池田鉄洋にインタビュー!「浦島太郎は、とことんツイてない自分の一部」『TARO URASHIMA』

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この夏、8月11日(木・祝)から、明治座にて舞台『TARO URASHIMA』が上演されます。その名のとおり、おとぎ話の「浦島太郎」をもとに、大人だけでなく子どもも楽しめるミュージカルになるそうです。脚本は自身も俳優であり、また脚本や演出でも活躍中の池田鉄洋さん。いったいどんな話になるのでしょうか?お話を伺ってきました。


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――今回の舞台の話はどのように始まったんですか? 

「明治座で、ミュージカルで、浦島太郎を」から始まったんです。でも、最初は、なぜ私に話がくるんだろう? 声をかけてくれた理由はなんだろうと思いました。でも、スタッフたちと話していると、僕がおもしろい、と思うポイントが彼らのそれと近いなと感じたんです。それでお受けしました。

――今回は出演ではなく脚本で参加とのことでしたが、執筆でいちばん苦労されたのはどの場面ですか?

玉手箱の場面ですね。元の話がよければそれをベースにすればいいけど、割と残念な話なので、本当に悩みました。浦島太郎がその箱を開けざるを得ないようにするにはどうしよう、と本当に悩みました。結局、何かの理由で乙姫を守るために開けるという展開がいいということになり、それならば、玉手箱をあげるときは、乙姫が浦島太郎を守りたいからという理由で玉手箱が存在するようにしました。いうなれば、二人の愛の結晶ですね。

――浦島太郎が「とことんツイてない人」という設定はどこから出てきたんですか?

あの浦島太郎は、演出の板垣恭一さんと、千葉プロデューサーと、何度も話をしながら作り上げたキャラクターなんです。

もともと浦島太郎って不思議な話で、最初に亀を助け、そのあと竜宮城でいい思いをして、最後は玉手箱でひどい目に遭う。冷静に考えるとここまでの話は、ツイてない男の「プロローグ」。すべてがツイてないことに結びついていく話なんじゃないかなと思ったんです。そこから「とことんツイてない、だけどメゲない男っておもしろいよね?」って展開になって。そして乙姫についても「どっちもツイてないキャラクターだったらどうでしょう?」ということになり。どうしても中身がスカスカな浦島太郎の話に向き合ったときに、とんでもなく個性的な感じにしてやろうかなと思ったんです。

――脚本に描かれている海の世界と陸、人間の世界。その設定がおもしろいですね。

海の生物ってそんなに陸の生物を食べたりしない。だから、その背景を考えてみた結果、こうなりました。以前、魚の干物を食べていたときに、「この様子を元の魚が見たらショックだろうな...解剖されて開かれて干されている訳だし。元の形がわからないくらい加工されているならともかく、干物ってまるわかりだし!」...っていろいろ考えていて(笑)

今春、「海の風景」という舞台(草笛光子、串田和美、小島聖、池田鉄洋の4人芝居)をやっていたのですが、全然話は違うのですが、海について考える時間がたっぷりあったんです(笑)。そこから考えて、おもしろいと思うものを全て脚本に入れました。

浦島太郎の話って基本的にハッピーエンドじゃないですよね。鶴になって飛んで行ったという結末もあるようですが、それで果たして幸せか? とも思いますし。この舞台では、大人にも子どもにもわかりやすい「ハッピーエンド」な終わり方にしたいです。でも、もともとの浦島太郎の話を子どもたちの知己とは大きく変えたくはなかったです。「全然ちがう!」って言われたくないですし。

――今回、登場人物が相当多いですよね。

私が手掛けた作品では過去最多です。一人ずつの物語を書いていくと2,3時間で終わらない舞台になるので、最後に話がうまくまとまったときには「よくやった、自分!」と思いました(笑)

キャスティングはプロデューサーに一任しました。僕より千葉さんの方がよく知っているし。今回アテ書きはしてないんですよ。木村了くんの出演が決まったときに、もっといろいろやれるだろうと加筆をしたくらい。その後、次々に素晴らしい人たちが参加してくださることになり、それならば...と、他の役にも嬉しい書き直しをしましたね。

――浦島太郎役の木村了さん、そのほか気になるキャストの話も聞かせてください。

まず、「了くんが浦島太郎をやるなら間違いはない」と思いました。木村さんのすごさは知っているから。彼の舞台は「帝一の國」シリーズの2と3、「ライチ★光クラブ」を拝見しています。

浦島太郎は、結構難しい役だと思うんです。ツイてない役だから華は出ないでしょうが、木村さんならそんな設定でも華に変えられる力を持っているから。また、「どんな球でも受けるよ!」という度胸もある。

あと、亀役が斉藤暁んで嬉しかった。...かわいいし。帝役を和泉元彌さんがやってくださることも嬉しかったです。帝ってかなりハードルが高い役ですが、和泉さんなら完璧。浮世離れ感もピッタリです。タカアシガニ将軍役の舘形(比呂一)さんには筋肉を見せつけて踊ってほしいですね。本当に贅沢極まりないです。

プロデューサー的には「ディズニーに負けない作品」「宮崎アニメに負けない作品」とおっしゃっていたんです。そこで(脚本が)俺でいいの?とは思ったんですが(笑)

演出の板垣さんはエンターテイメントを突き詰めている人であり、役者さんの持てる華は全部見せたいという欲張りな人。俺も頑張って書いてますが、板垣さんはさらに欲張りに仕上げてくると思います。


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――「TARO URASHIMA」の登場人物の中で、池田さん自身に一番近いキャラクターは?

浦島太郎ですね。というのも、僕はとことんツイてなかったんです。厄年くらいからずーっと。何をやっても裏目に出て、結婚したときに「もう、どうでもいいや!家族が大事!」と思うようになってからはすごく楽になりました。でも、バリに行けば台風に遭い、ハワイに行けば年に一度の大嵐に遭う。「はい、本番!」って声がかかった直後にヘリコプターがバラバラ飛んできたこともある。撮影でも必ず雨になるので「池田のせいじゃないか?」と言われるたびに猛烈に否定していたんですが、心の中では「すみません、私のせいです」って思っていました。だからツイてない、でもメゲないキャラクターということで、浦島太郎の中に僕が入っていますね。でも、ハワイで嵐に遭っても、僕は当然雨が降ると思っているのでイライラしない。その姿を当時の彼女、つまり今の奥さんに「素敵」と言われましたが!内心、この雨は俺のせいなんだけど...と思っていたけど(笑)

――池田さんから観て、この作品の見どころは? 

「大祓」(おおはらえ)で検非違使たちが歌い踊るところは、かなりショーアップしてほしいと思ってます。タイやヒラメの舞い踊りも、「る・ひまわり」といえば板垣さんですし、思いっきりやってくださると思います。かわいい子たちがダンスして歌うというのも「る・ひまわり」ならではですしね。

僕が初めて明治座で観たのは風間杜夫さんの「居残り佐平次」でした。明治座って割と声を出しながら観ても許される「王道の演劇」を上演してきた場所なので、「今回もそういう場にしなさいよ」って言われているような気がします。

あと、今回は「お客さん」として自分の作品を観ることができるので楽しみです。これまでに大きな舞台の演出などをやらせていただいたときは、出演もしていたので直接観ることができなかったし。自分が演出して出演する舞台の場合、舞台を録画したものを見ながらダメ出ししてましたから(笑)


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