2019年7月11日アーカイブ

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7月9日、『実験落語neo~シブヤ炎上まつり2019~』が渋谷の劇場、CBGKシブゲキ!!で開催され、満員の盛況となった。1970年代~80年代に、新作(創作)落語のレジェンドである三遊亭円丈が、渋谷の文化発信基地であった小劇場「ジァン・ジァン」で開催していた新作落語の会を、2016年に復活させ始まった「実験落語neo」。今回で早くも15回目を迎えた。
中でも、三遊亭円丈作の新作落語を出演者たちが演じる、1年に1度の特別な会が<シブヤ炎上まつり>だ。

開場中、ロビーで上演される三遊亭はらしょうによるウエルカム落語の演目も、円丈の代表作「悲しみは埼玉に向けて」。ロビーには人が溢れ、そのままの熱気をもっていよいよ開演。

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トップバッターは、三遊亭粋歌。台風の命名をテーマにした「あきな5号」を披露。本妻派と架空の愛人派の小競り合いをキュートに演じていた。

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2番手は、笑福亭たま。「ご挨拶がわりに」と30秒のショート落語を次々と披露。客席の空気をつかんで、「アマゾンの朝は早い」へ。ホームドラマ的要素のある演目に、自作のギャグを詰め込んだ一席で、客席を笑いの渦に巻き込んでいた。

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次に登場したのは、春風亭百栄。45年ぶりに出所した任侠が現世に戸惑う「イタチの留吉」という演目を披露。留吉が憑依しているかのような高座に、客席がドッと沸いていた。

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仲入り後は、柳家喬太郎が登場。円丈作「82年はバラ色だった」を改作し、「令和元年はバラ色だった」を口演。令和元年を神様のミスで体験できなかった男の話。不思議な話ではあるものの、喬太郎の瞬発力と演技力で、笑いと静寂が一瞬で入れ替わるような、客席をぐっと引き込む魅力的な一席となっていた。

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トリは、全作の生みの親、三遊亭円丈。「奇跡の噺家・柳家ヘレン」を披露。三重苦の噺家が客席の反応を知るため紐を客席に投げ、「面白かったら引っ張って」という、観客参加型落語である。会場が文字通り一体となり、爆笑の渦に包まれたまま、高座を下りた。

自作の落語を持つ実力者が円丈作品を演じているのだが、総じてそれぞれの自作の演目かのような錯覚を覚えると同時に、円丈作品の底知れない発想力を感じられる会となっていた。



<上演記録>
『実験落語neo〜シブヤ炎上まつり2019〜』(第十五回)
2019年7月9日(火)
会場:CBGKシブゲキ!! (東京都)
出演:三遊亭円丈、柳家喬太郎、春風亭百栄、笑福亭たま、三遊亭粋歌


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2018/2019シーズン、小川絵梨子さんが新たに芸術監督に就任してからというもの、全キャストをオーディションで選んだ『かもめ』、名古屋の老舗劇団・少年王者舘の新作『1001』など、魅力的な公演を連発している新国立劇場。

この小劇場で7月11日から上演されるのは、実在の事件や人物を題材にした作品が高い評価を得ている劇団「パラドックス定数」の野木萌葱さんが書き下ろした『骨と十字架』。その稽古場におじゃましました。

物語の中心となるのは、北京原人の頭蓋骨の発見に関わった古生物学者、ピエール・テイヤール・ド・シャルダン。彼はすぐれた学者であると同時に進化論を否定するキリスト教の教えに従う司祭でもありました。信じる二つのものが相反するとき、どうすればよいのか。その苦悩を男たちの研ぎ澄まされた会話で描く骨太の作品です。

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稽古場には、さまざまな高さの燭台が4つ。クラシックな椅子も置かれています。イエズス会本部の部屋を表したセットです。

5月末からスタートした稽古では本読みの時間をたっぷりと取ったとのことで、私たちがうかがったのは立ち稽古がはじまってから1週間ほど経った頃でした。

この日稽古されていたのは、近藤芳正さん演じるラグランジュと主人公テイヤールが対立するシーン。キャストは布をたっぷりと使った司祭の衣装をつけていますが、これは稽古用のものだそう。

