★★★かねこのぶろぐ★★★
「わが星」は、2009年に三鷹で初演された柴幸男主宰の"ままごと"旗揚げ公演。この作品が2010年の岸田國士戯曲賞を受賞し、大変な話題となったのは記憶に新しいところ。
さて、今回待望の再演が決定し、東京公演は大盛況のうちに終わりましたが、この後、三重、名古屋、北九州、伊丹と全国を回ります!
観た人たちを次々と魅了する「わが星」はいったいどのように作られたのでしょう?
作・演出の柴幸男さんと、音楽を担当している□□□(クチロロ)の三浦康嗣さんのお二人に、音楽の視点から貴重なお話を伺いました。
-「わが星」の楽曲は柴さんが三浦さんにお願いして実現したと聞きましたが-
柴:僕って言うより制作の宮永が三浦さんに「テーマ曲をお願いしたいんですけど」って、僕の知らないうちに。
三浦:知らないうちだったんだ!俺、いまそれ知った(笑)
柴:いつかやってもらえたらいいかもねと言う話はしてたんですけど。そしたら次の公演で□□□テーマにいけるんで、と言う話がきて。
三浦:そうだったんだ。僕は、柴くんが"toi"と言うユニットでやってた「四色の色鉛筆があれば」の短編を観たりしてたんですけど、柴くんの劇団を立ち上げる第一弾で長編の作品を作るので、それのテーマ曲を作って欲しいって言われた。
-おふたりは旧知の中だそうですが-
柴:いやいや、あれは嘘です。幼なじみみたいになってるけど、旧知ではないです。2008年の暮れくらいですね、初対面したのは。僕はもともと□□□を聞いてたんですけど。招待状をキッカケに知り合ったので、たかだか3年か4年くらいなんで、旧知ではないです。
三浦:まぁでもモノは言いようかなと。
柴:確かにこの企画でセッティングされた人ではないんで、もともと知っていたと言えば旧知なんですけど。
三:僕は演劇人脈とか、柴くんは音楽人脈とかそんな昔からなかったからね。
柴:ないです、ないです。
-三浦さんが今回参加しようと思ったのはどんなところからですか?-
三浦:もともと友達に紹介してもらった時に柴くんから、「反復かつ連続」って作品のDVDをもらったので、見てすごい面白いなと思って。その後、2010年1月の終わりにシアタートラムでやってた「四色の色鉛筆~」を観に行って、面白かったからお疲れ会しようよ、と。ウチでご飯作って飲もうよみたいな感じで。
柴:その時系列だったんですね。
三浦:その時系列で間違ってないと思うよ。それで仲良くなって、その流れで頼まれたから。しかも柴くんの芝居って基本的に音楽を使ってないんですよ。舞台美術やセットもほとんどなくて、逆にないのがいいなと。下手にあるとダサくなっちゃう。いい感じにならなかったりするんで。はじめは、映画のエンディング曲みたいなイメージで作ってと言われたんだけど、それだとあまりオモロくないなと思って。丁度その時デモで制作中だった「00:00:00」と言う□□□の楽曲で2、3分の歌詞が入ってないインストバージョンがあって。時報があってそれにメロディとかビートとかそういうのが被さって音楽になるって感じだから、これを分解して柴くんが自分で音楽ソフト使って作れればいいかなと。
柴:「反復かつ連続」は全部僕が自力で編集してやってたんで。楽器は使えないですけど音を編集したりはしてたんです。
三浦:(柴くんは)構造的にものを考えて劇を作る人だから、ドラムならドラムだけのパート、ギターならギター、ベースならベースと言うように音だけバラバラに渡して出来るんじゃないかなと。あとは柴くんが構築して劇を作って、本番も柴くんが演奏するんでいいかなと。結果、いま二人で演奏はやっているんですけど。
柴:その予想どおりの作品ができたから面白かったですね。全編音がないか、全編流しっぱのどっちかですね、きっとぼくの芝居は。今まで音響を使わない作品が多かったけれども今回はほとんどずっ鳴ってる状態で、その状態でどうするかっていう作品になったんだと思います。
三浦:逆にずっと音楽鳴ってたらウルサイじゃん。だけど時報って音楽なのかどうなのか微妙なとこだから。この作品の場合音楽に聞こえるじゃん、時報って。そこが面白いね。最初の時点でずっと時報が鳴ってるくらいがいいかもって言ってたの、覚えてる?
