元宝塚歌劇団星組トップスター北翔海莉が主演し、『グランドホテル』『タイタニック』も評判となったイギリスの鬼才 トム・サザーランドが演出する注目のミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』 。
物語は、7セント半の賃上げを望むパジャマ工場の労働者と雇用者の闘い、そしてその中の恋をコミカルに描くもの。
耳なじみの良いオシャレな音楽、素敵なダンスシーンも満載の楽しい作品です!
キャストも北翔さんのほか、新納慎也、大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、栗原英雄といった実力派が揃いました。
先日は、北翔海莉さんとトム・サザーランドさんのインタビューを掲載しましたが、今回はプレッツ役の上口耕平さん、チャーリー役の広瀬友祐さんに作品についてお話を伺ってきました!
上口耕平&広瀬友祐 ロングインタビュー
プレッツとチャーリー、一体どんな役どころ?
―― ミュージカル界でいま勢いのあるおふたりですね! おふたりは...
上口・広瀬「初共演です!」
上口「客席からはよく拝見していて、『1789-バスティーユの恋人たち-』(2016年)の時に改めてしっかりご挨拶させていただきました。フェルゼン、すごく良かったです!」
広瀬「いやいやいや...、ありがとうございます。僕もよく上口さんの舞台を観させて頂いています。先ほど、僕ら同い年ということを知ったんです」
上口「敬語からタメ語になる過程を、これから楽しもうと思っています(笑)。初共演の"あるある"ですよね」
広瀬「ぴあさんの取材の時は敬語だったね、みたいな(笑)」
―― まだまだお稽古も先ですが、現時点でご自身の演じる役柄は、どういう人物だと考えていらっしゃいますか?
上口「僕が演じるのはプレッツという役です。作品の舞台はパジャマ工場なのですが、プレッツはそこの労働組合の委員長。とにかく"賃金を上げろ"という運動に躍起になっている男です。すごく野心家で積極的で、どうやら自信過剰らしいです(笑)。役柄についてトムさんから頂いたメッセージがあって、一文目に"エルヴィス・プレスリーのような人"と書いてありました(笑)」
広瀬「へぇ~」
上口「プレスリーのような人というのはどういうことだ、と(笑)。そしてその文章の最後には"ハッピー・パーソン"ともあったんです。たぶん、自分をすごくモテると思ってる! ...のですが、実はモテてない人(笑)」
―― それはちょっと残念な...(笑)。
上口「そうなんです。でも、だからこそ"ハッピー"なのかな、と。ちょっと女性のことを好きになったらグイグイいっちゃうような。そんなに上手くいっていなくても、本人は自信がある。でも、北翔さん演じるベイブともタッグを組んで、組合の運動をしていくんですが、彼女とすごく信頼関係もあるので、そういう意味では大きな人間なのかなと思います。みんなを引っ張っていく包容力のような何かを持ってる。プレッツのそういう"人間力"を探っていきたいなと思っているところです」
―― そして広瀬さんが演じるのはチャーリーということですが...。
広瀬「すみません、(稽古開始前で)現時点で語れることは多くはないのですが、チャーリーもパジャマ工場で働いている労働者のひとり。新納慎也さん演じるシドの友だちです。シドが新しく工場長としてやってきて、ベイブら労働者側と対立していくのですが、その新しく来たシドに色々教えたりするポジションです。で、僕もトムさんから聞いたばかりなのですが、実は、チャーリーもベイブに恋心を抱いているらしい」
上口「おぉ、じゃあちょっと...微妙な...」
広瀬「そうなんです。でもその気持ちは隠している。友だちであるシドがベイブに恋心を寄せていることを知っていて、ベイブの心もシドの方を向いていることもすべてわかっている。その上で自分の気持ちを閉じ込めている」
上口「いい人! めちゃくちゃカッコいいじゃないですか」
広瀬「なんなら、ふたりを取り持ってあげる、くらいの。外から見ればかわいそうな男なんですが、僕はそういう人って憧れます。トムさんにも"悲しい人"にならないで欲しい、明るいイメージで...と言われました。すごく魅力的な役だなと思いますし、チャーリーを魅力的な存在に出来るかは僕次第だと思うので、楽しんでやりたいなと今、思っています」
―― 上口さんの"エルヴィス・プレスリーのような"といったような、キャッチーな説明はなかったですか?
