俳優の小沢道成さんが作・演出・美術を手がける演劇プロジェクト「EPOCH MAN」の次回作『夢ぞろぞろ』が、2021年2月19日から、東京・シアター711で上演されます。そこで話を伺おうと小沢さんのもとを訪ねると、そこには大人計画の宮崎吐夢さんの姿も...。
――『夢ぞろぞろ』は田中穂先さんとのふたり芝居ですよね? 今回宮崎さんとの対談になった理由は?
小沢 僕がお招きしたんです。吐夢さんは2018年にやった、『Brand new OZAWA mermaid!』からずっと僕の作品を観てくださっていて。
宮崎 最初にお会いしたのは、ねもしゅー(根本宗子さん)のイベント楽屋かどこかで。そのあとご自分で書いた一人芝居をやられてると聞いたので、ぜひ拝見しようと。でもアンデルセンの『人魚姫』がモチーフと知って正直観る前は、「子供からお年寄まで楽しめる」けど「その中間は楽しめない作品」なんじゃないかという心配もありました。
小沢 なるほど~。でもあれはどっちかというとディープな作品でしたよね。
宮崎 そうそう。最初は割とコミカルなんだけど、最後は超ディープで中間層もしっかり楽しめた(笑)。美術も凝ってるしドラマーの方と一緒にやられていたのもすごく効果的でしたし。つまりなにが面白かったって、全部が全部面白かったです。
小沢 Twitterにも吐夢さん、「すごくいい!」って書いてくださって。えっ、めちゃくちゃ嬉しい!みたいな(笑)。それから少しずつお近づきになったって感じです。
――小沢さんは「虚構の劇団」にも所属されていますが、そもそもEPOCH MANを始められた理由は?
小沢 劇団だけだと俳優のお仕事がない時期もありますし、ちょっと攻めなきゃいけないなっていうので、自分のアピールのために2013年にEPOCH MANを始めたんです。そこで作、演出、あと美術をつくるのも楽しいなってことに気がついて。
▲小沢が制作した美術
宮崎 すばらしい。若い俳優さんで、お仕事がなくて悩んでいるという人いたら、とりあえず自分で一人芝居やってみたらいいと思うんです。観てもいない演出家のオーディション受けまくったり、安くもないお金払ってワークショップ参加するより、自分の抱えてる悩みを台本に書いて自分で演じた方がよっぽど演技の勉強になるし、演技以外の面でも気づくことすごく多いですよ。舞台の制作って、自分でやってみると本当にうんざりするから(笑)。その一方で、人の優しさにも気づけるし。
小沢 いろいろ考えないといけないですからね。例えば今回だと、ふたり芝居だからリスクは少なくて済むなとか、座席数は多くても50パーセントにしようとか。それで全部予算組みも立てましたから。
宮崎 パンフレットに小沢くんの創作メモが載っているけど、予算とか収支とかも全部載せたらいいんじゃないですか。
小沢 本当ですか!?
宮崎 うん。それこそ若い俳優さんが読んだら、すごく参考になると思います。
――本作は1年半ぶりの再演となりますが、初演時の創作のきっかけとは?
小沢 これはもともと、大好きだった樹木希林さんが亡くなったことをきっかけに書いた作品なんです。樹木さんに言ってもらいたいような言葉をいっぱい書こうと思って。
宮崎 僕2017年と18年に『三井のリハウス』のCMで樹木さんの息子役をやったことがあるんです。その時に驚いたのが、樹木さんって現場で台本に書いてない台詞とか演出とかを勝手にどんどん提案して、全員の台詞をつけていくんですよ。
小沢 えっ、樹木さんが演出しているんですか!?
宮崎 そう。もちろん監督さんはいて、その方の言う通りに一応撮るんですが。樹木さんのCM撮影の現場ってずっとそうだったらしいんです。しかもそっちの方が面白いから採用せざるを得ない(笑)。
小沢 うわぁ、やっぱりすごい方だなぁ。
――そうして誕生した『夢ぞろぞろ』ですが、宮崎さんが初演を観て特に印象に残っていることは?
宮崎 小沢くんはもちろん、相手役の方(田中穂先さん)がとても良かった印象がありますね。すごく汗をかかれていたのも覚えてます。あと今朝、資料映像を見返したら、覚えていなかったけど何でもないちょっとした台詞がいちいち良くて。「言わなきゃいけないことをちゃんと言う」とか、「言葉にしないと届かない」とか。あっ、あと青年を励ますときの「とりあえずチョコレート食べよう」とか。
小沢 嬉しいなぁ。やっぱり心に残る台詞を書かなきゃいけないと思うんですけど、俳優をやっていると、恥ずかしくて言い難いって台詞もありますよね。それをカッコよくなさそうだけどいい台詞にする、っていうのが俳優の力量だと思うんですけど、僕にはその技術がなくて...。だから言葉の段階で、どうにか丸みをつけられないかなっていうのはいつもすごく考えます。
宮崎 あと印象的ということで言うと小沢くんの舞台って、大らかなお客さんが多い気がするんです。小劇場って、僕も含めてちょっとこじらせているお客さんが多いじゃないですか(笑)。だから初めてのお客さんにもハードルが低いというか、すごく観やすいんじゃないかなと思います。
小沢 確かに! 僕の舞台ってすごくハードルが低い(笑)。それ、すごくいい宣伝になると思います!
「EPOCH MAN」の次回作『夢ぞろぞろ』は、2021年2月19日(金)から2月28日(日)まで、東京・シアター711にて上演。チケットは好評発売中。
一部開演時間の繰り上げもあり。詳細は公式HP(http://epochman.com/index.html/)まで。
【開演時間の繰り上げ】
2月19日(金)20時→2月19日(金)18時
2月24日(水)20時→2月24日(水)18時
2月25日(木)20時→2月25日(木)18時
2月26日(金)20時→2月26日(金)18時
撮影:石阪大輔
取材・文:野上瑠美子