古典落語を現代風にアレンジし、若手俳優が2人1組の掛け合いで演じる『ハンサム落語』。2013年の初演以来、公演を重ね、この秋に記念すべき第十幕となります。第一幕から出演する磯貝龍虎さん、平野良さん、宮下雄也さんの3名に意気込みを聞きました。
――第十幕ということで、まずはそれぞれ意気込みをお願いします。
宮下:2013年から10回も続く作品です。これほど続いたのは、たくさんのお客様に来ていただき、スタッフさんのいろんな努力があったから。集大成のようなものです。今回はいつもと少し違う緊張感がありますね。
平野:第一幕から出ているのが今日いる3人なのですが...もう、出し尽くして、すっからかんの状態です(笑)。今回10回目ですごく皆さん期待もしてくれているので、そこから一つ踏ん張って...。
宮下:30歳超えてもうたからなぁ。
平野:そうだね。俺の場合、20代後半でハンサム落語を始めて、攻めた下ネタを言ってみたり、いろんなことを試しましたけど、34歳の下ネタって正直結構きついなって...(笑)
宮下:可愛くはないよな(笑)
平野:だから、そこの塩梅をしっかり見極めて、大人感をいい感じで出していきたいなと思います。
磯貝:僕も一番最初からやってきて、紆余曲折、いろんなことがありまして...。毎回、僕も出し尽くした感は否めないと思っておりますが、また新しい何かを見つけて、第十幕にぶつけられたらいいなと思っております。僕は、演劇は自由だと思っているので、確かに少しは決まりはありますが、その中でやれることはまだあると思うので、そこを見つけ出して、お客様に見せられたらなと思います。
――今回の演目は『まんじゅうこわい』、『芝浜』、『死神』、『明鳥』。過去に上演したことのある演目から、出演キャストやお客様が好きな演目のアンケートをとって決定されたそうですね。どれもすごく面白い作品ですが、それぞれ作品への思いはありますか?
宮下:僕、『芝浜』をやりたかったんですよ。第一幕の時にやった演目なのですが、当時は下手だった。落語というものを全然勉強していない段階でやっていたので、やり残した感がめちゃめちゃあったんです。公演経験も年も重ねているし、何かまた違った本の読み方やお話の見方ができるのではないかなと思うので、早く『芝浜』をやりたいですね。
平野:僕は『芝浜』を一回もやったことがないんですよ。今回が僕にとっては初『芝浜』。楽しみです。あとは『まんじゅうこわい』。何役も何役も出てくるお話で、お話の面白さと、役者が役を演じ分ける面白さがあると思うので、それがすごく楽しみです。
磯貝:有名な演目ばかり。僕も初めて『ハンサム落語』をやった時は、落語というものを全く知らなかったのですが、今は大好き。今回はきちんと落語というものを見せて...まぁ林明寛君はどうなるか分からないんですけど...(笑)
宮下:やばいよな(笑)
磯貝:その人らしいのもいいんですけどね...。僕は落語の面白さをきちんと伝えたいなと思います(笑)
――どういう点で、落語の面白みや魅力を感じますか。
宮下:『ハンサム落語』は二人一組なので、落語とはまた別物で、お芝居寄りなのかなとも思いますね。1人では演じられない、2人いるから出せる色や世界観がある。だから『ハンサム落語』はかなり新しいものだと僕は思っていますし、見に来た人も絶対はまるんでね。『ハン落』ならではの魅力は二人で見せること。組も変わると、話の内容も全く違って見えるというのは、めちゃくちゃ素敵なところだと思いますね。
平野:役者がやるということに、普通の演劇よりも特化している感じがしますね。普通だったらちょっと悲しいところで悲しい音楽流したら、それっぽく見えるし、楽しいシーンでは軽快な曲を使ったり、照明を落としてピンスポで孤独を表したりと、いろんなものがある中で、『ハンサム落語』というのは言葉で、お話で伝えなきゃいけない。マンパワーを使っているからこその良さがあり、シンプルにお客さんに届きやすいと思います。それがやはり落語の魅力なのではないかなと思います。
磯貝:噺家さんによって、オチが違ったりするんですよ。そういうところが面白いなと思っていて。だから僕らもオチを変えてもいいんじゃないかと思ったりしつつ...
