20世紀を代表する歌手のひとりであり、俳優としても数々の名作を遺したフランク・シナトラ。彼の楽曲を全編に使用したブロードウェイ・ミュージカル『カム・フライ・アウェイ』が8月15日、兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールで幕を開けた。
シナトラがアカペラで歌う『スターダスト』で、一瞬にして劇場がニューヨークのナイトクラブへと変わる。そこから約30曲、未発表曲も含めたシナトラの名曲の数々に合わせて、4組のカップルのさまざまな恋愛模様がダンスパフォーマンスだけで表現されていく。ダンサーは、思わず微笑むような初々しいカップルや、倦怠期のカップルのぶつかり合い、恋愛下手な若者......と、セリフはなくても豊かな表現力で彼らの心情を表す。ダンス界で名を馳せる世界的振付家、トワイラ・サープの振付によるダンスは、アクロバティックな中にも繊細な感情が込められ、ときにセクシーに、ときにコミカルに、息つく間もない展開で観る者を引きつけ、心を揺さぶっていく。中でも、ノンストップで最高潮の盛り上がりを見せた後、『マイ・ウェイ』でシナトラがステージに浮かび上がるフィナーレは格別。まるでシナトラがずっとステージを見守ってきたかのようで、その美しさは鳥肌が立つほどだ。