2017年8月30日 CBGK シブゲキ‼にて『なつのおわりのゾンビフェス!』が開催された。"ゾンビ"をキーワードに、俳優・入江雅人がホストを務める形で、お笑いコンビ、落語家、俳優、活弁士と様々なエンターティナーが集合し開催された。
オープニングアクトは俳優・小松利昌。おどろおどろしくゾンビに扮し登場。しかし一変、ゾンビが告白の練習をする"恋するゾンビ"話。小松扮するゾンビ女子が、一生懸命に告白しようと練習しようとする姿が、健気で妙に可愛い。
小松が自ら創る小道具のクオリティも彼のコントの見所だが、この日も質感のある"内臓各種"を披露し、全力のゾンビ芸が笑いを誘った。
次に登場したのは、お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹。トレードマークのピンクの揃いのドレスで登場し、このイベントの為に作られたゾンビのオリジナルテーマソングの歌唱を披露。「はらわたからアイラブユー」というキテレツな歌詞を2声コーラスの美声で披露。それだけで終わらず"歌って漫才"のネタも披露。
続いて、お笑いコンビ・チョコレートプラネットが登場。ゾンビと人間の男が、ひたすら取っ組み合いをするコント。長田庄平扮するゾンビが、松尾駿扮する男に迫り、男は「臭い臭い」と突き放すが、懲りずにゾンビは絡んで来る。通常4分くらいのネタを、この日はロングバージョンで叫び戦い続けた。
そして次は、落語家・立川志ら乃の落語。志ら乃は従来から『悪魔のいけにえ』というテーマで落語を行ない、同じゾンビ好きとして、twitter上で入江雅人との縁が出来たことから、このイベントの出演に至った。この日は、『ナイトプールに行くような女をゾンビになってどうにかしたい』という新ネタを披露。ゾンビになるための稽古を習いに行くという、古典落語『あくび指南』を彷彿させながらも全編がゾンビという独創的な噺を、歯切れのいい語り口で聞かせた。
小休憩には、小松利昌と立川志ら乃のトークタイムも挟み、後半戦に突入。
活動映画弁士・坂本頼光による活弁。坂本曰く、ゾンビ映画の誕生は、1932年製作『ホワイト・ゾンビ』というアメリカのトーキー映画とのことだが、今回のイベントでは、1930年日本製作の無声映画、斎藤寅次郎監督の『石川五右衛門の法事』を活弁で紹介。本来、この時代の日本の無声映画にゾンビという概念は無いながら、"死んだはずの人間が墓場から生き返り、生きた人間を襲う"という、ゾンビ映画の基本を踏まえた和製映画である。鮮やかな口跡で演じられるモノクロ無声映画の世界に、日本のお化けとゾンビ的世界の融合、そしてここまで飛んだコント映画が、この時代にあったのかと笑いながら見入った。
イベントのトリは、このイベントのホストで俳優の入江雅人。
入江のライフワークとも言える「一人芝居」、しかも彼が愛する「ゾンビもの」のレパートリーを披露。映画も見た事が無かったという消極的な映研の顧問がいつのまにかゾンビ映画を創り上げるためにリーダーシップを発揮していく、清々しい青春?ドラマ『映研のゾンビ』。福岡出身の入江が筑豊弁で演じる、ゾンビ化した友人との最後のドライブを描き、故郷のノスタルジーとゾンビが絶妙に一つのドラマとなった『帰郷』を演じた。
2作とも一人で演じている事を忘れる程のスケールの大きさがあり、『帰郷』が終わった時には、会場にすすり泣きの声が聞こえた。
5者5様、自身の得意技を生かし、"ゾンビ"というお題の元に集まったエンターティナー達の、芸を堪能できる、まさに"夏の終わりのフェス"。フィナーレで、出演者は、このイベントが刺激的だった事を語り、今後の開催に期待を寄せた。
<公演データ>
『なつのおわりのゾンビフェス!』
2017年8月30日(水)
渋谷・CBGKシブゲキ‼
【出演】
入江雅人(一人芝居)
立川志ら乃(落語)
チョコレートプラネット(コント)
坂本頼光(無声映画上映・活弁)
阿佐ヶ谷姉妹(ゾンビソング・漫才)
小松利昌(オープニングアクト・コント)