「おそるべき親たち」東京初日レポート

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俳優5名のアンサンブルに鳥肌立ちのすごい舞台!

~「おそるべき親たち」東京初日レポート

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撮影:引地信彦


3月2日(日)、東京芸術劇場シアターウエストで「おそるべき親たち」が開幕した。作品はジャン・コクトーの名作で、没落へと向かうブルジョワ家族をめぐる物語。出演は、佐藤オリエ、中嶋朋子、満島真之介、中嶋しゅう、麻実れい。前評判は聞いていたが、期待を越えるレベルの高さとその迫力に圧倒される舞台だった。大阪公演を控え、ひと足先に観劇した東京公演の初日レポートをお届けしよう。

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撮影:引地信彦


暗い劇場内に、少し高さを感じる丸い舞台。そこには、無造作に積まれたクッションと、複数のろうそくが2か所に置かれている。薄暗い闇の中から、人影の気配が。母親イヴォンヌ(麻実れい)が、けだるそうにクッションの山に横たわる。ハエの羽音。ぼんやりとしか見えない。何が起こる? 息を詰めて目を凝らした瞬間、場内アナウンス。いきなり観客の心を乱す幕開きだ。

低血糖のイヴォンヌを介抱する姉レオ(佐藤オリエ)と、おろおろする父親ジョルジュ(中嶋しゅう)。全員が黒い衣装。ろうそくのぼんやりした明りの中、初めて外泊した息子ミシェル(満島真之介)をめぐる会話に、ゆっくりと床が回り始める。そこへ真っ白の衣装を身に着けたミシェルが帰宅。舞台がパッと明るくなる。母親をソフィーと呼び、キスしてはしゃぐミシェル。なんかヘンだ、この母子...。

レオは昔、婚約中だったジョルジュをイヴォンヌに取られ、今でも彼を愛しながらひとつ屋根の下に住む。イヴォンヌは夫より息子を溺愛し、夫には愛人がいる。なんかおかしい、この家族...。


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撮影:引地信彦


ミシェルの初恋宣言に動転するイヴォンヌ。息子の恋人が自分の愛人だと知るジョルジュ。その狼狽ぶりに客席から笑いが起こる。醒めた目で状況を見つめるレオが不気味だ。レオは提案する。みんなでミシェルの恋人・マドレーヌ(中嶋朋子)に会いに行こう、と。そう、ジョルジュがマドレーヌと密会していた愛の巣に...。

1幕が終わり客席に明りがつく。一瞬の間の後、観客がみな、ふぅ~っと息を吐き、ざわめく。登場人物の濃密な関係と心の動きに、思わず息を詰めて観ていたのだ。2幕はもう、そのスリリングな展開から目が離せない。でも緊張しながら笑ってしまう。かき乱される感情。そして、衝撃のラストへ。


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撮影:引地信彦


俳優たちのアンサンブルは、唸るほど見事だ。さらに、最小限の舞台セットで登場人物の揺れる心を克明に見せつけ、観客の感情のうねりを増幅させる熊林弘高の巧みな演出。そしてやっと理解する。一見、三面記事を思わせるようなドラマでありながら、おぞましくも人間の奥底をえぐるような物語。これは天才コクトーだからこそ、構築できた倒錯の世界なんだと。

「すごい舞台、観た...」。

観終わって、きっと誰もがそう思うはず。15分休憩をはさみ、約2時間半。共有した時間は、その瞬間に消え去ってしまう生の舞台。が、その重力感ある印象は、ボディブローをくらったように心に響き、記憶に残り続ける。こんな演劇体験は、そうざらにできるものじゃない。ドラマシティなら、オペラグラスで観るのもいいだろう。覗き見る、という行為はこの作品にふさわしい。

演劇通をも唸らせるすごい舞台。もうすぐドラマシティにやってくる。


演劇ライター・高橋晴代

 


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