歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが都内で会見を開き、歌舞伎座「七月大歌舞伎」で成田屋一門の市川右之助さんが、二代目市川齊入を襲名する運びになったと発表されました。
右之助さんは、三世市川寿海の部屋弟子となり関西で修業を重ねた後に、海老蔵さんの父・十二世市川團十郎に入門。以来、長年に渡り成田屋一門を支えてきた最古参の俳優です。
襲名披露を行うのは、昼の部『盲長屋梅加賀鳶(めくらながやうめがかがとび)』。
海老蔵さんが鳶頭の梅吉と按摩の道玄の二役を、道玄の相棒として悪事に加担する女按摩・お兼を右之助改め齊入が勤めます。
今回襲名する齊入は右之助さんの曽祖父・初代市川右團次が息子に名前を譲った際に名乗った名前です。
その名跡を継ぐことになった右之助さんは「お世話になった寿海のおじさん、一生のうちで大半をお世話になった十二代目團十郎の旦那、そして若旦那のおかげと感謝しております」と緊張した面持ちでご挨拶されました。
海老蔵さんが生まれる前から團十郎さんのもとで修業をされていた右之助さんは、1947年生まれの69歳。
襲名の話が来た当初は、「この歳で襲名していいのか」と思われたそうですが、海老蔵さんから「歌舞伎の未来のために後進の指導にあたって欲しい」という要望を受けて「もう一回一肌脱ごうという気持ちになって、(名前を)相続させていただくことになりました」と決意を語りました。
『加賀鳶』でおさすりお兼を初役で勤める右之助さんに心境を尋ねると「大役をいただいてとても嬉しい」と感無量の様子。作者の黙阿弥は初代・齊入の父で四世市川小團次と一緒に作った芝居が次々と当ったことから「自分にとって縁を感じる」とおっしゃってました。
様々な俳優が演じてきたお兼という役については、三世尾上多賀之丞が印象的だったと話し、「楽屋にいるときからお兼の感じで出ていらっしゃいました。私はそんな風にマネはできないですけれども、少しでも近づけるように頑張りたいと思っております」と意気込みを語りました。
一方、二役をやる海老蔵さんは、「まさか自分がやると思ってなかった」と言いつつも、「父が目指していたものを新しいかたちで継承していければ」と決意を口にしていました。
特に、道玄は年配の俳優がやるイメージだったそうですが、「実は道玄の年齢は42歳なので、私と近かったんです。ですので、江戸の雰囲気をしっかりと表現しながら道玄を体現するように勤めていきたい」と述べました。
夜の部は、日本駄右衛門を中心に展開する奇想天外な物語『通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)』を上演します。宙乗りや大立廻りもあるスケールの大きな作品だそうで、海老蔵さん曰く「古典の歌舞伎を作る才能のある方々に集まっていただきました。この方々と古典の中でも新しいものを作っていきたい。誰でもわかるようなものでありながら後世に残るような作品を作りたい」と抱負を語りました。
公演は7月3日(月)から27日(木)まで東京・歌舞伎座で上演されます。
チケットは6月12日(月)午前10時より発売開始。