宮下:そういや、勝手に変えた時あったよな(笑)
平野:林がな(笑)
磯貝:組み合わせによっても全く別の話になるので、すごく楽しみです。一緒にやったことのない人もいるかもしれないので、そこもまた新境地というか、新しい面白さを見つけて、お客様も楽しませて、自分も楽しみたいと思います。
――お稽古はどのようにされているのですか?噺家さんが指導に来られたりするのでしょうか?
宮下:なるせゆうせいという演出家がおりましてね...
平野:ケバブ売りみたいな人でしてね...
宮下:一回本を読んで、少し修正して、もう一回やってみる。そんな感じですかね。家でできるんでね、ハン落の稽古は(笑)。各々やってきたことを演出家の前で発表するみたいな感じです。だから稽古はかなり特殊だと思います。
平野:うん、段取りとか動きがなくて、話だけだからね。
宮下:そう、座っているし、首の向きだけなので。
平野:もうプレゼンだよね。
――稽古場はどんな雰囲気ですか?
平野:組む人たちによって違いますよね。若い子たちはフレッシュで、「こうしよう!ああしよう!」と元気。宮下さんと平野ペアは...汚い部室にOBしかいない、みたいな(笑)
宮下:確かに(笑)。もっちゃり、やっているよな。
平野:焦がしたチーズみたいな雰囲気がありますよね(笑)
――第十幕は「集大成」ということも仰いましたが、一区切りということになるのでしょうか?
宮下:どうなっていくんですかね。前回の第九幕はフレッシュな面子も出てもらったし、また違う面白さがありますよね。俺とか龍虎とか良とかもう本当に...
平野:燻りがっこのような(笑)
宮下:2回戦争行った感じ(笑)
平野:帰還兵みたいな(笑)
宮下:そんな感じで、色が全然違うから、これからどうなっていくんですかね。第十幕をやっている時に、その答えが見つかるんじゃないですかね。
平野:確かに。
――フレッシュな方々に対しては、どう思っていますか?
磯貝:はい。いなくなってくれないかなって。
一同:(笑)
平野:若い芽がね(笑)
磯貝:そう、若い芽が怖くて。どんどん面白い人が出てきて。
宮下:確かにタイム風呂敷をかけたいよな。年取らせたい。
磯貝:面白い方もたくさん出てきますし、自分も自分を磨いておかないといけないなという気持ちにさせられます。
平野:若くても、やっぱり実力ないしはやる気・情熱がないと成立しない作品ですよね。逆にどんどんもっと若い子、それこそ20代前半の「やる気あります!」みたいな子が出てきて、それをなるせゆうせいの横に座って見て、お金をもらうというのが僕の目標ですね。
一同:(笑)
平野:監修してお金をもらうという夢(笑)
宮下:確かにな。稽古場の端でぼやいていたいよな(笑)。「これ、もうちょっとこうした方がええんちゃうかな〜」みたいなね(笑)。
――『ハンサム落語』は1つのジャンルとして確立した印象がありますが、今回初めてという方もいらっしゃると思います。どんな方に見てほしいですか?
