少年社中・井俣太良×生駒里奈『トゥーランドット』対談

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ネタバレ厳禁！「あとはもう劇場で（笑）」（生駒）

井俣　さっき生駒ちゃんの役のことを喋ろうかなと思って確認したら、ほぼほぼネタバレだって言われたんですよ。
生駒　私が言っていいのは「トゥーランドット姫役です」ということだけです。あとはもう劇場で（笑）。
井俣　劇場で観るしかないよね（笑）。

――井俣さんの役はどのくらい言えますか？
井俣　僕が演じるのは、文化を統制された世界で、それに対して反旗を翻す劇団員というところくらいかな。劇中で「トゥーランドット」という演目をやっていて、松田凌演じるカラフのお父さん役です。

――なるほど。劇場で観るしかないですね（笑）。生駒さんと松田さんはひかれ合う二人を演じるわけですが、初共演ですよね。
生駒　初めてです。ビジュアル撮影でお会いして...いひひひ！

――どうしました！？（笑）
生駒　私、ちょっと人見知りなんですけど、撮影で手を合わせるポーズがあって、すごく恥ずかしかったことを思い出しました（笑）。「触っていいのかな」みたいな。恋愛ものも次に演じる舞台「暁のヨナ～緋色の宿命編～」から続けてになりますし、今まで女の子ばかりの環境が多かったので、ちょっと緊張しちゃいました。

――松田さんのお芝居は観たことはありますか？
生駒　あります。すごかった。私が観たのは『人間風車』（'17年９月）だったのですが、「あの人と共演するんだ...」と思ってドキドキしてます。
井俣　松田凌はいい俳優です。そして生駒ちゃんと松田凌という組み合わせは、僕、鮮烈だった。松田凌が少年社中（少年社中×東映舞台プロジェクト『パラノイア★サーカス』）に出たときに、「こいつにこの劇団が紡いできた少年性のようなものを全部託していいんだ」と思えることができたし、それ以上の何かを引き出してくれた。生駒ちゃんは生駒ちゃんで舞台「モマの火星探検記」（'17年８月に上演された少年社中の作品・生駒が主演を務めた）のときの少女の役（ユーリ）がぴったりで。ふたりが"少年・少女"というものの象徴になる発明のような組み合わせだなと思ったし、素直に「観たい！」と思いました。

――今作のサブタイトルは「～廃墟に眠る少年の夢～」で、これは少年社中が'05年から上演した三部作と同じものですよね。そしてその三部作は『「大人になった少年・少女」の為の冒険作品シリーズ』と銘打たれていました。
井俣　僕、廃墟シリーズ三部作がすごく好きだったんですよ。今回、僕にとっては少年社中の原点にかえれる作品になるのかなと思っています。そこに松田凌と生駒ちゃんがいるっていうのはすごく楽しみです、このふたりに託せるのは。

――託すって感覚なんですか？
井俣　託すって感覚ですね、おっさんなんで僕も。
生駒　（笑）
井俣　（少年役も）できますけど！（笑）でもやっぱりちょっとどうしても「この人、おじさんなんだよな」ってついてきちゃうので。だから純粋に少年・少女を象徴するという意味で本当にぴったりなふたりだなと思っています。

「生駒ちゃんと芝居して、久々に楽しいなって思った」（井俣）

――生駒さんは「モマの火星探検記」で少年社中の作品に初参加されて、そのときはどういうふうに感じましたか？
生駒　すっごい楽しかったです。稽古も、毎日家に帰ったら知恵熱出るくらい......知恵熱、よく出すんですけど（笑）、そのくらいいっぱい考えるけど不思議と苦しくはなくて。普段だったら苦しくなっちゃったりするんですけど、この期間は自分じゃあり得ないくらいプラスに働くことが多かった。ものをつくっていくなかで出てくるいろんなアイデアだったり感情だったりが、自分でも「こういうことを思えたんだ、出せたんだ」という発見があって。すごい場所に来れてよかったなって思いました。

――そんな少年社中作品にまた出演することが決まったのは嬉しかったのでは？
生駒　めちゃ嬉しい（笑）。ここで見せられなかったら、本物になれないって思ってます。

――本物になれない？
生駒　ちゃんとしたものを見せられる人間になれないということでしょうか。私的にはこれが勝負だという気持ちで挑む場所になると思っています。「モマ-」の頃はちょうどお芝居に興味が出てきた時期で、でも私がお芝居をやっていい人間なのかわからないな、みたいな気持ちがあったんです。けど、「モマ-」では勝負を挑んで、お芝居をやって「いいんだ！」と思わせてくれた作品で。だからこそ今回、同じ場所で（お芝居への気持ちを）確立しないといけないと思ってます。
井俣　「モマ-」では僕も一緒にやってて本当に楽しかったですよ。人にみせることを超えて、紡ぎ合ってキャッチボールできて、久々に楽しいなって思ったんですよね。そういうのって技術じゃないし。それができることは素晴らしいことだなって。
生駒　「私はお芝居していい人なのか」という確認というか「これでダメだったらやらない」っていうような、自分の中の大きな挑戦だったので。よかったです。

