2020年2月に上演されるダブルヘッダー特別公演『おおきく振りかぶって』『おおきく振りかぶって 秋の大会編』の初日稽古が、12月中旬に東京都内で行われました。げきぴあ編集部は前回、顔合わせの様子をレポート!熱くも和やかな雰囲気をリードするシリーズ経験者を中心に、キャスト・スタッフの挨拶コメントをお届けしました。
→【おお振り #01】再演&新作が始動!『おおきく振りかぶって』カンパニーから顔合わせコメントが到着
ひぐちアサの野球マンガ『おおきく振りかぶって』を舞台化する本シリーズ。"ダブルヘッダー特別公演"を称する今回は、2018年2月に上演された第1弾『おおきく振りかぶって』の再演版と、第3弾となる新作『おおきく振りかぶって 秋の大会編』の2作品が同時上演されます。
今回は、再演版と新作における"本読み"稽古の白熱ぶりをお伝えします!これまで本シリーズの脚本・演出を手がけてきた成井豊さんを取り囲むように、"コ"の字形に着席したキャスト。手にしているのは、各作品110ページを超えるB5サイズの台本です。これを再演版→新作の順で、自身が演じる役のセリフを順に読み進めていきます。
2作品で200分超の本読みを終え、成井さんに「予想をはるかに上回る出来で、稽古が楽しみになってきました!」と言わしめたカンパニー。果たしてどのような読み合わせが行われたのでしょうか?
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読み合わせはまず、第1弾の"再演版"からスタート。あらすじを振り返りましょう。
祖父の経営する三星学園中等部から、埼玉県立西浦高校に進学した三橋廉(西銘駿)。中学時代は野球部のエース投手であったが、チームメイトから「ひいきでエースをやらせてもらっていた」と疎まれ続けたため、極端に弱気で卑屈な性格になってしまった。
暗い思い出を拭い切れないまま、三橋は野球への未練とともに放課後のグラウンドを眺めていた。すると、新設されたばかりの硬式野球部監督・百枝まりあ(渡邊安理)から強引に入部させられてしまう。
部員はわずか10人で、全員1年生。図らずも再びエースを任される三橋だったが、彼の秘めた力をいち早く見抜いた捕手・阿部隆也(大橋典之)との出会いをはじめ、新たなチームメイトに支えられながら、真のエースとして成長を目指す日々が始まる──。
因縁の三星学園との初試合、前年度優勝の強豪・桐青高校との初陣を通じて、西浦高校野球部としてチームの結束が高まっていく様子が描かれたシリーズ第1弾。成井さんの「初演と台本が大きく変わったわけではありませんが、再演版には当時の稽古や本番を通じて変わった成果を反映してあります」という説明を機に、本読み稽古が"プレイボール"します──。
ト書きを読み上げる成井さんのテンポに合わせ、次第にヒートアップしていく稽古場の空気。モノローグや実況中継によって、一球ごとに緻密な心理戦が繰り広げられる『おお振り』ならではの臨場感があたりを満たしました。特に、上演時間の半分以上を占める試合シーンの完成度の高さには「まだ稽古初日だよね?」「シリーズ初参加のキャストもいるはずなのに?」と目を見張るものが。
それもそのはず、キャスト一同は直前に成井さんから「2時間15分超だった初演の上演時間を5分縮めて疾走感を出したい」という"お達し"を受けていました。スタートの前に「今日は慌てず落ち着いて読んでみて」と言われたものの、初演の参加メンバーはすぐに勘を取り戻し、表情や声色を自在に操りながらキャラクターに扮します。
西銘さんは、弱気で自己主張が苦手なピッチャー・三橋がエースの自覚に芽生えていく変化と成長を鮮やかに表現。三橋とバッテリーを組み、彼の強みを引き出すキャッチャー・阿部役の大橋さんは、前作『夏の大会編』からの参戦。初めて取り組む再演版ながら、観察眼に優れた阿部をクールに演じました。渡邊さんは、抜群の統率力を発揮する勝気な野球部監督・百枝を、とにかく明るく元気に、時に母性を感じさせるように立ち上げます。
目をつぶれば舞台の本番が行われていると錯覚するほどのクオリティに、成井さんも大喜び!この本読みを振り返って後日、以下のコメントがげきぴあ編集部に届きました。
普通、1回目の読み合わせというのは、たどたどしいか、テンションが低いかで、あまり快調に進まないものですが、今回は3回目とあってか、凄いテンポの良さ。作者の予想をはるかに上回る出来でした。俄然、稽古が楽しみになってきました。
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30分ほどの休憩を挟んで、続いては第3弾となる新作『おおきく振りかぶって 秋の大会編』の読み合わせに入ります。あらすじは以下の通り。
夏の大会5回戦、西浦高校野球部は美丞大狭山高校に敗北。キャッチャー・阿部隆也(大橋典之)は負傷し、戦線離脱を余儀なくされる。そんな彼らを百枝まりあ(渡邊安理)は鼓舞し、西浦高校野球部は校内合宿でチームの目標を掲げることに。
時を同じくして夏大会の準決勝、ARC学園高校vs武蔵野第一高校のひと幕。武蔵野第一高校ピッチャー・榛名元希(神永圭佑)は、途中交代で登板したキャッチャー・秋丸恭平(佐伯亮)とのバッテリーで守備を牽引するも、ARC学園高校にコールド負け。ベスト4止まりから次の一手を考える時、榛名は貪欲さに欠ける秋丸の"覚醒"を求めた。
迎えた秋大会、シード権を得た西浦高校の初戦は武蔵野第一高校。負傷した阿部は大会に出場できるのか。榛名と秋丸の関係性に変化は訪れるのか。両校の負けられない戦いが、今まさに始まろうとしている──。
前作『夏の大会編』で、崎玉高校・美丞大狭山高校と2試合を繰り広げた西浦高校。敗戦からも学びや気づきを得ようとするポジティブな野球部メンバーに立ちはだかるのが、剛腕サウスポー・榛名率いる武蔵野第一高校です。第3弾となる新作『秋の大会編』は、この武蔵野第一高校と西浦高校の激闘をメインに綴られます。それ以外にも
西浦高校vs美丞大狭山高校(振り返り)
ARC学園高校vs武蔵野第一高校
と、畳みかけるような試合ラッシュが訪れる『秋の大会編』はカンパニー全員が初挑戦。しかし「初めて音読する台本では、さすがにたどたどしくなるのでは」という予想は、よい意味で裏切られました!
