7月9日、『実験落語neo~シブヤ炎上まつり2019~』が渋谷の劇場、CBGKシブゲキ!!で開催され、満員の盛況となった。1970年代~80年代に、新作(創作)落語のレジェンドである三遊亭円丈が、渋谷の文化発信基地であった小劇場「ジァン・ジァン」で開催していた新作落語の会を、2016年に復活させ始まった「実験落語neo」。今回で早くも15回目を迎えた。
中でも、三遊亭円丈作の新作落語を出演者たちが演じる、1年に1度の特別な会が<シブヤ炎上まつり>だ。
開場中、ロビーで上演される三遊亭はらしょうによるウエルカム落語の演目も、円丈の代表作「悲しみは埼玉に向けて」。ロビーには人が溢れ、そのままの熱気をもっていよいよ開演。
トップバッターは、三遊亭粋歌。台風の命名をテーマにした「あきな5号」を披露。本妻派と架空の愛人派の小競り合いをキュートに演じていた。
2番手は、笑福亭たま。「ご挨拶がわりに」と30秒のショート落語を次々と披露。客席の空気をつかんで、「アマゾンの朝は早い」へ。ホームドラマ的要素のある演目に、自作のギャグを詰め込んだ一席で、客席を笑いの渦に巻き込んでいた。
次に登場したのは、春風亭百栄。45年ぶりに出所した任侠が現世に戸惑う「イタチの留吉」という演目を披露。留吉が憑依しているかのような高座に、客席がドッと沸いていた。
仲入り後は、柳家喬太郎が登場。円丈作「82年はバラ色だった」を改作し、「令和元年はバラ色だった」を口演。令和元年を神様のミスで体験できなかった男の話。不思議な話ではあるものの、喬太郎の瞬発力と演技力で、笑いと静寂が一瞬で入れ替わるような、客席をぐっと引き込む魅力的な一席となっていた。
トリは、全作の生みの親、三遊亭円丈。「奇跡の噺家・柳家ヘレン」を披露。三重苦の噺家が客席の反応を知るため紐を客席に投げ、「面白かったら引っ張って」という、観客参加型落語である。会場が文字通り一体となり、爆笑の渦に包まれたまま、高座を下りた。
自作の落語を持つ実力者が円丈作品を演じているのだが、総じてそれぞれの自作の演目かのような錯覚を覚えると同時に、円丈作品の底知れない発想力を感じられる会となっていた。
<上演記録>
『実験落語neo〜シブヤ炎上まつり2019〜』(第十五回)
2019年7月9日(火)
会場:CBGKシブゲキ!! (東京都)
出演:三遊亭円丈、柳家喬太郎、春風亭百栄、笑福亭たま、三遊亭粋歌