広瀬「...。なかったですね。僕も、何か欲しかったなぁ(笑)」
上口「なんでちょっと悔しそうな顔してんの(笑)」
広瀬「いや、一個わかりやすいのが欲しかった(笑)」
上口「でもすごく素敵な役だね」
広瀬「はい。でもこれはスタートで、稽古で変わっていく部分もあると思いますので、どうなっていくのかも含め、楽しみにしています」
「1950年代のアメリカは、僕らにとって憧れです」(上口)
「僕はコメディ自体が初挑戦です」(広瀬)
―― いまのキャラクター紹介でも少し内容に触れてくださいましたが、物語自体にはどんな印象をもたれましたか? 1954年のアメリカのパジャマ工場で、労働闘争が...というストーリーは、ちょっとほかにはないものですよね。
上口「お話自体はすごくわかりやすいんです。人間ドラマが温かく描かれています。でも社会的なメッセージが鍵としてあるので、掘れば掘るほど深みが出てくる物語だと思いますし、この物語を"今"やるということにもまた意味があると思っています。それと、僕がまず思ったのは1950年代のアメリカって、僕らミュージカルをやっている人間にとっては憧れなんですよ。いわゆる"古き良きブロードウェイ"。『雨に唄えば』の世界! 音楽もダンスもショー的で、エンタテインメント性がすごく強いんです。そこが楽しみでもあります」
広瀬「僕はまず映画を観たのですが、同じような印象でした。トムさんの新演出がどうなるかはまだわからないのですが、この作品の魅力は"ナマ"だな、絶対映画より舞台だな! って。歌とダンスの中に、濃密な人間模様や、社会的なメッセージが盛り込まれている。...まあ、僕はダンスはひと一倍頑張らなきゃ、という問題があるのですが(笑)。それから何よりも"ミュージカル・コメディ"だというところですよね! 本当に楽しめたらいいな、と思っているところなんです。最近僕、暗い話ばかりだったので...(苦笑)」
―― たしかに、広瀬さんがコメディ...というのは珍しい気がします。
広瀬「実際、初めてだと思います。僕」
上口「でも、初めて広瀬さんを見たときに、この方は確実にコメディが好きだって思いました! ...好きでしょ?」
広瀬「ははは(笑)。大好きです。お笑いも大好きなんですよ」
上口「でしょ!? その匂いがプンとした(笑)。正直、だから僕、彼のこと最初から好印象なんです」
広瀬「マジですか(笑)? 嬉しい!」
―― その匂いは舞台上の広瀬さんからですか? それとも普段の?
上口「まず舞台上の彼から感じましたね。それから、ちょっとお話したときにも「変わった人だ」と思って」
広瀬「(笑)。マジメなシーンほど、絶対やっちゃいけないことを考えたりします(笑)。どこか別の、もうひとりの自分が。でもそんなこと、普段は出来ないでしょ」
上口「こういうコメディだと、その思いを爆発させられるよ!」
広瀬「かと思いきや、演じる役柄が"いい人"なんですよ~。なので、どこまで自分にコミカルなシーンがあるかわからないのですが」
上口「とても大人で紳士的な男性から、ちょっと漏れてしまう面白さ...みたいなコメディも成立するじゃないですか。だからそこは我慢しなくていいんじゃない!? 楽しもうよ!」
広瀬「(笑)。でも最初にこの話をいただいて、タイトルに"ミュージカル・コメディ"と入っているのを見るだけで、とにかく嬉しかったです」
―― コメディをやってみたいと思っていたのでしょうか?
広瀬「やりたかったんです。ミュージカルもですし、ミュージカル以外でも。すごく興味がありました。僕はわりと、あまり光が見えない作品ばかりやってきたので(笑)。だから今回、楽しみで仕方ないです」
上口「僕も"ミュージカル・コメディ"って初めてですよ。コメディ要素の強い作品はありますけど、タイトルからそう銘打っているのって、珍しい。コメディだって名乗っちゃうと、ハードル高くなっちゃうじゃないですか(苦笑)。だからそれは、チャレンジだなーと思いますが。でも、僕も楽しみです!」
―― そして『パジャマゲーム』といえば、ダンス!です。ブロードウェイの初演は、あのボブ・フォッシーの振付家デビューとなった作品として知られています。今回の振付のニック・ウィンストンさんも『フォッシー』ロンドン公演のオリジナルキャストでもあるので、フォッシー・スタイルを踏襲するのだと思いますが...。上口さんはダンサーさんですが、フォッシー・スタイルのダンスの経験は?
上口「残念ながら踊ったことはないのですが、やっぱりフォッシーは憧れです。フォッシー・スタイルって、"基礎があってからこその変形"。しっかりバレエをやって、しっかりダンスをやった上で出来る"高級な踊り"という認識なんですよ。なので今回、チャレンジできたら嬉しいですね」
―― どれくらいおふたりが踊るのかわからないのですが...。
上口「僕らもまだ全貌はわからないのですが。『スチーム・ヒート』は知っていましたが、どうなるんでしょうね。僕はもうフォッシーを踊るというのが恐れ多いのですが...楽しみです」
広瀬「僕は...いやもう、あの...頑張ります(笑)」
演出のトム・サザーランドさんについて
―― さて、今回の演出は日本でも評価の高い、トム・サザーランドさんです。上口さんは『タイタニック』でトムさんの演出をすでに経験されていますが、どんな方ですか?
