【連載企画③】「イヌの日」稽古場座談会~第二弾~

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防空壕の中チームの四人(青柳文子、大窪人衛、目次立樹、川村紗也)が語る、それぞれの役との向かいあい方と演技論。四人四色の役作りから、防空壕の子供たちが生まれるまでの過程を、役者の視点から語りあう。

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川村 みんな役とかについて結構悩んでる?
大窪 悩んでるというか......、今は台本を読んで、キャラクターをいろいろ試しながらやっている部分がいっぱいあるじゃない。防空壕の外の人たちも。だから、外の人たちの芝居を観てると、「俺は今日はこうしたほうがいいのかな」とか、急に思ったりする。「俺はこうしなきゃダメ」みたいなのが、役としてまったくない。ものすごくフワフワしてる。でも一緒にやっていると、紗也さんは割りともう、なにかあるのかなとは思うけど。
川村 私はそれが逆に悩みで。あんまり柴の可能性をね、台本を読んだときから広げられないのよ。自分の中ですごく珍しいことなんだけど、「柴はきっとこうだろう」というのが、今回はなぜかあって。

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目次 でも、それはいいことだよね。
大窪 うらやましいけどね。
川村 だから不安になる。たとえば柴の精神年齢とか、物事の理解度の高低みたいなのは調整したりするけど。普段はもう千穐楽までずっと悩んで考えて変わっていく。それもいけないんだけど。
大窪 今回は珍しくそうじゃなかった?
川村 なにかが柴にはあったんだよね。せりふの音が聞こえるみたいな。
目次 頭の中で、柴がこういうふうにしゃべってるというのがわかる?
川村 なんとなく柴のせりふは音が重要な気がしていて。「こう言ったらハマるかな」というのがありすぎて、それが逆に今はダメみたいな。でも楽しいです。

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青柳 でも、みんなキャラクターが定まってきつつある気もしますけどね。防空壕の中の子供たちとして。
川村 そうかも。ただ立樹も日々試しまくってるよね。
目次 ごろんごろん変わってます(笑)。
川村 それだけ可能性を出せることがすごいと思って、私はいつも見てるけど。すっごいゆっくりしゃべるときとかもあったもんね?
目次 ありました。もう、思いっきり子供でやったり、子供じゃなくバカっぽくやってみたり。
青柳 今日は大人の感じだった!

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大窪 僕は稽古場でヤギちゃん(青柳)の芝居を観て、いわゆる演劇の発声とはちょっと違う、わりと映像寄りのお芝居だと思って。それに関して松居さんはなにも言わなくて、むしろそっちを求めているのかなと思っていたんだよね。その手垢がついてない技術ではない演技って、俺ら自身も受け手として難しいなと思う。
川村 たぶんそのうち「もうちょっと声出せ」って言われるよ(笑)。
大窪 そっか、言われるか(笑)。
青柳 絶対言われる(笑)。頑張れば声は出るよ! でも、不自然な演技になるかも。まぁ菊沢は、だいぶ不自然な役だからいいのかな......。
大窪 あえて、あまり声を張らないようにやっている部分もあるんだ? ヤギちゃんの中で。
青柳 うん、そうなのかな。
大窪 そこが聞きたかったの。実は。
青柳 (演劇的な発声が)好きじゃないっていうのはある。自分がいわゆる舞台っぽい発声とか、いかにも「舞台!」みたいなお芝居が苦手だからできない。どうしても。それは今の私の課題。好きじゃない感じの芝居も、できるようにならないといけないと思ってるけど。
大窪 そう思うのはわかる。僕はいろんな演出家に、声のことを言われ続けているので。僕の中で、劇イコール声をちゃんと届かせないといけない、みたいなのがあって。だからヤギちゃんの芝居を見ていると、すごくうらやましいと思う部分がある。
青柳 でも、ちょっとそこは頑張ります。
 
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大窪 あと僕ね、舞台の上で急に素が出ちゃうんですよ。たとえばですよ? 本番中にすごく相手役の人のテンションが上がって、急に顔をパンッと叩かれたりとかすると、役として受けられないの。
目次 そりゃそうでしょ。誰でもそうでしょ(笑)。
大窪 でも、松居さんは今回、そういう作り方してる気がする。「なにかを急にやられても、そこで洋介でいてくれ」みたいな。
目次 そうね。そういうのを望んでいるとは思うけどね。(司会進行の話を聞いて)後は作品についてなにかあれば、ということなんだけど......。
川村 誰か、なにかある?
青柳 私は今、菊沢だからわかんない。菊沢って、そんなこと考えてないでしょ?
全員 (笑)
川村 ヤギちゃんとしてでいいんじゃないの?
青柳 無理。できない。ヤギちゃんになれない。
目次 えーっ! すごいな。

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青柳 もう、自分を忘れちゃう。他のお仕事だと大丈夫だけど、この稽古場に来たら、なんかもう「洋介! ウェーイ!」みたいな感じになる(笑)。みんなが防空壕の中の人にしか思えないから、普通の話をしていても、なんかすぐおままごとを始めちゃう。「遊ぼうよ~」って。
川村 あれはヤギの人間性だと思ってた。
大窪 僕も僕も! 違うんだ?
青柳 役から離れると不安なの。ずっと空洞を見つめてないと菊沢が消えそうで。
川村 しんどくない?
青柳 しんどくない。それじゃないと、むしろ私はできない。だから「柴〜」みたいな感じで話しかけたときに、もう紗也さんに戻った状態で返されたりすると、「あれ? 違う人だ。やばい私、普通の人にならなきゃ」と思っちゃう。
川村 じゃあみんなまだ、青柳文子を知らないじゃん!
青柳 うん、知らない。
大窪 ちょっと、怖いよ!
川村 ずっと人狼みたい感じだったんだね......。


―『イヌの日』公演パンフレットに続く。

文 小杉 厚/写真 関 信行


「イヌの日」
公演期間:2016/8/10(水)~21(日)
会場:ザ・スズナリ
席種:前方ベンチシート自由席 4,500円 、指定席 4,500円 
[作]長塚圭史 
[演出]松居大悟 
[出演]尾上寛之 / 玉置玲央 / 青柳文子 / 大窪人衛 / 目次立樹 / 川村紗也 / 菊池明明 / 松居大悟 / 本折最強さとし / 村上航 / 加藤葵 / 一色絢巳 


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