柴:あ、でもオンオフが難しくなるなーと思ってたんで。だったら時報だけがずっと流れてたりしたら面白いかもって思ってました。
三浦:(時報が)消えるとそこにまた違う意味が生まれちゃうからね。
柴:鳴らしたら流しっぱです。
三浦:すんごーい(音を)小ちゃくしたりとかして。あと実は時報には三種類あって、本物の時報と、ピアノの時報とシンセの"ポ・ポ・ポ・ポーン"だけ抜き出した三種類。 実はみんな気づいてないと思うけど。
柴:使い分けているんですけどね。飽きがこないように。結構気づかないんでしょうね。こだわってやっているところとか。
-(初演の時)稽古には三浦さんも参加されていたのですか?-
三浦:いや、稽古はぜんぜん行ってないです。小屋入り直前くらいにしか見に行ってないです。
柴:(三浦さんは)丁度その時アルバム制作中で、僕は稽古中だったんで。もらった音のネタでどうやって構成していくか。言葉では相談してないんですけど、他のアルバムの曲を聞いたりして、それがプレッシャーになったりアドバイスになったりしながら稽古場で作ってました。作っていく過程でのやりとりは実はほぼないです。
-創作の過程ですが、音楽が先にあったのですか?-
柴:いや、同時なんですよ。1分くらいのデモは先にあったんですけど、それを聞きながら書き始めて。
三浦:バラバラの素材を僕が送っていくわけだから。
柴:それも稽古で使いながらやってくと、また新しい曲が3分くらいに増えてきて。それをまた聞きながら書いてって感じで。同時にできたので、どっちが先っていうのはないですね。
三浦:僕もなんとなく行き詰まったときに柴くんにどんな作品なの?って聞いたり。歌詞とかあんまりこだわりないんで。イメージが最初からあるわけじゃないから。柴くんって時間が伸び縮みする感じがすごい上手なんですよ。時間とか空間が広くなるっていうのがあって。視点がわぁーっとミクロからマクロに行く感じとかが柴くんっぽいなぁと思って。なんとなく思いついて(歌詞を)書いたらその部分が劇中に使われていたりとか。
柴:(曲も芝居も)だいたい同時くらいに出来ましたね。こっちが初通ししたくらいで完パケしたCDが出来たって聞いて。
三浦:完成したタイミングが一緒だったよね。
-制作が別々だったのにどちらも完成はほぼ同時だったんですね-
柴:そうなんです。制作は別々なんです、ほんとうは。でも僕の中では相当共作した感じで、独立した作品ではぜんぜんないです。(曲がなければ)こんな話にはならなかったし、こんな風には作れなかったですね。
三浦:ぼくもよく周りに言ってて、誰も理解してくれないけど。自分の「エブリディ」(「everyday is a symphony」)と言うアルバムとこの「わが星」はわりと双子みたいな気持ちではあるんだけどなって言うんですけどどう双子なのかみんなわからない。
-最後になりましたがメッセージやお知らせがあれば教えて下さい-
柴:東京公演はありがたい事に当日券でも(完売で)見てもらえないほどになりまして心苦しかったのですが、このあと、日本全国で行く公演はまだお席がありますので、全国のいろんな方にぜひ見てもらいたいですね。
三浦:僕も地方公演に全部ついて行くんで。□□□好きな人はぜったい見に来ないと損するよ。
柴:そうなんですよね!□□□こそ、あんまり大阪とかで見られないじゃないですか。
三浦:□□□ライブ来るよりこっち来たほうがいいよ。
柴:いや、それはどうかと思いますよ(苦笑)
三浦:だっていいもん、こっちの方が。
舞台写真:撮影/青木司
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