2月14日より、日本初演のミュージカル『最終陳述 それでも地球は回る』 が上演されます。
天動説が信じられている時代に地動説を唱えた偉大な科学者ガリレオ・ガリレイと、今なお生み出した作品が世界中で上演され続けている偉大な劇作家ウィリアム・シェイクスピア。
同じ1564年生まれのこの偉人ふたりが、天国で出会ったら......という"if"から、自分の信念を貫くこと、夢を追いかけることの難しさや尊さを描く物語です。
出演者は2名のみ。
主人公のガリレオ役の俳優と、
シェイクスピアをはじめコペルニクス、ミルトンからフレディ・マーキュリーまで、ガリレオ以外の登場人物すべてを演じる"マルチマン"役の俳優だけ。
ガリレオ役はトリプルキャストで佐賀龍彦さん(LE VELVETS)、伊勢大貴さん、山田元さん。
シェイクスピア役ほかはダブルキャストで野島直人さん、加藤潤一さんが演じます。
浅草九劇の緊密な空間で、ふたりの俳優が生み出すドラマ。
トリプル×ダブルですので組み合わせの妙もありそうですし、どんな世界が広がるのか、楽しみです。
1月中旬の某日、この作品の稽古場に伺ってきました!
物語の背景は「ガリレオ最後の旅路」。
ガリレオ・ガリレイが、当時の常識だった天動説を否定し、コペルニクスの地動説(地球が太陽の周りを回っている)を擁護したことで異端とされ、宗教裁判にかけられたことは有名なはなし。
彼は最終的には自分の考えを放棄――ただし「それでも地球は回る」と呟いたというのもまた有名ですね――、つまり自分の信念を曲げてしまったのですが。
このミュージカルはそこからスタートします。
裁判後、満身創痍で故郷フィレンツェに帰るガリレオの旅路が、いつしか彼の妄想なのか、天国への道なのか、夢か現かわからないものになっていき......。
さて、ガリレオのたどり着く先は一体どんな地点なのでしょうか?
まだ稽古は本格スタートしたばかりというこの日の稽古場は、歌稽古+芝居読み稽古といったもの。
キャスト5名と演出の渡邉さつきさんがコの字になって座り、1シーンごと台本を読み(歌い)進めていました。
こちらはガリレオ役のお三方。
佐賀龍彦さん
伊勢大貴さん
山田元さん
ちなみに私が稽古場に伺った時は「一番難しい楽曲」(スタッフさん談)をやっていたようで、皆さんけっこう、四苦八苦中。
ガリレオの皆さんは演奏の河谷萌奈美さんよりブレス位置のアドバイスをもらい中...。
(皆さんの名誉のためにフォローしますと、このあと福井小百合さんによる歌唱指導が入る、というタイミングでした)
こちらはシェイクスピアのほか複数役を一手に引き受けるマルチマンのおふたり。
野島直人さん
加藤潤一さん
彼らもその難曲に苦労していましたが、何度か稽古を重ねて上手くいった時のこの笑顔!
...と、難しそうなところを強調してしまいましたが、全体的な曲調はとてもポップです。
もう少しシーンが進み、ガリレオとシェイクスピアが「やりたいことに理由なんてない、音楽がかかれば踊ってしまう、蝶はただ飛ぶだけだ」と歌うナンバーなんて、ちょっとフレンチミュージカルっぽいキャッチーさで楽しい!
キャストの皆さんも「すごいポップ」「楽しい」と話し、演出の渡邉さんも「この曲は楽しんで歌ったモン勝ち」と語る中で、気になるひと言が......。
「......でもこれ、歌わない日もあるんだよねー」
「いやー、歌いたいよね!」
そうなんです。
この作品、途中で物語の分岐があります。
オリジナルである韓国版では、観客のひとりが二者択一をし、それによって一部内容が変わったそうで、日本版もどうやらその形を採用する模様。
それによって歌われるナンバーもちょっと変わってくるのです!
自分が観劇するときはどうなるのか、気になっちゃいますね。
渡邊さんの演出スタイルは、まずは歌もセリフのように読んでみよう、というところから始まるようで、次のシーンでは「じゃあ、居酒屋風に読んでみようか」。
居酒屋風って!?
でもすぐにその意図がわかりました。
指名された伊勢さん(ガリレオ)&加藤さん(このシーンでは「強盗」)が議論を戦わせるのですが、それがまさに "居酒屋風"!
「デタラメ言うな!」「嘘だ!」「そんなこと聞いたことない」と白熱のやりとり。
そのうち「ばーーーか!」という脚本にはない言葉まで飛び出し、まさに居酒屋で酔っ払いが口ゲンカしているみたい(笑)。大盛り上がりです。
いやしかし、おふたりともカンの良いお芝居をしていらっしゃる。楽しい!
このシーン、前日は別の組み合わせでやったようで、皆さん口をそろえて「三者三様だねー」。
伊勢&加藤ペアは「若い感じがする!」とのことでした。
こちらは別のシーンをセリフのみで対話する、山田さん(ガリレオ)&野島さん(このシーンでは「フレディ」)。
ちょっとシリアスなシーンを、山田さんが切々と訴えかけるように語ります。
一方でフレディ役の野島さん、キャラ立ちしたしゃべり口で個性的に魅せています。
ふたりとも途中から立ち上がっての熱演になりました!
が、マルチマンのおふたりは多数演じる役の演じ分けも当然課題になってくるようで、野島さんは加藤さんとふたりで、「この役とこの役が似てきてしまっているね」といった議論も交わしていました。
日本初演のミュージカル『最終陳述 それでも地球は回る』、なんとなく雰囲気が伝わりましたでしょうか?
この作品、このあとももう少し追っていきますね!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
2月14日(木)~3月17日(日) 浅草九劇
[演出]渡邉さつき
[出演]佐賀龍彦・伊勢大貴・山田元(トリプルキャスト)
/野島直人・加藤潤一(ダブルキャスト)
[演奏]河谷萌奈美