音楽の天才・モーツァルトの35年間の人生を描いたミュージカル『モーツァルト!』。
ウィーン生まれ、日本でも2002年の初演以来大ヒットをしている人気作が4年ぶりに上演されます。
今回、主役のヴォルフガングを演じるのは、井上芳雄と山崎育三郎。
日本初演からヴォルフガング役を演じている井上さんは今回がファイナルステージ。
山崎さんは前回公演(2010年)に続き、2回目のヴォルフガングに挑みます。
10月某日、その稽古場を取材してきました。
この日はキャスト全員揃っての稽古の初日。
最初に演出の小池修一郎さんより、
「素晴らしいキャストでまたこの『モーツァルト!』をできることを本当に嬉しく思います。千秋楽までみんなで頑張っていきましょう」とひと言。
簡潔な挨拶ながら、引き締まった空気になりました。
この日の稽古は「本読み」。
皆さん椅子に座った状態での、台本の読み合わせです。
ストレートプレイで「本読み」というと、まさに稽古の第一段階!という感じですが...。
ミュージカルでは「歌入り」でやることも多いようです。
今回で5回目の『モーツァルト!』、作品経験者も多いカンパニーで、すでに充分、本番もかくやといった迫力!
音楽(歌)も入るし、音響も入ります。
「本読み」ってこんなに本格的なんだ...と驚きすら感じてしまいます。
オープニング、吹きすさぶ風の音も入って...。
ソニンさんの横顔から、コンスタンツェの凍るような心まで伝わってきそう。
(なお、Wキャストの役柄もありますが、まずはこの時の稽古場で演じていたキャストからご紹介いたします)
オープニングナンバーは美メロながら不穏さも伝わる『奇跡の子』。
この作品が病気療養からの復帰作となる市村正親さんのレオポルトの声も、強く稽古場内に響きわたります!
ヴォルフガングの姉・ナンネールは、初参加の花總まりさん。少女の笑顔!
モーツァルト一家。
自由にふるまう(ふるまいたいと思っている)ヴォルフガング、そんな弟を天真爛漫かつ優しく見つめるナンネール、息子の浮かれ具合に怒るレオポルト。
動きがあるわけではないのに、すでにキャラクターが立体的に動き出しています。すごい!
その後、1幕冒頭早々に作品のテーマソングとも言える名曲『僕こそ音楽』が登場します。
この時のヴォルフガングは井上芳雄さん。
もう、水を得た魚のように伸びやかに歌い上げます!
取材場所がピアノの横だったのですが、すぐそばでピアノが鳴っていても、スコーンと耳に届く井上さんの豊かな声。
歌い終わりではキャストの皆さんから拍手が上がっていました。
豊かな声といえばこの方も。
コロレド大司教、山口祐一郎さん。
「何処だ、モーツァルト!」という声は初演から変わらぬ鋭さ。
どこを切り取っても可愛らしい花總ナンネール。
ここのナンバーは『まァ、モーツァルトの娘さん!』。
花總さん、初役とは思えぬ"しっくり加減"。本番が楽しみです。
ご自身のナンバーを座って歌う方と立って歌う方がいますが、花總さんは立って歌うタイプのようですよ。
こちらは、厳しさを体現して物語を締める、市村レオポルト。
『心を鉄に閉じ込めて』はそんなレオポルトが息子への忠告を歌うナンバー。
レオポルトの心配をよそに、ヴォルフガングはウェーバー一家と知り合い享楽的に過ごしています。
母親のセシリア・ウェーバーは初演から阿知波悟美さん。
3人の姉たちもおなじみの顔ぶれですね!
そして、ソニン・コンスタンツェ。
アロイジア役の秋園美緒さんの素晴らしいソプラノも健在です。
井上ヴォルフガング、アロイジアの歌声を聞いて、「昨日まで他の舞台やってたのに...素晴らしい!美しい!」。
秋園さん、直前まで井上さん主演の『シェルブールの雨傘』にご出演されていました。
そしてところどころアドリブを入れていく井上さん、さすが5回目のヴォルフガングです。
ヴォルフガングとウェーバー一家の軽妙なやりとりで、この日の稽古場で一番、笑いが起こったシーンでした。
山口さんも笑顔です♪
さてさて、1幕中盤に大いに盛り上がる『チョッピリ・オツムに、チョッピリ・ハートに』。
シカネーダー役も、初演から変わらず吉野圭吾さん。
ちゃんと「♪私の芸術は観客の拍手が好き」で、拍手をするキャストの皆さん。
今年もあの華やかな吉野シカネーダーを観ることができると思うと嬉しいですね!
今年もあの華やかな吉野シカネーダーを観ることができると思うと嬉しいですね!
モーツァルトの才能をいち早く見抜きパトロンとなるヴァルトシュテッテン男爵夫人は香寿たつきさん。
作中屈指の人気ナンバー『星から降る金』をしっとり歌い上げます。
稽古場が一瞬、別の空間になったような気がしました。
もちろん歌い終わりでは大きな拍手が!
ヴォルフガングの才能を独占したいコロレド大司教のナンバー『神が私に委ねたもの』。
山口さんの存在感で迫力のシーンになっています(プラス、山口さんらしいチャーミングさも堪能できます)。
アルコ伯爵も、おなじみ武岡淳一さん。
座っての本読みでも、すでに動きが身体から出てしまうようですね。
そんなこんなで、すでに本編のような迫力の歌声が響いた稽古でしたが、クライマックスはやはり1幕ラスト『影を逃れて』。
井上ヴォルフガングの熱唱に、もう聞き惚れるしかありません...。
もうひとりのヴォルフガング=山崎さんも作品に入り込んでしまったのか、一緒に口を動かしていました。
ここで取材時の稽古場では登場しなかったWキャストの皆さんもご紹介。
ヴォルフガング役、山崎育三郎さん。
コンスタンツェ役として初参加する、平野綾さん。
こちらも作品初参加、ヴァルトシュテッテン男爵夫人役の春野寿美礼さん。
作品経験値の高いキャストの皆さんがすでに『モーツァルト!』の世界を構築し、
さらに初参加のキャストも高い実力で、フレッシュながらもすでにその役柄らしいキャラクターを造形しているのがわかる稽古場でした。
そしてこの『モーツァルト!』、天才作曲家の苦悩と歓喜の物語ですが、
父と子の物語でもあり、やはりこの方の存在が作品も、そしてカンパニーもビシッと引き締めてくれるのです。
みんなが舞台復帰を待っていました、演劇界の父・市村正親さん!
何よりもこの作品、やっぱり音楽が美しい!
その美しさ、素晴らしさをしっかり伝えてくれるカンパニーで、早くも本番が楽しみになってしまいました。
【公演情報】
11月8日(土)~12月24日(水)帝国劇場(東京)
1月3日(土)~15日(木)梅田芸術劇場 メインホール(大阪)