ストーリーは実に明快です。
まず舞台設定の説明ですが、同じ場所で物語は展開し、場面転換することがありません。つまり、オープニングからエンディングまで全編にわたって、ひとつのナイトクラブの様子が描かれていくわけです。ナイトクラブと聞いて、思い浮かべる空間は人それぞれかもしれません。ここでは、ダンスフロアがあって、生バンドが演奏していて......という、昔ながらのエレガントかつゴージャスな社交場をイメージしましょう。こんな感じです。↓
(C)Joan Marcus
後ろに生バンドが陣取っていて、手前ではクラブに来た客が踊っています。酒場らしく、右にはグラスも並んでいますね。
物語で描かれるのは、このナイトクラブに集ってきた人々の一夜のドラマです。特に主人公がいるわけではありません。言わば群像劇で、出会ったばかりの初々しいカップルから、互いへの関心を失ったようなアンニュイなカップルまで、タイプの異なる4組の男女に焦点を当てて、それぞれの愛のあり方を見せていきます。
4組のカップルを簡単に紹介しましょう。(青が男性、赤が女性です。)
・マーティー 若くてロマンティックなお調子者。
ベッツィーにフォーリンラブ。
※彼だけが客ではなく、ウェイターです。
・ベッツィー 若くて純粋。マーティーにフォーリンラブ。
・シド 大人の男。ベイブの恋愛相手。
・ベイブ 魔性の女。シドの恋愛相手。
・ハンク ケイトの昔馴染み。
・ケイト ハンクの昔馴染み。
・チャノス ベイブと一緒に来店。スリムが新しい恋人に。
・スリム チャノスの新しい恋人。
マーティーとベッツィー (C)Jun Wajda
シドとベイブ (C)Jun Wajda
ハンクとケイト (C)Jun Wajda
チャノスとスリム (C)Jun Wajda
観客にとっては、物語展開を味わうというより、恋愛ゲームを目撃する感覚に近いと思います。「このふたり、イチャイチャし過ぎ!」とか、「もっと素直に愛情を表現すればいいのに」とか。相手を乗り換える不届き者がいて、観ているこちらまでドキドキしてしたり、人と人が恋に落ちる瞬間を目の当たりにして、胸がキュンとしたり。まさに"ラブワゴン"の人間模様に見入ってしまう、あの感じです。
ここで再認識しておきたいのが、『カム・フライ・アウェイ』がセリフのないダンス・ミュージカルであり、演じているキャストが皆、俳優ではなく、ダンサーだということです。しかも、バレエをしっかり体に叩き込んだ筋金入りのアーティストがそろっているところに、この舞台の強みがあります。激しい躍動と、微細なニュアンスの両方を表現する彼らのパーフェクト・ボディは、言葉よりも雄弁に物語を伝えてくれるのです。
そして、舞台上で起こることすべてをリードするのがフランク・シナトラの楽曲だということも忘れてはいけません。登場人物の心情にぴったりと寄り添う歌声があるからこそ、ダンサーの表現はいっそう輝きを増すのです。
まず舞台設定の説明ですが、同じ場所で物語は展開し、場面転換することがありません。つまり、オープニングからエンディングまで全編にわたって、ひとつのナイトクラブの様子が描かれていくわけです。ナイトクラブと聞いて、思い浮かべる空間は人それぞれかもしれません。ここでは、ダンスフロアがあって、生バンドが演奏していて......という、昔ながらのエレガントかつゴージャスな社交場をイメージしましょう。こんな感じです。↓
(C)Joan Marcus
後ろに生バンドが陣取っていて、手前ではクラブに来た客が踊っています。酒場らしく、右にはグラスも並んでいますね。
物語で描かれるのは、このナイトクラブに集ってきた人々の一夜のドラマです。特に主人公がいるわけではありません。言わば群像劇で、出会ったばかりの初々しいカップルから、互いへの関心を失ったようなアンニュイなカップルまで、タイプの異なる4組の男女に焦点を当てて、それぞれの愛のあり方を見せていきます。
4組のカップルを簡単に紹介しましょう。(青が男性、赤が女性です。)
・マーティー 若くてロマンティックなお調子者。
ベッツィーにフォーリンラブ。
※彼だけが客ではなく、ウェイターです。
・ベッツィー 若くて純粋。マーティーにフォーリンラブ。
・シド 大人の男。ベイブの恋愛相手。
・ベイブ 魔性の女。シドの恋愛相手。
・ハンク ケイトの昔馴染み。
・ケイト ハンクの昔馴染み。
・チャノス ベイブと一緒に来店。スリムが新しい恋人に。
・スリム チャノスの新しい恋人。
マーティーとベッツィー (C)Jun Wajda
シドとベイブ (C)Jun Wajda
ハンクとケイト (C)Jun Wajda
チャノスとスリム (C)Jun Wajda
観客にとっては、物語展開を味わうというより、恋愛ゲームを目撃する感覚に近いと思います。「このふたり、イチャイチャし過ぎ!」とか、「もっと素直に愛情を表現すればいいのに」とか。相手を乗り換える不届き者がいて、観ているこちらまでドキドキしてしたり、人と人が恋に落ちる瞬間を目の当たりにして、胸がキュンとしたり。まさに"ラブワゴン"の人間模様に見入ってしまう、あの感じです。
ここで再認識しておきたいのが、『カム・フライ・アウェイ』がセリフのないダンス・ミュージカルであり、演じているキャストが皆、俳優ではなく、ダンサーだということです。しかも、バレエをしっかり体に叩き込んだ筋金入りのアーティストがそろっているところに、この舞台の強みがあります。激しい躍動と、微細なニュアンスの両方を表現する彼らのパーフェクト・ボディは、言葉よりも雄弁に物語を伝えてくれるのです。
そして、舞台上で起こることすべてをリードするのがフランク・シナトラの楽曲だということも忘れてはいけません。登場人物の心情にぴったりと寄り添う歌声があるからこそ、ダンサーの表現はいっそう輝きを増すのです。