庭劇団ペニノの新作『大きなトランクの中の箱』の観劇レポート

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庭劇団ペニノのはこぶね新作は、装置もストーリーもスケールアップした大作だった!

4月12日(金)、庭劇団ペニノはこぶね新作『大きなトランクの中の箱』が東京・森下スタジオにて開幕した。

「はこぶね」とは、青山にあったマンションを改造してつくった劇団アトリエのこと。
このはこぶね、もともと主宰タニノクロウが住んでいた部屋を改造したそうだが、「な、なぜそこまで!」とツッコミたくなるぐらい、とにかく舞台美術の作りこみ具合が半端ない。砂が敷かれたり、精巧なジオラマ(電車が走る!)があったり、精液みたいな白い水が漏れてきたり、一面青いタイルがビッシリ貼付けられていたり......。この舞台上を見るからに怪しげな役者たちがもそもそと動き回り、正直よくわからない会話を繰り広げる。

やたら濃くて、意味不明で、でもどこか愛らしい。それがはこぶね作品の特徴だ。

今回の新作は、これまではこぶねで上演された『小さなリンボのレストラン』(2004)、『苛々する大人の絵本』(2008)、『誰も知らない貴方の部屋』(2012)の3作品をギュッとひとつの「箱」に詰め込んだものになった。はこぶねの入っていたマンションが解体されることとなり、いつもよりかなり大きめの森下スタジオという空間でつくられた。果たしてあの古いマンションの怪しげな雰囲気なくして、ちゃんと「はこぶね作品」として成立するのかどうか――。

そんな不安とともに観劇した舞台は、いい意味で期待を裏切ってくれた。

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過去の3作を取り込みながら、オムニバスではなくちゃんと一つの作品に仕上がっている。ポイントは大きく2つあるように思う。

ひとつは、舞台装置。
3場目になり、ようやく「そういうことか!」と思ったほど、ビックリするような出来栄え。今までのはこぶね作品の、細かい装飾は踏襲しつつ、もっとスケールの大きい装置になっていた。
確かにこうした装置があれば、はこぶね作品を外の空間に持っていっても問題ない、逆に、外に持ち出す意味がある。
ホームページに「文字通りのはこぶねと出航します!」とあったが、この装置そのものを"はこぶね"と呼んでもいい。それほどアイディアに詰まった、大きなからくりボックスに仕上がっていた。

そしてもうひとつは、極めて明快になったストーリー。
これまでのはこぶね作品は、「男がおかしな空間に迷い込む」という大体の構図はありつつ、その「男」自体もまた狂ってるため、物語がよくわからない方向に進むというものだった。
ところが今回は、3作品をひとつにするにあたり、大きな一本の筋が通っていた。1時間30分の上演時間のなかで観ている者は迷子になることなく、物語の展開をたどることができる。

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この「タニノ版不思議の国のアリス」のような物語を、はこぶね作品にしては珍しく"ハラハラして"見守ることになった。

装置とストーリーががっちりかみ合い、スケールアップした本作。
庭劇団ペニノのひとつの集大成とも言えるだろう。

4月29日まで、森下スタジオにて。

撮影:田中亜紀


☆こぼれ話☆
ちなみに、帰りに森下駅まで歩く途中にある、美容室?のような建物の壁に生えているツタが、行きに通った時より妙に躍動感があるように見えました。よかったら注目してみてください。


【公演情報】
庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』
4/12(金) ~ 4/29(月・祝)
森下スタジオ Bスタジオ (東京都)
[作・演出・美術]タニノクロウ
[出演]山田伊久磨 / 飯田一期 / 島田桃依 / 瀬口タエコ / 他


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