――そこを経て、今回はどんな芝居ができそうですか。
生駒　（脚本・演出の）毛利さんが「いろんな感情をコントロールする役だと思う」とおっしゃっていて。またチャレンジになりそうです。最近、映像の仕事でもちょっとずつちょっとずつ自分のリミッターをはずせるようになってきたんですけど、それを全部取ったら私にはどんなものが入ってるんだろうと思うので。多分「トゥーランドット」は全部取っ払った自分を出させてくれんじゃないかなと思うので、すべて開放して、皆さんに助けてもらいたいです。
井俣　素晴らしいよ。
生駒　まだまだわからないままやっている部分、これでいいのか悪いのかって迷いながらやっているところもあるんですけど、今回はそういうのをなくして、全部開放してやったら私はどれくらいできるんだろうっていうのを課題にしたいです。

「劇中劇ものは、少年社中みんな好き」（井俣）

――今回は劇中劇がありますね。
井俣　劇中劇ものは僕、すごい好きなんですよ。というか、少年社中みんな好きなんですよ（笑）。なんか、劇中劇だからこそ割と何でもありで進めていける感じがあるというか。取っ払えるというか。「機械城奇譚」（９月に上演された20周年シリーズ第三弾・劇団員12名のみで上演）でもそうだったんですけど、生き生きするんですよ。どうした？ってくらい（笑）。
生駒　「機械城奇譚」おもしろかったです（笑）。普通にそれやってたら「なにしてるの？」っていう感じだけど、劇中劇だったらできるような。
井俣　そう。そういう楽しさがあるので。今回も楽しいと思いますよ。

――少し話がそれますが、「機械城奇譚」で久しぶりに劇団員だけでやられて感じた少年社中の良さってどんなものでしたか？
井俣　劇団員だけの公演が本当に久しぶりだったので、なんか「こんなにも劇団員みんなが助けてくれるんだな」って思いました。昔はそういう助けてもらう感覚がなかったんですよ。僕も割と自分一人で突っ走って「ついてこいよ」って感じだったし。だから今回、そう感じられたことは、すごくよかったなと思って。いい機会だったと思います。

――その公演を経て劇団員だけじゃない方々と一緒にやるというのは、また違うのでしょうか？
井俣　全然うと思いますね。劇団員が家族で「失礼のないように」「がんばって我が家を好きになってもらおうね」みたいな感じで自分の家にお客さんを呼ぶ感覚だと思っていて。改めて「いい家だな」ってわかったわけなので、自信がついたんじゃないかな。

「一番安心できるのはここかもしれない」（生駒）

生駒　あれからいろんな現場を見てきたんですけど、一番安心できるおうちはここかもしれないです。
井俣　おお！ありがとうございます。
生駒　だからもう何も考えず、私はふふふ...！
井俣　（笑）。本当に何も考えずに預けにきて！
生駒　井俣さんはすごい先輩ですけど、お父さんというかおじいちゃんというか...全部開放しても面倒を見てくれるような気がしていて。私としては「この作品でやれなきゃ、この先できないぞ」という挑戦だと思っているので、それを受け入れて見守ってもらえたら嬉しいです。
井俣　僕も生駒ちゃんは娘みたいなものなので（笑）。生駒ちゃんにとっての未開の場所を手探りでいくような、そういうチャレンジを僕は見たいし、その手助けもしたいです。逆に今回ダンスがいっぱいあるから教えてください（笑）。
生駒　ダンス楽しみ！　きっとやりたかった"表現するダンス"ができると思うんですよ。
井俣　踊る生駒ちゃん、かっこいいだろうし、絶対にかわいい！ってなる気がする。あと、今作は大阪公演・福岡公演もあるので、みんなで旅する気持ちで本当に楽しみにしてます！
生駒　各地で、みんなでご飯食べるのも楽しみだなー。
井俣　福岡は今回、少年社中は初めて行くので。いろんな方に少年社中を知ってもらうチャンスを頂いたので、ぜひ劇場にてお会いしましょう！

公演は、2019年1月10日（木）から20日（日）まで東京・サンシャイン劇場、1月24日（木）から27日（日）まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、1月30日（水）・31日（木）に福岡・ももちパレスにて上演。

取材・文：中川實穗
撮影：イシイノブミ