上口「すごくカンタンに言うと僕、トムさんの演出が、めっちゃくちゃ好きなんですよ。というのは、何よりも人間を優先するからなんです。装置とか見た目から作品を作るのではなく、人の動きで世界を作る。そこに道具とかをプラスしていく。イマジネーションが膨らむ作り方ですよね。とても演劇的ですし、僕らやる側からしても、すごく楽しい。それから、"みんなで作るという空気"を作ってくださるんですよ。この人にこんなことはさせられない! といったようなことがなく。お芝居が始まったらみんな平等。そういうところが好きです」
広瀬「僕は前作は拝見できていないのですが、『タイタニック』の出演者にわりと知り合いが多くて、お話を聞いたりしていました。とにかく演出の評価が高い方だというのは知っています。が、一番最初にお会いした時に、まず思ったのは「デカいな!」ってこと(笑)」
上口「(笑)」
広瀬「見た目の印象ですみません(笑)。でも、僕が183センチあるのですが、今まで生きてきて、誰かを"見上げる"ということがなかなかないんですよ。その僕が見上げました(笑)。あとは主に役柄についてなどのお話をさせて頂いたのですが、すごくそのお話に引き込まれました。すぐ人の気持ちを動かすことのできる方ですよね。最初から心を掴まれて、単純に「稽古が楽しみだな」と思いました」
―― あと俳優の皆さんがまず驚かれるのが、"トムさんが予想外にお若い"。...って、ありますよね?上口さん。
上口「ありますね(笑)! 僕らより1学年上? 1歳か2歳上です」
広瀬「...! 嘘だー!!!」
上口「本当なんです。だから同じ高校だったら、同時期に学校にいるパターンです(笑)」
広瀬「うわー。なおさらすごいですね。すごい方ですねー...!!」
上口「すごいんです」
広瀬「...厳しいですか?」
上口「あ、全然そういうことはないです。お芝居に対しての厳しさはあるかもしれませんが、"テメエこのやろー"的なことは全くないです」
広瀬「僕、外国の演出家の方とご一緒するの自体が初めてなんです。稽古場にも通訳の方がいらっしゃるんですよね? 例えば演出家の方が怒ったりしたら、それを通訳する方も大変ですよね」
上口「通訳の方もそのテンションでいなきゃいけないですしね(笑)。でも、そういう意味では、トムさんはそういうことはないから」
広瀬「なるほど」
上口「感情的になることはまずない方ですよ。でも面白いことに、最初はやっぱり言葉がわからないんですが、徐々に、伝えたいこと、言いたいことがわかってくる。だから稽古の後半では、通訳の方が訳す前に「あー、Yes」とか答えてる自分がいますよ!」
広瀬「...。...僕もそうなれたらいいな、と思います(笑)」
「広瀬さん」「上口さん」は、
いつから「ヒロくん」「コウちゃん」になる!?
―― 最後に、この取材がおふたり初の対談とのことですので、今のうちにお互いに言っておきたいことがあれば、ぜひお願いします!
上口「おっ、そうですね」
広瀬 「(突然)ヒロって呼んでください!」
上口「わ、わかった(笑)。じゃあ僕は逆に...ずっと「上口さん」って呼んでて(笑)」
広瀬「りょ...、了解(笑)」
上口「ウソウソ! でもなんでしょうね。その変化も楽しいですよね。ヒロ...ヒロくんね」
広瀬「うん。...でもやっと、共演できたっていう思いが僕の中ではすごくあるんです。上口さんは、歌って踊れて、何でも出来る人という印象でしたので」
上口「なんでそんな!?」
広瀬「いやほんとに。なんでも出来る人。本当に色々教えてもらいたいですね。あと僕も、実は第一印象は「変わった人だなあ」と思ったので!」
上口「本当に?」
広瀬「(笑)。だから稽古場も楽しみだし、楽しかったらいいなあと思っています。大塚千弘さんも、同い年くらいですよね? なおさら楽しみ。同世代で、色々話し合っていけるんじゃないかなと」
上口「じゃあこれを読んでくださった方は、いつかまた僕らふたりがぴあさんで一緒に取材をしてもらったときに「ヒロくん」「コウちゃん」って呼び合っていたら、ニヤっとしてください。あ、あのときから仲良くなってる!って(笑)」
広瀬「その時も「上口さん」「広瀬さん」って呼んでたら...」
上口「もう誰も何も触れられないですね、あのふたりの間は大丈夫か...って(笑)!」