『希望のホシ2018』の稽古場に入ると、集団でセリフを練習する人、一人で黙々と復唱する人、静かに黙読する人、スタイルは違えど、各自が集中して台本と向かい合っていた。
演出の大浜直樹の合図で、立ち稽古が始まる。1幕、民宿ふるさとの1階に続々と人が訪れる物語の導入部で、観客に登場人物を印象づける大事なシーンだ。
若い宿泊客がワイワイとお喋りしているところに、今作のキーパーソンとなる沢木純也(野村宏伸)が登場。沢木は腰の低い男で民宿を手伝っているが、記憶喪失で周りのスタッフが心配している様子。そこに勇ましく登場したのが警視庁捜査一課主任の中原(緒月遠麻)と上條(金児憲史)のコンビ。沢木のアリバイを聞きにきた2人、どうやら沢木は7年前の銃撃事件に絡んでいるらしい。
大浜は刑事の登場に大きく反応した学生役の役者たちに、「観念で芝居しちゃダメだよ。例えばパトカーのサイレンが鳴って刑事2人がやってきたら何?となるだろうけど、この2人はひっそりとくるわけで、その空気を感じてリアクションしないと。ちゃんと2人の表情や空気感を見て」と、ピシャリ。金児は沢木をいかに自然に真ん中の座り位置へ誘導できるかを大浜に相談。細かい動きを決めてゆく。
中原と上條は沢木に殺人に関与した暴力団員について、また沢木自身のアリバイについて質問。何と沢木は銃撃事件の被害者であり、元暴力団員だった!
そこに石渡署の国東(池田努)がやってくる。ここで刑事3人が再会。国東は刑事業務から外され、遺失物管理事務室勤務になっていた...。
緒月はキップが良く、ハンサムウーマンである主任・中原役にぴったり。暴力団を排除するシーンでの「逮捕しますよ」は迫力満点で、まるで水戸黄門の印籠のごとく、爽快感すら漂う。金児はお調子者だが骨太な上條を躍動感たっぷりに演じ、池田は真面目で信念を貫く国東を好演。3人とも前回からの同役を続投しているせいか、キャラクターがすでに肉体に生きている感すらある。野村は記憶を失いミステリアスな存在である沢木を繊細に表現し、存在感を見せた。
この4人に、石渡署の刑事、民宿のスタッフ、自主映画の撮影隊、暴力団、教師など多種多様な人たちが絡み、物語が展開する。ミステリーとしての謎解き、刑事もののチームプレイと友情、笑いも切なさもある人情ドラマなどなど、この一作品でいろんな味が楽しめる。果たしてどんな結末にたどり着くのか、本番が楽しみだ。
(取材・文/三浦真紀)
【希望のホシ2018 公演情報】
6/13(水) ~ 6/17(日)
あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター) (東京都)
[演出・作]大浜直樹
[出演]緒月遠麻 / 池田努 / 金児憲史 / 野村宏伸 / 岩永ジョーイ / 安島萌 / 木村つかさ / 古澤光徳 / 高畠麻奈 / 雑賀克郎 / 石橋政人 / 南野真一郎 / 水鳥皓太 / 登守英生 / 他