2004年女優の深井順子により設立し、作・演出・音楽の糸井幸之介が生み出す唯一無二の「妙―ジカル」を上演する「FUKAIPRODUCE羽衣」
妖艶かつ混沌とした詩的作品世界、韻を踏んだ歌詩と耳に残るメロディで高い評価を得るオリジナル楽曲、圧倒的熱量を持って放射される演者のパフォーマンスが特徴の、FUKAIPRODUCE羽衣の最新公演は、深井順子40歳記念 第23回公演「春母夏母秋母冬母」。
5月24日に初日を控えた本公演の稽古場の様子が、作家部・平井寛人さんより届きました。
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こんにちはこんばんは。僕はFUKAIPRODUCE羽衣(の作家部)の平井寛人と申します。舞台を書いたり演出したりを主にしています。でも羽衣の作品に大きく創作面で携わっているかというとそうでもなく、頭があまり良くないので演出助手のような事も出来る訳なく、ただ観測者のような立ち位置で、たまに出来る事には力を尽くしつつ、入って2年弱も経ちますが、何はともあれ羽衣の奇怪な立ち位置にいます。僕は、一緒に誰かと歩いていると、少し立つ側を変えただけなのに見失われたり、自動ドアがひどい時間差を置かないと開かなかったりします。そうした、稽古場に紛れ込んだ妖精のような、こっそりとした視点で今作の稽古場を見ていきたく思います。羽衣を盗み見るような視点での、稽古日誌です。
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春盛りの日。色味でいえばピンクも赤ばみ、桜も散って、外は快適というにはいやな汗玉を肌にまみらせつつあるところ。一方、某所ではFUKAIPRODUCE羽衣次回公演『春母夏母秋母冬母』の稽古が熟されていっている。セリフの交わらば風が吹き、その都度じんわりと沁みる温もりだけ残る。感情の揺れ動きが役者がた2人によって精査されていっている。作家であり演出家の糸井さんが舵を切れば、その方向にと帆は張られ諸処構われる。セリフが芽吹けば舞台は動き、未知のシーンが見えてきて、みに来ている身には楽しい。
台本会議が途中挟まれる。シーンは全体の3分の1ばかり書き出されており、そこから繋がる『春母夏母秋母冬母』のドラマを、その場の関係者総員で重厚なものにしていこうと言葉が投げかけられる。創作の場で導き出された言葉が糸井さんに飲み込まれたようで、「では4月中にここまで仕上げてきます」と宣言がなされる。言葉は色とりどりに作品のイメージを鮮烈にした。役者がたにもその場の誰にも落とし込まれたような色合いは、タイトルにたがわない美麗さで、作品を詭弁なく形成するのを疑わせなかった。
詭弁なく作品が形成されるのは大変ではあるけれど重大にも思えるもので、それが順調に達成されそうと思える色めく創作の場は、一個人として爽快だった。
カラフルな現場だった。稽古の最初には体幹トレーニングが取り入れられ、僕はそのタイムを計測してアナウンスする役割でもあったので集中して喋りはしないのだけど、それなりに酷なトレーニングをさぼることも無いのに、役者がたは話し続けるのをやめなかった。多彩な話題が出て、それが色んな実を結んだかとハッとする間に次の話題に移ったりした。ただ賑やかに場が明度を増すこともあった。この人間味は、表現するものの資格であるとさえ思った。どの瞬間にも、稽古場は、きちんとカラフルな色合いを保っている。
端的にそうしたカラフルな作品になると思った。森下さん、深井さん両人の、人間味がまま染みたような。
そうしたことが良い悪いではないけれど、そうした作品に向かっていると感じた。そこに裏切りはないままに。カラフルなのにはカラフルな作品になると思った。その色味は詭弁ない全関係者の人柄の色ままに。そうした作品にはきっとなっていくだろうと春盛りの日に感じた。
次の稽古場ではどう変化しているか、また記したい。
どうぞ皆々様、お体ご自愛下さい。
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FUKAIPRODUCE羽衣 深井順子40歳記念 第23回公演 「春母夏母秋母冬母」は、5月24日~5月28日まで、吉祥寺シアターにて。チケットは現在発売中。