【演劇ニュース】
劇団☆新感線プロデュース『港町純情オセロ』が4月15日、大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA!で開幕した。本作は、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『オセロー』を原作に、舞台を戦前の関西らしき場所にある港町に置き換えて構成。脚本を手がける青木豪とは2008年の『IZO』以来、2度目のタッグとなる。
1930年、場所は戦前の関西のどこか、ヤクザたちが集う港町。病院の箱入り娘・モナ(石原さとみ)と結婚し、幸せな日々を送る藺牟田(いむた)組の組長・藺牟田オセロ(橋本じゅん)。そんな中、次期若頭候補でナンバー2の伊東郷、通称ミミナシ(田中哲司)が、次期若頭は汐見(伊礼彼方)だという言葉に驚愕し、オセロをおとしめる陰謀を企てていく...。
シェイクスピアの『オセロー』は、ヴェニス公国軍の将軍オセローが、旗手イアゴーの策略により、最愛の妻・デズデモーナに裏切られたと思い込み、破滅の道へと陥る様を描いた悲劇だ。それを新感線は "人情悲喜劇"のテイストで上演。前半は新感線ならではのおバカなギャグや笑いをこれでもかと散りばめながら、客席を笑いの渦に巻き込む。しかし一転、伊東郷の策略に周囲が転がされていくにつれ、舞台も客席も緊張感に包まれる。
組長・オセロを務めるのは、前作『鋼鉄番長』で惜しくも途中降板することになった橋本じゅん。緩急つけたキレのある動きや、笑いを誘ったり緊張感を走らせる自在な演技は「さすが!」のひとこと。また、妻のモナを演じる石原さとみの熱演もぜひ注目にしていただきたい。けなげで純粋、疑うことを知らない愛らしい女性を、コミカルに、時に色っぽさも感じさせながら演じている。そんなふたりを、周囲の人間を巻きこみ、破滅へと引きずり落とす伊東郷役の田中哲司は、恨みに満ちた表情と演技で物語を回していく。さらには、インテリヤクザ・汐見を演じる若手ミュージカル俳優、伊礼彼方が持ち前の華と歌唱力で魅せ、大東俊介がゲイのヤクザ役で新たな一面を切り開いている。伊東の妻・絵美役の松本まりかも、モナを冷静に見守る落ち着いた女性を好演。それぞれが新たな個性をも光らせ、クセのある役柄を演じきっている。
噂に翻弄される人間の哀れな姿、人間が抱えるコンプレックスを繊細に描いた青木の脚本を、演出家・いのうえひでのりが彩り豊かに演出。シェイクスピアとはいえ、身構えずに存分に楽しめるエンタテインメント作品として仕上がっている。
公演は4月22日(金)まで。その後、4月30日(土)から5月15日(日)まで、東京・赤坂ACTシアターでにて上演。
取材・文:黒石悦子