「演劇動画15分1本勝負」と銘打ち、編集を一切しない演劇動画を楽しもうという企画"クオータースターコンテスト(=QSC)"。
2012年に第1回が開催され好評だったこともあり、昨年、第2回目が開催されました。
今回も全国からたくさんの応募があり、総勢78作品でグランプリを競いました。
審査員は前回に続き作家・演出家の鴻上尚史さん、雑誌・演劇ぶっく編集長の坂口真人さんと、今回新たに映画監督の吉田大八さんが加わり、厳正な審査が行われました。
結果はこちらの公式サイトにてご確認ください。
公式サイト:エントレ
グランプリ以外の賞として、げきぴあも前回に引き続き参加いたしました。
審査基準は、動画としての完成度の高さに加え、リアルな演劇として観た場合も面白いと感じる作品を選ばせていただきました。
そして栄えある"げきぴあ賞"に輝いたのは
切実「墓場まで」です!!
第1回目に続き、2度目のげきぴあ賞授賞です。
正直、審査員からも「技量が高すぎてズルい」というコメントが飛び出すほどの完成度。
レベルが高すぎるゆえに"特別扱い"で選外にしてしまうにはあまりにも勿体無い!
やはり初心に立ち返り、一番面白い作品を、ということで選ばせていただきました。
その投稿動画はコチラです。
げきぴあでは「墓場まで」制作のウラ話や今後の活動について、作家のふじきみつ彦さん、演出&出演の岡部たかしさん、出演の永井若葉(ハイバイ)さん、岩谷健司さんにたっぷりお話を伺いました。
左から岩谷さん、永井さん、岡部さん、ふじきさん
――げきぴあ賞、おめでとうございます。今回はテーマが大人向けと言いますか、ちょっと言葉にし辛いのですが、これをフックに創ろうと思ったのはどういったことがキッカケだったのですか?
岡部たかし:僕と岩谷さんがピンク映画に出たんですよ。上野界隈の映画館でやっているような。それをふじきくんと三人で観に行ったとき、ちょうどこのQSCの話があって。
ふじきみつ彦:QSCの担当の人から「今年も出しますか?」ってその日の朝メールが来てて。
岡部:それで、みんなでピンク映画を見たあと居酒屋に行って、次どういうの撮ろうかって話しながら、ピンク的なもので15分やるのはどう?ってなって(笑)。ちょっとエロいの思いきってやってみようかって、お酒も飲んで盛り上がってたから(笑)。
ふじき:次の日の朝起きてから冷静になってみて、ユーチューブにあげること考えたらやっぱり無理だろうなと。
岡部:それでふじきくんのなかでピンクの要素だけが残ったんでしょうね(笑)。ホント言うと若葉ちゃんに脱いでもらおうかと。
永井若葉:わたしも真剣に考えましたよ(笑)。
――そんな話まで出ていたとは!確かに会話にエロさがありましたね。子どもには刺激的というか...。
岡部:あっ、でもうちの息子(中学一年生)には見せたんですよ。正直な感想聞いたら第一声がお父さん"ウザイ"(笑)。空気ぜんぜん読めてないし、墓場まで行って謝ってるのに何で言うんだろうね、ああいうこと。ただ、ウザイって言い過ぎたと思ったのか、あの緊張感はお父さんだけじゃなく周りのみんなで作ってると思ったよ。どうなっちゃうんだろうって、見てるときすごく緊張した、結局お父さんが一番かわいそうだけどって。全体をちゃんと見てくれてる面白い感想だった。
岩谷健司:中一にしてそんな意見が。
ふじき:ちゃんと見てたんだね。前は"パパカッコいい"だったのが段々わかってきたんだね。
岩谷:言葉の意味や感じることが増えてきたんだ。
岡部:会話についてはどうなの?って聞いたらそれはまだ言えないって。
岩谷:ふじきピンクですから。
ふじき:ピンク好きな人が見たらなんだコレって思うよ。淡いピンク過ぎて薄いな~コレって(笑)。
――今作の撮影場所は演劇人なら誰でも知ってる"ふるさと"ですね。
岡部:ほんとに通い詰めましたよ。稽古終わったら飲みに行って、(お店を)借りたいといつ言おうかと。
ふじき:ト書きに書いた二階がある居酒屋とぴったりなところが"ふるさと"かなって。
岩谷:和室の感じがしたしね。
ふじき:「城山羊の会」でボトルも入れてたし。
岡部:でもそんなに簡単に貸してくれるかどうかと思ってたんですが、話してみたら「大丈夫ですよー」って。
岩谷:寛大でしたね。お店にある物も適当に使っていいですよと言ってくださって。すごく協力的でした。
――撮影は一日で?
