●ミュージシャンに注目●
『カム・フライ・アウェイ』の魅力のひとつに、バンドによる生演奏があります。すでに録音されたシナトラの声と息を合わせて演奏するのは簡単なことではありません。ミュージシャンを直撃しました。
『カム・フライ・アウェイ』の魅力のひとつに、バンドによる生演奏があります。すでに録音されたシナトラの声と息を合わせて演奏するのは簡単なことではありません。ミュージシャンを直撃しました。
まず最初にコメントをご紹介するのが、音楽ディレクターを務め、ピアノ演奏も受け持つ、ロブ・クックマン(Rob Cookman)。最近では、『キューティー・ブロンド』『マンマ・ミーア!』『ムーヴィン・アウト』(いずれもアメリカツアー)、『メノポーズ・ザ・ミュージカル』(シカゴ)、『スゥイング!』(日本ツアー)、そしてシルク・ドゥ・ソレイユの『バナナ・シュピール』(オフ・ブロードウェイ。バンドリーダー、アレンジャー、作曲も兼任)の音楽ディレクターを務めています。
ロブ・クックマン
「ブロードウェイ作品の多くでは、"クリック・トラック"というメトロノームのようなものをイヤフォーンで聴きながらテンポをキープします。『カム・フライ・アウェイ』が普通と違うのは、フランク・シナトラが録音した歌は1曲のなかでゆっくり歌ったり早く歌ったりしていて、クリックがそれに合わせているところです。その変化についていかなければならないんですよ、ミュージシャンは。50回ほどやってようやく慣れましたけど、最初の頃は苦労しました」
シナトラの音楽に対してはどのような印象を抱いているのでしょうか。
「シナトラが活躍したのは、祖父母の時代。幼い頃、祖父母が歌ったりレコードを聴いていた記憶があります。音楽性が豊かなので、飽きがこない。ブロードウェイでは1週間に8公演やるので曲に飽きてくる作品もありますが、この舞台ではそのような気持ちにならないんです。シナトラの歌で思い浮かぶのは、"フレージング"、つまり、言葉の音符への乗せ方です。マイルス・ディヴィスも自伝の中で何度も、"シナトラのフレージングは天才的だ"と書いてますね。あと、真偽は定かではないけれど、『カム・フライ・アウェイ』が最初にブロードウェイで作られるとき、キャストに女性シンガーもいたらしいんです。『アンフォゲッタブル』(録音されたナット・キング・コールの声と、娘ナタリー・コールによるデュエット)のように、デュエットを試みたんだけど、シナトラのフレージングが独特なので、大変苦労したようです」
『カム・フライ・アウェイ』では、オーケストラ・ピットでなく、舞台上でバンドの演奏が行われます。
「オーケストラ・ピットなら、雑誌も読めるんだけど(笑)。舞台に出ていると、襟は大丈夫か、とか身なりに気を配らなければならない。ピットにいるときは、ブルーカラーの感覚だけど、舞台上ではパフォーマーの気分ですね。バンドメンバーの動きも、トワイラ・サープ自らが振付を行っているんですよ。サックス奏者は"動きが少しずれてる!"なんて、よくダメ出しされてます」
と、名指しされたサックス奏者のひとり、ジュリアン・タナカ(Julian Tanaka)からもコメントをいただきました。ラスベガスのネバダ大学に在学中の24歳。日本人のルーツを持ち、地元ラスベガスおよびアメリカ全国の音楽祭に参加する一方、クリス・ポッター、ボブ・シェパード、ボビー・シュー、ボビー・マックチェズニー、ウェイン・バージェロン、ジム・ピュー、中川英二郎らといったミュージシャンとの共演を果たしています。
ジュリアン・タナカ
現代の若者の目に、シナトラはどう映るのでしょうか。
「シナトラの時代の音楽を勉強するのは、ジャズにとっては大事だし、周囲のミュージシャンには年配の方が多いので、よく曲を聴いたり、ダンスを見たりしていました。『カム・フライ・アウェイ』をやるようになって、さらに理解が深まりましたね。彼の印象を端的に言うと、"伝統、文化"。時代の先端を行く人だったと思うし、歳を重ねてからも、その仕草は変わらなかった。声を聴いただけでそう感じます」
『カム・フライ・アウェイ』より 右から2番目がジュリアン・タナカ
(C)Jun Wajda
ロブ・クックマン
「ブロードウェイ作品の多くでは、"クリック・トラック"というメトロノームのようなものをイヤフォーンで聴きながらテンポをキープします。『カム・フライ・アウェイ』が普通と違うのは、フランク・シナトラが録音した歌は1曲のなかでゆっくり歌ったり早く歌ったりしていて、クリックがそれに合わせているところです。その変化についていかなければならないんですよ、ミュージシャンは。50回ほどやってようやく慣れましたけど、最初の頃は苦労しました」
シナトラの音楽に対してはどのような印象を抱いているのでしょうか。
「シナトラが活躍したのは、祖父母の時代。幼い頃、祖父母が歌ったりレコードを聴いていた記憶があります。音楽性が豊かなので、飽きがこない。ブロードウェイでは1週間に8公演やるので曲に飽きてくる作品もありますが、この舞台ではそのような気持ちにならないんです。シナトラの歌で思い浮かぶのは、"フレージング"、つまり、言葉の音符への乗せ方です。マイルス・ディヴィスも自伝の中で何度も、"シナトラのフレージングは天才的だ"と書いてますね。あと、真偽は定かではないけれど、『カム・フライ・アウェイ』が最初にブロードウェイで作られるとき、キャストに女性シンガーもいたらしいんです。『アンフォゲッタブル』(録音されたナット・キング・コールの声と、娘ナタリー・コールによるデュエット)のように、デュエットを試みたんだけど、シナトラのフレージングが独特なので、大変苦労したようです」
『カム・フライ・アウェイ』では、オーケストラ・ピットでなく、舞台上でバンドの演奏が行われます。
「オーケストラ・ピットなら、雑誌も読めるんだけど(笑)。舞台に出ていると、襟は大丈夫か、とか身なりに気を配らなければならない。ピットにいるときは、ブルーカラーの感覚だけど、舞台上ではパフォーマーの気分ですね。バンドメンバーの動きも、トワイラ・サープ自らが振付を行っているんですよ。サックス奏者は"動きが少しずれてる!"なんて、よくダメ出しされてます」
と、名指しされたサックス奏者のひとり、ジュリアン・タナカ(Julian Tanaka)からもコメントをいただきました。ラスベガスのネバダ大学に在学中の24歳。日本人のルーツを持ち、地元ラスベガスおよびアメリカ全国の音楽祭に参加する一方、クリス・ポッター、ボブ・シェパード、ボビー・シュー、ボビー・マックチェズニー、ウェイン・バージェロン、ジム・ピュー、中川英二郎らといったミュージシャンとの共演を果たしています。
ジュリアン・タナカ
現代の若者の目に、シナトラはどう映るのでしょうか。
「シナトラの時代の音楽を勉強するのは、ジャズにとっては大事だし、周囲のミュージシャンには年配の方が多いので、よく曲を聴いたり、ダンスを見たりしていました。『カム・フライ・アウェイ』をやるようになって、さらに理解が深まりましたね。彼の印象を端的に言うと、"伝統、文化"。時代の先端を行く人だったと思うし、歳を重ねてからも、その仕草は変わらなかった。声を聴いただけでそう感じます」
『カム・フライ・アウェイ』より 右から2番目がジュリアン・タナカ
(C)Jun Wajda