スティーブン・スピルバーグが監督し、レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクス主演で大ヒットした映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」。同名ミュージカルが2011年にブロードウェイで上演され、その日本版がいよいよ初上陸する。主演の松岡充に意気込みを聞いた。
パイロットや医師、弁護士になりすまし、大金を稼いだ実在の詐欺師フランクと、彼を追うFBI捜査官カールとの間に生まれた奇妙な友情物語。フランクを演じる松岡は「彼はただのペテン師ではなく、生粋の役者なんだと思います。役作りとして高学歴のカッコいい職業を選び、それを舞台の上ではなく、実際の自分の人生の舞台で演じたので犯罪者になってしまったんじゃないかな」と捉える。「それに、認めたくないんですけど...彼と僕は似ている部分がありますね (笑)。僕はミュージシャンとして作詞作曲し、作品を発表することが出来る。役者としては自分以外の様々な人生を生きることも出来ます。色んな立場に立って表現出来るので、フランクに共感出来ます。今までで一番苦労したのは悪役の仮面ライダーをやったときかな。ちょっと無理して悪になるよう心掛けました(笑)」。さらに、この物語は事実だからすごいとも言う。「実際のフランクは刑に服した後、犯罪抑止に貢献し、その上、巨匠スピルバーグ監督が彼の自伝を手にし、映画化され、大ヒットし、そのミュージカル版が海を渡って、僕のところにやって来た(笑)。事実としてダイナミック過ぎますよ」
楽曲が素晴らしいのもブロードウェイミュージカルならではだ。「次の僕のライブで使いたいぐらい。ロック、ポップス、カントリーの要素も入ってるんですが、何よりもビートがある。百戦錬磨のキャストが美声で歌うので、迫力満点ですよ」
舞台デビューが2004年の主演音楽劇「リンダリンダ」だった。それから10年経って、舞台・ミュージカルへの考え方が変わって来たと言う。「千秋楽の翌日は特に。終わってしまうのがイヤで、涙をグッとこらえ劇場に向かうくらい。キャストやスタッフ、作品に関わってくれた皆と家族のようになり、役も自分の中に存在しているままなのに、そのすべてが千秋楽には儚く消え、存在し続けられないのが辛いんだと思います。でも、次の人生に進むため、そしてまた新たな喜びを得るためには得たものを一度置いていかなあかん。それは捨てるということではなく、いつか巡りめぐってまた取りに来たらいいんじゃないかと、舞台経験を重ねて、そう思えるようになりました」と明かす。全力投球の彼の七変化を大いに期待したい。
公演は6月21日(土)から7月13日(日)まで東京・シアタークリエ。7月16日(水)は愛知県芸術劇場大ホール。7月18日(金)から7月20日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。チケットは発売中。
取材・文 米満ゆうこ