ふじき:午前9時くらいから準備に入ってお昼くらいから撮影し始めました。
岩谷:その場で練習もしてからようやくカメラを回していったから。
永井:集中力が続かないし、一日でそう何本も撮影できないんだなって思いました。
ふじき:映画の現場みたいにスタッフが沢山いるわけでもないから、自分たちでやらなきゃいけないこともすごくいっぱいあるし、余計疲れましたね。若葉はみんなのお弁当を買いにコンビニ行ったりしてたし。
永井:差し入れ用の食べ物や飲み物を買いに行きました。
――15分編集なしの動画撮影はなかなか難しかったのでは?
岡部:やっぱり時間的な配分が難しかったですね。最後のコンマ何秒とか。
ふじき:本当はラストにあと一言くらいあったんだよね。
岩谷:ビール瓶にも「おしまい」って書いてたんですけど、そこまで撮ると15分超えちゃうんですよ。
ふじき:頭のシーンとかもちろん切ってるんですけど、2秒くらい超えちゃって。
岡部:4回か5回くらい撮りましたが、投稿したものが一番よかった。
岩谷:(ボツにした動画は)テンポを早めようとしちゃったり。自分たちの間(テンポ)で芝居ができてなかったから。
ふじき:「おしまい」は入れなくてもいいよって。
永井:私は最後のほうでセリフを噛んじゃったのでやっぱり悔いは残りましたね。"パエリア"を思い出して「是枝って響きに似た料理」と言うところで"是枝"を噛んでしまって。映像をよく観ていただくとわかりますが、そのあと若干、素で落ち込んでいるんですよ。
岡部:撮影続いてるしなぁ。
ふじき:みんなもね、そこまで上手くいってたからどうしよう、どうしようって。
永井:(笑)
ふじき:で、その後2本くらい撮ったけど、やっぱりアレがよかったねって。
岡部:6時間くらいあったら15分くらい何回も撮れるのかなって思うんですけど、1回撮ると結構疲れて。
岩谷:休憩しないとダメだよね。
岡部:よし撮るぞって気持ちになるまで時間かかるし。何回かしか撮れないよね、やっぱり。
――そんな撮影秘話があったのですね。
さて、では最後に2014年の活動予定を教えてください。
岡部:ふじきくんが個人で立ち上げた"いて座の行動"というユニットにみんなで参加します。
――ふじきさん主宰の公演をやろうと思われたのはどんなことから?
ふじき:ここ何年かは誰かに頼まれて脚本を提供することが多かったので、自分で何かやるというのはなかったんですが、やりたいタイミングでやりたい人とできる場所というのを作っておきたいなと思って。僕は射手座なんですけど、岩谷さんが星座が好きで、こういう事をやろうと思っていると話したら「さすが射手座の行動力」と言われたので、ユニット名を決めていなかったからじゃあ『射手座の行動』にしようと。
岩谷:来年はね、『射手座の行動』で。
ふじき:何回やれるかな。ほんとは二ヶ月に一度とか言ってたけどビビって会場押さえてない。
岡部:劇場をちゃんと借りて公演するというより、小さな、喫茶店みたいなところでもいいから鞄ひとつ持っていけばいきなりそこで出来ちゃうくらいのが逆にかっこいいんじゃないかと。そういう演劇ができたらいいよねって。
岩谷:機動力の高い演劇ね。
ふじき:昔、渋谷の劇場で毎週金曜日になるとイヨネスコやベケットをやったりしてたって話を聞いたりすると、なんかいいなぁと思って。必ず満員にしなきゃいけないってわけでもないし、常にやっているって事と、それを見に来る人がいるのが大事で。
岡部:なんか変なことやってる、違和感がある集団だぞと思われるくらいのほうが面白いとぼくも思いますね。
――新しい活動も楽しみですね。本日はありがとうございました。
【第2回QSC参加作品:切実『墓場まで』】
作:ふじきみつ彦
演出:岡部たかし
出演:岩谷健司・岡部たかし・永井若葉(ハイバイ)・椎名琴音
撮影:ムーチョ村松
録音:杉崎真由子
協力:小料理ふるさと・手代木梓
【今後の活動】
射手座の行動 第1回公演『行動・1』
作・演出:ふじきみつ彦
出演:岩谷健司、岡部たかし、永井若葉(ハイバイ)、山村麻由美
2014年2月7日(金)~12日(水)
@新宿眼科画廊・地下
〈お問い合わせ〉itezanokoudou@gmail.com