【演劇ニュース】
先日までの厳しい寒さが緩んだ2月22日、大阪・サンケイホールブリーゼでキャラメルボックス『夏への扉』が初日を迎えた。アメリカの作家、ロバート・A・ハインラインの名作SFを世界初舞台化した今回のステージは、脚本・演出の成井豊が26年前の劇団旗揚げ当時「『夏への扉』のような舞台を作りたい」と劇団員に公言していたほど思い続けてきた念願の作品だ。
物語の舞台は1970年。主人公、ダニエル・デイヴィス(畑中智行)は親友マイルズ(大内厚雄)とふたりで会社を設立。"ハイヤード・ガール"と名付けたロボットの開発に成功する。しかし、婚約者のベル(岡田さつき)とマイルズが仕組んだ罠にはめられ、失意のどん底に。ダニエルは復讐を誓うが、逆に捕らわれの身となり、コールドスリープ(冷凍睡眠)の冷凍場に送られてしまう。30年後の世界で目覚めたダニエルは...。
舞台の前半、まず、ダニエルはこれでもか! というくらいの仕打ちを受ける。婚約者と親友に会社も財産も奪われるわ、何やら注射を打たれるわ、30年間の眠りにつかされるわで、身も心もズタズタ状態に。その婚約者・ベルは、世の恐ろしい女たちを大集合させたかのような徹底した悪女ぶりを披露。ダニエルは、嘆き、怒りを爆発させながらも時空間を前に前に突き進んで行く。彼の救いの存在となるのは、最愛の飼い猫・ピート。猫でありながら、体を張ってダニエルに仕えるほか、要所に笑いを提供するキーパーソンならぬ"キーキャット"となっているのも注目。そして、物語はダニエルの復讐劇へ。騙された全貌を知ることになった彼は、新たな出会い、信頼、そして時を超えて愛に気づきながら、自身の道を切り開いてゆく...。
"タイムトラベルもの"特有のドキドキ感を存分に駆使しながら、エネルギーに満ち溢れた作品。どん底状態から這い上がってゆく主人公の強さは爽快で、大逆転のサクセスストーリーには感情移入してしまう。そして、そんな状況下でも真実の愛に気づき、笑えることの素晴らしさ。なお、同作は映像化の可能性は現在ゼロとのこと。生の舞台でぜひ目にしてほしい。
大阪公演は2月27日(日)までサンケイホールブリーゼにて。その後、3月5日(土)から27日(日)まで東京・ル テアトル銀座 by PARCOでも公演。チケットは発売中。