『炎 アンサンディ』稽古場レポート&インタビュー vol.2

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incendies201.JPG レバノン生まれの劇作家、ワジディ・ムワワドによる戯曲を、注目の若手演出家・上村聡史が演出する『炎 アンサンディ』

上村さんのインタビュー後編をお届けします。


●上村聡史 インタビュー●


――出演者の方についても伺わせてください。麻実れいさん、岡本健一さんはじめ、実力のある方が揃っていらっしゃいますが、カンパニーはどんな雰囲気なんでしょう。

「おもしろいですよ...! 作品を作っていく上でとても信頼できる人同士が集まったなという印象で、もちろん僕がこうして欲しいということに対して、それもやるんだけど、それ以上のことをしてくれる。(演出家とキャスト)お互いがフェアで、真面目にひとつのものを作ろうという思いが強い現場です。やっぱり僕の頭ひとつでは抱えきれない重厚な作品なので、みんなで意見を言ったり聞いたりすることができるこの現場は作品にとってもいいことだと思います。
麻実さんは10代から60代までを演じていますが、すごく繊細で、かつ大胆。それにやっぱりカッコイイ。アイディアをどんどん持ってきてくれるから、常に一緒にやっていて化学反応が起こっている感じです。岡本さんは(『アルトナの幽閉者』2014年2・3月に続き)2度目なので、僕の手の内がわかっていて(笑)、色々なことを先取りしてやってくれるし。小柳(友)君はすごくストレート。真面目で真摯な人だから、息子としてお母さんに対する愛情がストレートに伝わってきます。それぞれがハマっていて、いいですよ」

――麻実さん演じるナワルと、栗田桃子さん演じる娘のジャンヌの関係性も軸になります。

「そうですね。ナワルとジャンヌは舞台上、ほとんど絡みがないんです。会話をしている時間もない。だけど、母親と娘って特殊じゃないですか。ある年齢になってくると、母親としてだけでなく、同じ女性としてという視線もあって、複雑になっていく。そこから彼女がどう解き放たれていくのか...という視点もあったりと、色んな見方が出来る作品なんじゃないかなと思います」


――ひとりの女性の人生をたどる物語で、年月としても厚みがあるし、過去と現在が同時に舞台上に存在したりもする。壮大な物語ですが、会場がシアタートラムということで、観客も近い距離で物語を味わえそうですね。

「こういったテーマだからこそ、戦況やそれぞれの状況で生きる人たちの姿を、それを演じる俳優たちの姿を、きゅっと近いところで感じていただければと思います。台本には「こうして一緒にいられることほど美しいものはない」というセリフが何回も繰り返し出てきますが、これを演出プランの大きな軸にしています。最後も、台本には(言葉としては)書かれていないのですが、その言葉を意識した演出が入るので、こんな悲惨な話のあとにも救いがある...ということを感じていただければ嬉しいです」


――最後に、今年は上村さんは5本も演出作がありますね。しかも翻訳劇からコメディまで、色んなタイプの作品! その中で本作の手応えは?

「僕、雑食な演出家と言われてるみたいですよ(笑)。今年は、あえて選んでいるわけではないのですが、家族の物語が多いんですよね、憎んだり許したり。あとは国家と個人という物語も多かったので、そういった意味で(両方のテーマを内包する)この作品は今年の集大成というか、力が入っています。コメディはコメディの楽しさがありますが、『炎 アンサンディ』は現場にいていろんなイメージと力が沸いてくる戯曲とテーマで、本当に楽しいですよ!」



incendies211.JPGナワル役、麻実れいさん。
娘のジャンヌが、母・ナワルの過去を辿っていく物語ですが、麻実さんは人々の記憶に強烈に残る「語られる女」といったような役どころが本当に似合います。


incendies212.JPGジャンヌ役の栗田桃子さん。
主に彼女の視線で、観客はナワルの人生を追体験していきます。
ナワルが人々の記憶の中で語られていく女だとしたら、ジャンヌがいるのは「現実」。
栗田さんの地に足がついた演技が、安心感を与えてくれそうです。


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麻実さんと、ナワルの友人・サウダ役の那須佐代子さん。
那須さん演じるサウダも強く凛々しい。
ここでのキーワードは「歌う女」。


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演出の上村さんと、ナワルの息子・シモン役の小柳友さん。
上村さんは、出演者との距離が近い演出家という印象。
小返しごとに、俳優たちのそばに近づいていって、話をしていました。


incendies215.JPG
上村さんと、栗田さん。



【公演情報】
9月28日(日)~10月15日(水)シアタートラム(東京)
10月18日(土)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

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