全世界でレコード売り上げ1億枚以上、「CONGA」「1-2-3」など数多くのヒットを生んだ歌姫グロリア・エステファンの波乱万丈の半生を描いたミュージカル『オン・ユア・フィート!』が日本初演、12月8日(土)に東京・シアタークリエで開幕しました。
一人の少女が大スターになるまで、そして栄光を得た後の葛藤とハプニング、家族との関係など、まるで自分の物語のように心に迫ってくる。同時に、グロリアの名曲たち、歌とダンスがこれでもか!というほど濃厚で、本物のライブ感覚がたっぷり味わえます。冬の寒さを吹き飛ばし、元気をもらえること請け合いです。
リトル・グロリア(リチャーズ恵莉)(Wキャスト)は歌うことが大好き。移住先のマイアミで洗濯物を干したり、家を手伝いながら歌っています。近所の人やベトナム戦争の前線にいる父親は、彼女の歌を聴くのが楽しみ。とても愛らしい少女時代ですね。
17歳へと成長したグロリア(朝夏まなと)。家の仕事を手伝いながら。相変わらず歌っていますね!
祖国キューバを思いながら、マイアミで生き生きと暮らす移民たち。サルサのリズムにウキウキします。
そこに白いショートパンツの怪しい男が登場。これがエミリオ・エステファン(渡辺大輔)との出会い。渡辺さんの長いおみ足が眩しい!そして、英語が下手なエミリオの鈍りがチャーミング。
グロリアの歌が上手いと噂を聞いたエミリオは、自分のバンドに練習で歌ってほしいと頼みますが、母グロリア・ファハルド(一路真輝)は嫌疑的でエミリオに冷たく当たります。それでもめげないエミリオ。
人前に出るのが苦手なグロリアは、勇気を出してみんなの前で妹レベッカ(青野紗穂)と一緒に「ANYTHING FOR YOU」を歌います。姉妹の美しいハーモニーにうっとり。
その夜、リビングルームでグロリア・ファハルドは戦争で傷を負い、足がきけなくなった夫ホセ(栗原英雄)とテレビを見ながら、グロリアが上手に歌ったことを報告します。彼女が母親として娘を思い、暖かく見守っていることが伝わる貴重なシーン。
グロリアはダンスの特訓中。最初は大丈夫?という出来ですが、エミリオのスパルタっぷりに負けん気を発揮。どんどん上達していきます。アップビートな「1-2-3」がこのシーンにぴったり。
グロリア・ファハルドは歌手活動に力を入れる娘が気に入らず、そのせいで母娘関係はギクシャク。自分のやりたいことに夢中になる子供と、子の将来を思うからこそ反対する親。私たちの身の回りにも、実によくある話!
若かりしグロリア・ファハルドが歌っていた、ハバナのクラブ。ラテンのリズム、情熱のペアダンスなど、キューバの薫りそのもので、心躍ります。
熱く歌い踊るラテンの歌姫・一路さんが最高!さすがのパフォーマンスで、普段のクールなイメージの一路さんとは違う一面かと。
そして、ホセも若く、栗原さんの警官の制服姿がカッコいい!人生が急転する二人、一路さんのこの表情にシビれます。
グロリアとエミリオはすっかり恋仲に。バラードの名曲「HERE WE ARE」がぴったり過ぎます。この曲がこのシーンに!という驚きと喜びは、ジュークボックスミュージカルならではですね。
曲のプロモーションのために、家族も協力。大ボスであるビッグ・パキートとの交渉役は、なんとコンスエロ。久野さんのサングラス姿がキュート。しかし、このおばあちゃん、ただ者じゃないな!
「CONGA」で自分たちの音楽スタイルを見つけたグロリアは、歌って踊れるところなら、どこでもパフォーマンス。イタリア人の結婚式の余興でも、みんなノリノリ!このあたりから、物語のライブ感がぐっと増します。楽しい!
グロリアはスターへの階段を駆け上がります。躍動的な朝夏さん、オーラ半端ないです。
見応えたっぷりのショーシーン。アンサンブルの皆さんとの群舞もバッチリ。
光あれば影あり。華やかなステージの裏では、母との決別が。シリアスな現実が突きつけられる様は、心に刺さりますね。
世界中をツアーするグロリアは精神的に疲弊していきます。エミリオの励ましも虚しい...。頂点に立つものの孤独でしょうか。
そんな矢先、グロリアはツアーバスが交通事故を起こし、重体に。人は崖っぷちに追い込まれて初めて正直になれる。悲しく豊かな真実。
エミリオは自分が傷ついても、諦めない、ただじゃ起きない、希望を捨てない。渡辺さんの伸びやかな歌声が、心にしみます。
美しく強いグロリア。太陽のような朝夏さんと重なりますね。
カーテンコールのメガミックスでは、客席総立ち。ペンライトやサイリウムなど持ち込みOKなので、積極的に参加して楽しみましょう!
囲み会見で朝夏さんは、「私も人前に立ち演技をする仕事なので、いい時も悪い時も、グロリアを理解できるところが多いです」とすっかり生き様に共感した様子。渡辺さんは「エミリオは明るくて意思が強く、家族への愛情もたっぷり。訛りの多さはご愛嬌で笑ってください」、一路さんは「世に出ようとする娘を止めるべきか否か、母として葛藤しつつ、心の底で見守っています。寒い冬をシアタークリエで盛り上がりましょう」と語りました。
文:三浦真紀
撮影:川野結李歌