルファンの方が観に来られる作品で、新参者の僕が出てきて「なんか違うわ」みたいな感じになってもイヤなので、自分の存在がミュージカルという舞台の中で認められることが目標になりましたね」
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――グンとさかのぼった話になりますが、その城田さんとかつて共演したミュージカル『テニスの王子様』が加藤さんの本格デビュー作でした。テニミュにはどういう経緯で出演しようと?

「僕はもともと「テレビに出たいな」ぐらいの安易な理由で「ジュノンスーパーボーイコンテスト」を受けて、何も知らないまま芸能界に入ったんです。ドラマにちょこちょこ出たりしたんですけど、特に目標もなかったし、自分が思い描いていた世界と違うと感じて、半年ぐらい芸能界を離れました。そのとき友達から借りたCDのザ・ベイビースターズというバンドの曲にすごく感銘を受けて、自分もこういう人が変わるきっかけになるような存在になりたいと思って。それで音楽経験のないままアーティストを目指し始めた頃に、たまたまテニミュのオーディションがあって。それまで人前で歌ったこともないから舞台度胸もつくだろうというので受けてみた、という経緯ですね」

――加藤さんがテニミュで演じたのは人気キャラクターの跡部景吾。加藤さんの跡部が特に人気を得て"伝説の跡部"になったのは、ご自分ではなぜだと思われますか?

「それはやっぱり僕がもともと『テニスの王子様』という漫画が好きで、一番好きなキャラクターも跡部だったってことが大きいと思います。跡部をやるのは自分しかいないと思っていたので、オーディションにも「だって俺、跡部だし」みたいなテンションで行ったんですよ(笑)。自己紹介でも「跡部景吾です」って言いましたし。やっぱり跡部への愛というか、熱量だと思います」

――インパクトが強烈だっただけに、卒業後の"跡部からの脱却"というようなことには苦労しませんでしたか?

「やっぱり最初はとまどいましたよね。自分の初ライブをやるときも、来てくれたみんなが果たして加藤和樹というアーティストを見に来ているのか、跡部をやっていた加藤和樹を見に来ているのかというところで自分でも葛藤があったり。昔はブログで「うちのオカンが」って書いたりすると、「跡部様は"オカン"なんて言わない!」って離れちゃう人もいたりして。僕も1テニプリファンとしてイメージは裏切りたくないし、そこはファンの使命だと思っています。ただ矛盾するようだけど、俺は跡部を演じて、舞台に立っていたのは跡部だけど、俺自身は跡部じゃない。今も"かとべ"って言われたりして、やったことに変わりはないから、うん、俺"かとべ"だしって(笑)。でもそれが全てではないですからね」

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―そして来春に控えるのは世界初演の話題作『レディ・ベス』。ミュージカルが苦手だった加藤さんが帝劇の舞台に立つというのが感慨深いです!

「全然、実感ないんですけど(笑)。ちょうど『ロミジュリ』の稽古中にオーディションを受けました。すごくいい経験をさせていただいて別の作品にトライしてみたい気持ちがあったので、是が非でも受けたいと。結果がどうであれ、今の自分がどれぐらいできるのか試したいという気持ちがありました」

――オーディションでは作曲者のシルヴェスター・リーヴァイさんが特に加藤さんをプッシュしたという風に伺ったのですが。

「僕はよくわからなかったんです。「ユー、いいね!」みたいな感じでは確かにあったんですけど(笑)、僕としては全然自分を出せなかったオーディションだったので、僕のことを励ましてくれているのかなと。「ああ、自分が情けない」と感じてました」

――しかし蓋を開けると、ヒロインの相手役のロビン・ブレイクという大役に決定! そしてあの、山崎育三郎さんとのWキャストです。

「僕は最初、出演は決まったものの役は最終決定ではなくて。でも山崎くんがロビンに決まっているというのは聞いていたので、「やった! いっくんと共演できるならそれだけでいい」と思ってたんです。そしたらまさかのWキャスト、同じ役というので、共演できないじゃん......って。いまだ片思い中です(苦笑)」

――タイプの異なる加藤さんと山崎さんが同じ役というのが見どころですね。

「僕も意外で、「え、僕がロビンですか!?」って言いましたもん。オーディションではロビンの曲を歌ったんですが、精一杯の爽やかさを全面に出しながらも「やっぱダメだ、こっちじゃない」と思いましたし(笑)。吟遊詩人のロビンは、人を楽しませたり元気にさせる、明るい太陽のような存在なんです。僕は自分で思うに太陽ではなく月なので、真逆のキャラクター。でもだからこそできるロビンもあるはずだし、当然、山崎くんとは絶対違うロビンになると思うし。アーティストとして、歌で人を元気にしたい、救いたいという思いは僕も同じなので、そこは通ずるところがあると思います」

――音楽と芝居の二本柱で活動してきた加藤さんに、ミュージカルというフィールドが本格的に加わりました。この先の加藤和樹はどう進んでいきますか?

「仕事を始めた頃は、自分は歌だけやれればいいし、芝居は別に必要ないと思っていたんです。「どっちがやりたいの?」って聞かれたら「歌」と即答していたし。でも芝居をやり続けていく中で、演じた役によって生まれる感情とか、そこでしか得られないものがたくさんあって。つながりも増えるし、学ぶことがすごく大きかった。『仮面ライダーカブト』をやっていたとき、大変お世話になった田崎(竜太)監督に「和樹くんは勘が鋭いから芝居は絶対続けた方がいい。やめないでね」って言われたんです。そのときはよくわからなくて、「あ、はーい」って曖昧な返事をしたんですけど、今なら言ってもらった意味がなんとなくわかる。人から見た向き・不向きって自分ではわからないんですよね。だから芝居をすることは、ある意味自分の使命という気がします。もちろん歌を歌いたいという気持ちが根本にあるので、僕は死ぬまで歌い続けます。でも傍らで、役者も続けていく。どっちも100%でやってますという言い方を今はしているんです。ひと作品演じ終わったらだいたい曲を1曲作るようにしているし、互いにすごくいい影響を与えていると思いますね。ミュージカルは、その僕がやっている歌と芝居の融合体なので、まだまだ自分に足りない部分はあるけど、これからもやっていきたいです」

取材・文:武田吏都




加藤さんのインタビューは、11月28日に発売されたビジュアル・マガジン AJ [エー・ジェー] Vol.2にも掲載されています。
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『AJ Vol.2』その他のコンテンツはこちら。

【CONTENTS(予定)】
エル(INFINITE)×蜷川実花
イ・ジュンギ、ノ・ミヌ
MayDay
ミュージカル俳優の競演
 加藤和樹、水田航生、ユナク・グァンス(超新星)
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   ほか

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加藤さんの今後の予定はコチラ。

●「真田十勇士」
 1/7(火)~2/2(日) 青山劇場(東京)
 2/7(金)~19(水) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)

●ミュージカル「レディ・ベス」
 4/11(金)~5/24(土) 帝国劇場(東京)

●2014年Kazuki Kato LIVE"GIG"2014TOUR
 6月6日(金) 松山サロンキティ
 6月7日(土) 福岡BEAT STATION
 6月8日(日) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
 6月10日(火) 梅田クラブクアトロ
 6月11日(水) 金沢AZ
 6月13日(金) 仙台CLUB JUNKBOX
 6月15日(日) 札幌cube garden
 6月18日(水) 柏PALOOZA
 6月20日(金) Zepp DiverCity TOKYO
 6月22日(日) 名古屋ダイアモンドホール


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