作品の特徴でもあるボールカウントごとの緻密な心理戦は、攻守のモノローグが重なるほど「スピーディに」という成井さんの要望から離れてしまうジレンマを含んでいます。とはいえ、一球に懸ける思いをそれぞれ語り尽くすのが『おお振り』の醍醐味──。そこで、スピードと巧みな心理描写を両立させ、劇展開にリズムを生み出す役割を果たすのが"実況中継"です。
中でも、西浦高校野球部顧問・志賀剛司役に扮する筒井俊作さんの実況中継はまさしく"必聴"!敵(武蔵野第一)が攻撃中の「見逃しストライク!空振りストライク!......空振り三振!」には西浦ナインの視点に立って思わず胸をなで下ろしてしまったほど。気迫のこもった熱演ぶりに試合の行方が気になってたまらず、出番でないキャストも台本の次ページを繰る手が早まります。
一方で、登場人物の出身地である埼玉県東部や青森県の強い方言に苦戦するキャストも。「したばってあんまえふりこがねえように気いつけへ!」「こいだばわがやねばまねべえ!」などは初見でうまく読めず、稽古場に笑いが生じる場面がありました。成井さんは本読み稽古後、「この"濃い"喋りをマスターして流暢に話せるようになると、リアリティが増すんじゃないかと思います」と期待。スピード感を優先した結果、分かりづらい方言を改変するのではなく、台本にそのまま活かす──。原作を尊重しながら舞台化する、作品づくりの姿勢を覗かせます。
両作品の本読み稽古を終えた成井さんのコメントも、後日げきぴあ編集部に届きました。
ダブルヘッダーというのは途轍もなく過酷な試練。何しろ、野球の試合を、2作品で4,5試合しなければならない。これをミスなしで上演するためには、余程の練習が必要です。若い役者たち22人と力を合わせて、この試練を乗り越えたいと思います。
本読み稽古の段階から高い完成度を見せ、早くも関係者を魅了した『おお振り』カンパニー。音楽・美術・照明・振付・衣裳といったスタッフワークも加わった本番では、どのようなステージを見せてくれるのでしょうか。初日が非常に待ち遠しくなる稽古の幕開けになりました!
公演は、2020年2月14日(金)から24日(月・祝)まで東京・サンシャイン劇場にて。チケットぴあでは現在、前方席確約と非売品特典付きの「特別観戦シート」と、通常の「一般観戦シート」が販売されています。
再演&新作チケットのセット購入者には「ダブルヘッダー特別公演記念特典」として、原作者ひぐちのサイン入り描き下ろしミニ色紙を贈呈。主役校"西浦高校バッテリー"と新作の対戦相手"武蔵野第一高校バッテリー"の2バージョンを揃えてみてはいかがでしょうか。
取材・文:岡山朋代
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ダブルヘッダー特別公演『おおきく振りかぶって』『おおきく振りかぶって 秋の大会編』
2020年2月14日(金)~24日(月・祝)
サンシャイン劇場
[原作]ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
[脚本・演出]成井豊
[キャスト]
西浦高校
三橋廉:西銘駿
阿部隆也:大橋典之
百枝まりあ:渡邊安理
花井梓:白又敦
田島悠一郎:大野紘幸
泉孝介:安川純平
栄口勇人:竹鼻優太
沖一利:中村嘉惟人
水谷文貴:湯本健一
巣山尚治:齋藤健心
西広辰太郎:亀井賢治
篠岡千代:澤田美紀
志賀剛司:筒井俊作
武蔵野第一高校
榛名元希:神永圭佑
秋丸恭平:佐伯亮
加具山直人:島野知也
桐青高校
高瀬準太:越智友己
河合和己:永岡卓也
島崎慎吾:松本祐一
三星学園
叶修悟:西川俊介
織田裕行:鶏冠井孝介
畠篤史:吉田英成
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