宮下:「第十幕も続いているから、乗り遅れた感があるし、ちょっとどうしようかなぁ〜」と思っている方もいらっしゃると思うのですが、全然、初見でも大丈夫です。
平野:はい。1回完結のサザエさん方式でやっていますから(笑)。いつ見ても面白いです。
宮下:もちろん、最初からもちろん来てほしいですが、途中入場しても分かるぐらい...いや絶対最初から来てほしいな(笑)。第十幕だからといって、前の流れがあるということでもないので、十幕は十幕という感じ。本当にぜひ来てください。
平野:おじさんとか、もっと演劇ファンの方にも来てほしいよね。このヴィジュアルとタイトルで敬遠されている方も正直いると思うのですが、とにかく一回見て欲しい。全員、本当にお芝居好きなメンバーなんです。お芝居好きでやっているというのが伝わると思うので、芝居ファンには見て欲しいですね。
磯貝:僕は知り合いを唯一呼ぶのが、この『ハンサム落語』。おば様やおじ様が「次いつやるの?まだやらないの?」と言ってくれています。なので、年配の方にも見てほしい。そして、落語を全く知らない人も、落語を好きになるきっかけになるかもしれないので、何も知らない"若葉マーク"の方にも見に来てほしいですね。
――それではここで、最近の小噺を一つ、お願いします。
宮下:こ、小噺!?(笑)...最近ゲーム買いまして。プレーステーション4は、ネットからゲームが買えるダウンロード方式なんですね。先日買ったのは『ネバーエンディング ナイトメア』。ホラーゲームがなんですけど、何が面白いかって言ったら、精神病の人が本気で作ったゲームなんですよ。アニメは全部鉛筆で描かれていて、エンディングが何通りもあって、死んだらまた目覚めて....っていうめちゃくちゃ怖いテイストなので...ぜひ!(笑)。夏だからね。俺は夏に染まりたい人なので。TUBEも怖い話も聞くし、ちょっと冷やっとした小噺がいいかなと(笑)。海行けない分ね、それで夏感じてます(笑)
平野:僕、お酒を飲むとすぐ寝ちゃうんですよ。最近、特に拍車がかかって。次の日に、ことの顛末を聞くと、宮下さんの膝の上に乗っていたりするそうで(笑)
宮下:そう!めちゃくちゃ甘えるし、膝の上で寝ちゃったりする(笑)。死体のようになっているので、タクシーに乗せて、家まで連れて行こうとして、パッと見たら普通に起きていることもあって(笑)。窓の外を見て「明日がんばらなきゃな」とか言っているんですよ!嘘やん!ってなります(笑)。本人がそれを覚えていないし、それも怖いんですよ...。
――磯貝さんはいかがですか?
磯貝:僕の知り合いの役者が、家でサッカーを見ていたらしいんですよ。 W杯のベルギー戦です。それで選手がシュートを外したらしいんですよ。そしたら、彼は「なんやねん!俺の方がうまいシュート打てるわ!」って言って、机をばーんって蹴って、当たって、小指がめきょって裂けて、救急病院行って、縫って、その2日後に普通に走っていたんですよ。
平野:嘘でしょ。どうなの。
宮下:腱切れていたらやばかったね。...こんな感じで、役者、変な奴しかいないんですよ(笑)
――無茶ぶりに答えて下さり、ありがとうございます!では、最後にファンの方に一言ずつお願いします!
宮下:『ハンサム落語』を前からご覧頂いているファンの方、初めてだけれど興味を持ってくださった方、どんな方でも間違いなく面白いので、ぜひぜひいらして欲しいですね。もちろんね、お一人で観劇もいいですけど、見終わった後に「あの演目が良かった」とか話し合うのを、俺、喫茶店で聞いたことがあって。全然気づかれなかったんですけど(笑)。そうやって、友達と見に来たら、もっと面白さも倍増する気がします。エンタメ性に富んだ作品なので、良かったら見に来てください!よろしくお願いします!
平野:皆さんに支えられて第十幕まで歩んでこられましたが、それはそれとして、今までの経験値を活かして、また第一幕と同じような気持ちで臨みたいです。その場で楽しいことを作っていく空間になると思うので、気軽に、遊びに来ていただけたらなと思います。
――では、最後に締めをお願いします!
平野:一言ハードルがクッと上がったな(笑)
磯貝:毎公演毎公演フレッシュな気持ちで挑みたいです。毎公演違うものに聞こえるし、毎日来ても面白いし、また1日だけ来ても面白いというような作品を目指していますので、ぜひぜひ、全通(ぜんつう)してください!大阪もあります!
――ありがとうございました!
取材・文:五月女菜穂
撮影:イシイノブミ
『ハンサム落語』
日程:2018年11月6日(火)~11月13日(火) CBGKシブゲキ!! (東京都)
2018年11月16日(金)~11月18日(日)シアター朝日 (大阪府)
演出・脚色:なるせゆうせい
出演:伊崎龍次郎 、磯貝龍虎、小笠原健 、桑野晃輔、 反橋宗一郎、林明寛、平野良 、松村龍之介、 宮下雄也、米原幸佑 、和合真一(五十音順)