ミュージカル『SONG WRITERS』が7月20日、東京 シアタークリエにて開幕した。森雪之丞が脚本・作詞・音楽プロデュースをし、岸谷五朗が演出を手がける作品。「世界に通用する本格派・日本オリジナルのミュージカルを作りたい」という熱い思いでふたりが作り上げた本作は2013年に初演、大きな話題になった。この作品が屋良朝幸、中川晃教、島袋寛子、武田真治ら、初演と同じキャストにて待望の再演となる。
物語は、世界が驚愕するミュージカルを創ろうという夢を見る自信過剰な作詞家エディ(屋良)と、気弱な作曲家ピーター(中川)が主人公。その夢が実現へと近づく中、エディは現実と物語の境界線を越えてしまい、虚構の物語はいつしか現実の世界で巨大な犯罪組織への招待状へ...。
初日を目前にしたキャストが意気込みを語ったその様子をご紹介します!
屋良朝幸(作詞家エディ・レイク役)
「前回よりさらにエネルギーが詰まった作品になりました。演じたり歌ったりする中で僕も感じるのですが、観にきてくれた皆さまも、何か時空を超えられる感覚があると思います。僕ら演者とお客さまとの境目がなくなる瞬間があるので、それを楽しみに来て欲しいです」
中川晃教(作曲家ピーターフォックス役)
「この舞台には夢を持った人たちがたくさん出てくるんです。きっと進路に悩んだり、何を目指せばいいんだろうと思ってる人たちも、日常の生活の中で、きらびやかな世界に触れたいと思っている人も、歌やダンスが好きな人も、エンターテインメントというものの生まれる瞬間にこの作品は立ち会える。そこが『SONG WRITERS』の一番の魅力なのかなと思います。お客さまも出演者なんです。そんな素敵な作品なのでぜひ劇場へ、足を運んでください」
島袋寛子(聴く者すべてを魅了する歌声の持ち主 マリー・ローレンス役)
「毎日、楽しいことだけじゃなく、悲しいこと、つらいこと、色々あると思うのですが、森雪之丞さん書かれた「この世に100の悲しみがあっても101個めの幸せを書き足せばいい」、このメッセージがたくさん詰まっています。何かしら受け取れるものがあると思うので、ぜひたくさんの皆さんに観ていただけたら嬉しいです」
武田真治(音楽出版社のディレクター ニック・クロフォード役)
「この作品はエンターテインメントのすべてが凝縮されていると思います。笑いあり、涙あり、お色気あり、アクションあり、これぞミュージカルというダンスナンバーも入っているので絶対楽しめる。たくさんの方に足を運んでいただけたら」
――同じキャストでの再演ですが
屋良「(一度やっているので)前回やっていたところくらいまではすぐにいけるのですが、やっぱりそれ以上を目指したいので、さらにブラッシュアップしていく作業が多かったです。短い稽古期間でしたが、稽古始まって少ししたらすぐに毎日通し稽古をし、その中でお互いキャラクターを掴んでいく、という(岸谷)五朗さんのやり方でしたので、演じていても前回とまた違う、新しい感覚に襲われていました。今回は、相方のアッキー(中川)と、前回以上にディスカッションしました。作品自体がそういう話なのですが、現実と普段の僕らの境目がわからなくなるくらい。本当にピーターとエディが曲を作っている感覚で芝居を創っていけました。アッキーが引っ張ってくれました」
中川「ドあたまの1曲目がまさに『ソングライターズ』というタイトル音楽から始まるんですよ。僕らふたりが幼馴染であるという設定で、ふたりでミュージカルを作っていくという夢を抱いた、若者たちの曲なんですね。ふたりがなぜソングライターズを目指したのかが、この中で語られている。でも初演の1年半前は「はじめまして」と顔をあわせたところからはじまった。今回は1年半の時間をかけて、屋良くんの素の部分もよくわかったし、彼のひたむきなまじめな部分と、何よりもカンパニーみんなを愛しながら邁進していこうとする姿に自分が寄り添うことで、自然とふたりが幼馴染な感じになってきたなと、稽古していて感じました」
屋良「(中川は)芝居も歌も、見ていて「俺はこんなに出来なかったのかな」と思わせてくれる存在。もちろん事務所にもすごい方はたくさんいますが、同年代でアッキーみたいな人って(なかなかいない)。色々なところで戦ってきた姿を見れて、今回もアッキーから盗めるところは盗んだし、すごく頼れる存在。エンターテインメントの中ではお兄さん的な存在です」
武田「僕の役は影のある、別の顔がある役なのですが、ひたむきなふたりに引っ張られて、彼らと同じように明るい、社会に恥じない顔を持とうと努力する。そう意味では、彼らのひたむきな稽古の姿勢に影響を受けましたね」
屋良「武田さんは...怪獣みたいです。ほかの作品だとすっと世界観に入れるんですが、『SONG WRITERS』は戦場。出る前に心構えをしないと何が起こるかわからないし、突拍子もないことをしだしたりをするので...」
――アドリブ的な意味で?
武田「僕、このカンパニーではほぼ最年長なんで、ほかのカンパニーでは許されないことも、やってみる...みたいな...(笑)」
島袋「でも楽しいですよ。わたし、武田さんからお弁当のお肉を分けてもらったりとかしました(笑)。わからないところを訊きにいったりとかも...」
中川「俺も(島袋さんに)おにぎりあげたよね! 倒れそうにへろへろしているから「どうしたの?」ってきいたら、「おなかすいた」と言うから...(笑)」
武田「僕、最近料理はじめまして...。肉って焼くだけだったらそんなに失敗しませんよね。だからお弁当箱に肉ぎっしりつめて、おなかすいてそうなひとにわけて、えらそうにするという...(笑)」
島袋「武田さんはひとり静かにして、筋肉作ってますよね!」
中川「この作品、かなり身体張ってるから、けっこう肉体的なところもある。そういう意味では(武田さんは)番長的なところがあるよね。やらっちもそういうところあるけど」
屋良「俺もそうだし、アッキーもインドアに見えますがすごいアウトドア。毎日水泳してから来る。前回より確実に胸筋ついてるよね」
武田「一度僕がアドリブ的に屋良くんを突き飛ばしたら、屋良くんがクビの筋を痛めちゃって...」
屋良「もう全然大丈夫なんですが」
中川「僕たちは、ニックの派手な行動に「今日はあそこに気をつけようね」って(舞台上で)話してます。でも親友だから、そこも含め俺たちは全部受け入れないといけないじゃん。かなり成長したよね1年半で。何が来てもとりあえずオッケーでしょう!」
屋良「前回は探ってた部分があるけどね」
武田「でもこの1年半で本当に(みんなが)大人になりました。再演って前回のものをなぞる作業で終始してしまいがちなのですが、もういちど役を掘り下げてやろうと、特にこの3人が五朗さんをつかまえてはディスカッションしてました」
屋良「前回と違うところもあると思います。みてもらえばわかります!」
文:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
・8月9日(日)まで シアタークリエ(東京)
・8月15日(土)・16日(日) 京都劇場