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演出の小川さんが声をかけると、静かに稽古場中央に進み出たふたりが、そのまま静かに稽古をはじめました。冒頭、ふたりとも表面的には冷静に会話を進めます。けれども少しずつ空気が緊迫していき、とうとう決裂してしまいます。部屋を飛び出たテイヤールに、伊達暁さん演じるリサンが寄り添い、理解を示すところも次の幕につながる重要な場面です。激昂する近藤さんとの対峙と、穏やかな伊達さんの登場。テイヤールの未来はどうなるのか、観客がぐっと引き込まれるであろうやりとりが続きます。

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一旦通したあと、「じゃあ見ていきましょう!」と明るく声をかけた小川さん。「この会話で空気が変わるところが3,4箇所あります」と具体的に説明していきます。

神を信じていると同時に進化論も確かなものと思っているテイヤール、その両立はありえないと考えるラグランジュ、お互いのフラストレーションが爆発する引き金となるセリフを解説し、「この言葉を、どれだけの覚悟で発しているか」と語ります。

「いまのテイヤールの発話は砂利のような感じ。でも、この人の言葉の届き方は、コットンくらいじゃないかな」とたとえながら伝える小川さん。休憩中も、このシーンについて話し合うキャストたち。このシーンをしっかりつくりあげようという気迫が稽古場に満ちていました。

自分の信じるものが否定される苦しみ、それでも研究の道を進まずにはいられない学者の性。テイヤールの揺れ動く姿は、観る者の心をおおきく揺さぶるに違いありません。

「骨と十字架」は公演中です!

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ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)さんの代表作を、新演出&新キャストで上演するシリーズ企画「KERA CROSS」。その第1弾『フローズン・ビーチ』が間もなく開幕します。そこで現在、都内某所で行われている稽古の様子をレポート。その連載企画の第3弾です。

今回注目するのは、双子の姉妹・愛と萌のふた役を演じる花乃まりあさん。

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元宝塚歌劇団の花組娘役トップで、退団後はドラマ『越路吹雪物語』で2018年に女優デビュー。演出の鈴木裕美さんとは、『二十日鼠と人間』(2018年)以来、2度目の顔合わせになります。

この日は第2場を稽古中。義母の咲恵と愛がふたりで暮らす別荘に、愛の友達の千津と、その親友の市子が8年ぶりにやって来ます。ここから...。

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こうなった経緯は本番を楽しみにしていただいて...。

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なんでもないはずの日常が、突如大きくうねり出すのはKERAさんの脚本ならではです。

そしていったん退場していた愛が、血のついた包丁(!)を持って再び登場。物語は一気に緊張感を増していきます。

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千津、市子、咲恵に比べれば、花乃さん演じる愛は、裕美さんいわく「元々のつくりが一番おバカに出来ていない」女性。それゆえ一番周りに翻弄されてしまう女性でもあります。実は花乃さん、別のキャストが体調不良のため、急遽代役を任せられたのですが、稽古参加初日にはすでにすべてのせりふが完全に入っていたそう。その真面目さ、演じることへの真摯な姿勢は、愛の真っすぐさにも通じるものがあります。

そんな愛がブルゾンちえみさん演じる市子に包丁を!

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第2場の冒頭からここに至るまでの激動の展開に、稽古とはいえ一時も目が離せません! 中でもこのシーンでは、これまで周囲に翻弄されてばかりいた愛が、初めて主導権を握り物語を動かしていきます。

そしてここは愛と市子の体を張ったやり取りが多いシーン。そのため流れを止め、細かく動きの確認をしていきます。

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お客さんに見えやすいことはもちろん、俳優がケガをしないことも舞台ではとても大切。そのため演出の裕美さんも一緒に、一見簡単なような動きでも、ひとつひとつしっかりと確認をしていきます。

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ちなみにレポートの第2弾で、裕美さんの演出シーンのひとつとして紹介したある動き。実は愛の動きで、花乃さんが実際にやるとこんな感じ。

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説明は出来ないけれどもとんでもなくおかしい。そんなKERAさんらしい笑いを象徴するシーンですが、花乃さんが真面目に、美しくやればやるほど、そのおかしみは増していくようです。

この『フローズン・ビーチ』は、KERAさん作品によく見られる、ありそうでないこと、なさそうであることが融合し、絶妙なバランスの上に成り立っている作品。それを作者のKERAさんではない裕美さんが演出し、ナイロン100℃の劇団員ではないキャスト陣が演じることは、とても難しいはずです。しかし今回見学させてもらって感じたのは、そんなこちらの不安を払拭するような、前向きで創造的なスタッフ、キャスト陣の姿勢。改めてこの名作をまた劇場で楽しめることが、グッと楽しみになりました。

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取材・文:野上瑠美子

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