第3回:おいしいクロムモリブデンの作り方
私、カミングアウトします。
前回のブログラストで「いよいよ核心に迫る!」なんて書いてましたが、
ノープランでした。
全くの。
核心ってなによ。
今、パソコンの前で無になってる自分がいます。
あ。
核心じゃなくて、核なら語れるよ。
クロムの核はなんと言っても作・演出の青木秀樹(47)でしょう。
青木の作品世界を表現する集団がクロムモリブデンですから。
クロムの特徴でひとつ挙げられるのは、
新作の脚本完成がに早いこと。
1ヶ月前や本番直前、はたまたどこまでも直前に脚本完成することも少なくない小劇場界で
いつも公演の3ヶ月~2ヶ月半には完成台本が配布されます。
それが22年。
旗揚げから22年間、3~2ヶ月半には完成してるんです。
22年再演なしの新作のみでそれをやってます。
そんな劇団、ちょっとないんじゃない?
それは青木が作家脳と演出脳をくっきり分けていることから来ていると思います。
青木はヘンにイメージを制約したくないので、
脚本段階に可能性を狭めることをせずに、
「巨大化して街を破壊」とか「男はペースト状になる」とか
「そんなん出来るかい!」と思うようなことも好きなだけ書きます。
この時点で演出プランはまだありません。
そして、早めに台本を完成させることで、
「じゃあこの無理難題な台本をどう料理しようか。」
と稽古場で作るのです。
なのでいくら早く台本出来ても、
作品完成に向けてはかなりの時間を擁します。
演出の仕方もちょっと特徴的かもしれません。
たとえば
「昔はナイフで沢山刺す演出だったが、最近は大鉈を振り下ろす演出になってる」
と漏らしたことがあって。
これは
「細かく演出するより、言うことはひとつだけに絞って後は役者に考えさせる」
そうです。
実際、4時間の稽古でひとつしかダメ出し(演出)しなかった時は、
「なんて大鉈振り下ろすんだ!」と驚きましたが、
そのひとことで役者全員に当てはまるダメ出しをされた時は、
「俺たちみんな青木さんの手の上じゃないか!」と思ったばかりです。
他にも
「今からやる稽古のダメ出しを先にします。」
と言って、まだやってもいない稽古のダメ出しをして、
「よし。これで一回分省けた!じゃあ今のダメ出しを受けて2回目いこう」
なんて言うんです。
むちゃぶりなんだか面白いんだか!
あと、
神妙な顔で演出を受けてる役者たち。
順番にダメ出ししていく演出。
そこで一人に演出を終えて、次の役者に演出言うかと思った真剣な面持ちで言う
「...お前、誰や?」
これが、すごい。
活字で伝わるだろうかこれ。
緊張感あるとこからの大きな外し。
なんとも言えないあの感じ。
「知らない人混ざってた!」ていうスピンオフ作品の予感すら感じます。
真剣なこととふざけたこと、
同時にやらないと気がすまないそうです。
それは作品にも反映されています。
怖いけど笑える。
泣けるけど笑える。
お客さんも同じシーン観ててもある人は爆笑。
でもまたある人は泣いてた。
なんてこともあります。
大きくは笑いだったりしますが、
ひとつの事柄で何重にも取り方がみつけられるのもクロムの特徴かもしれません。
って、観る時は何も考えずに観てください。
気付いたら笑ってますから。
そして泣いてもいるかもしれません。