ワタナベエンターテインメント所属の若手俳優集団・D2のメンバーが出演する舞台Dステ12th『TRUMP』。
今作は、関西を拠点に活躍している作・演出家の末満健一が立ち上げた演劇ユニット「ピースピット」で2009年に初演された作品をD2バージョンに書き直し、新たな作品として上演するもの。
物語は、学園を舞台に不死を失った吸血種《ヴァンプ》の少年たちが、永遠の命を持つ《トランプ》という原初の吸血種の不死伝説に翻弄されていく姿を描いていく。
『TRUMP』では、劇中に登場する親友やライバル、同僚など対の立場となるふたつの配役をふたり一組の役者が演じる独自のキャスティングシステム("TRUTH"と"REVERSE")を採用。
いわゆるダブルキャストとは違い、同じ物語、演出でもバージョン違いで見比べたりとこちらも楽しみのひとつ。
1月某日、その稽古場を訪れ、教師・クラウス役と生徒・アレン役を交互に演じる陳内将と山田裕貴にインタビューした。
(左:陳内将、右:山田裕貴)
――今回の舞台はD2メンバーが総出演しますね、最初に舞台の話を聞いた時の印象をお聞かせください。
陳内
「そうですね。ここまで一緒にやってきてD2のみんなでお芝居をやれるって言う嬉しさもある一方で、甘えや妥協はできないなと。作品を創り上げていく上で、D2のわちゃわちゃした仲のよさが逆に足を引っ張らないようにしなければって思いました」
山田
「D2のみんなと一緒にいられるチャンスがなかなかなかったので、そういう意味では楽しみです。陳内さんが言うとおり、仲間ではあっても友達ではないので、お互いに意見を出し合ったりしながらみんなで高めあえたらいいなと思います」
――おふたりは2つのバージョンで同じ役を交互に演じられますね。陳内さんはTRUTHではクラウス、山田さんはアレン、REVERSEではその逆です。TRUTHで演じる役どころについて簡単に説明してもらえますか?
陳内
「クラウスはヴァンパイア学校の教師のひとりなんですけど、先生たちの中ではちょっとドジっこの面もあります。そのドジや抜けているところも何を理由にそうなってしまったのか、ということなんですけど。問題ばかり起こすアレンという生徒に振り回されてしまううちに、なんかこう翻弄されていくというか......」
山田
「クラウスにとってアレンという存在はとてつもなく大きいんです。まぁ、言ってしまえば生徒のお目付け役なんですけど。でもなぜがアレンに心を動かされてしまうと言う......」
--何だか役の説明が難しそうですね。それはネタばれになるから?
陳内
「そうなんです(笑)」
山田
「見たらわかってもらえます!」
――そうでしたか、わかりました。役についてあまり深く伺うのはやめましょう。それでは台本を読んだ感想をお聞かせください。
陳内
「初演のDVDを見ながら台本を読みました。ふとしたところにキーワードがいっぱい転がっていて、台本を1回読んでつかみ損ねたワードや大事な部分がありましたが、観ていくうちに点と点が繋がっていく感じです。登場人物の関係や時系列が初見だと難しい部分もあるかもしれないですね。」
山田
「とても詰まったストーリーですね。それがシームレスでシーンの中で行われたりするので。ほんとにゴッチャになっちゃうところもあります」
――TRUTHとREVERSEの両バージョンを観るとより楽しめるということでしょうか?
山田
「REVERSEがあるから2度楽しめるだけじゃないんですよ。実は伏線探しがあって、ほんとはそっちが狙いなんじゃないかな。初見の人は最後まで分からないと思う。"何だろう何だろう、えーっ"てなると思う」
陳内
「観るたびに内容が分かってくるから、何回も観たいと思ってくれるお客さんも多いはず。」
――ひとり2役の楽しさと大変さはありましたか?
陳内
「ひとつの作品を2つの視点から見られることって、そうそうない経験だと思うので。山田がクラウスをやっている時は客観視できるから、自分の中でもクラウス像がどんどん膨らんでいくんですよ。そういう意味ではプラスなことが多いなって思いますね。大変なのは、普段の舞台と比べて2倍のことをやるので、セリフや段取りなどを覚える分量が大変ですね。でも最初はバタバタと"わー何だっけ"ってなりましたけど、稽古を重ねていくうちにそこは解消されてきました」
――役が入れ替わるとどんなところが変わるのですか?
陳内
「演者が変わるということもそうですが、TRUTHとREVERSEで末満さんの演出が変わるところが大きいと思っています。TRUTHは僕の個人的な捉え方なんですけど、作品の本質が"ソン"って提示されている感じ。飾りなく"これがTRUMPですよ"って。REVERSEはちょっとキャラの個性が強かったり、TRUTHとは違ったセリフの言い回しがあったりとか、作風が違うよね?(と山田に同意)」
山田
「ほんと、もう"スン"か"ソン"って感じです」
――山田さんは今回が初舞台でいきなり2役ですね。
山田
「ちゃんと出来ているのかわからないですけど、やるしかないです。他のメンバーに教えてもらったときに"出ハケ(登場と退場)で舞台に思いを残してって"と言われて、あー、舞台ってそこに立っている人だけが作っているわけじゃないんだ。全員で大きな形にするというのはすごく難しいなって思ったし、自分がもっと貢献できなきゃいけないって思いました。映像だと監督がやるような作業も、舞台だと自分で理解してないといけないんだなって。山田裕貴はこう考えておかなきゃいけないけど、役ではそれを見せちゃいけない。その役を通してちょっとずつ関係の深い役にアプローチしていくだとか。そういう部分は(映像では)ぜんぜん考えたこともなかった。重要なポイントの強調のしかたが舞台は強いなって思いました。
――ところで配役はどうやって決まったのですか?
陳内
「ワークッショップが1日あって、そのあとキャスティングされました。自分でもクラウスとアレンを希望していました。相方も山田だろうと想定してました」
山田「最初はアレンだけを気にしていたんですよ。クラウスは自分の中にはなかったんですが、いざ蓋をあけたらアレンのほうが苦戦しているんです。演出もあるんでしょうが、個性を強く出せるクラウスの方が楽しくやれているんです。アレンが、これが曲者なんですよ(笑)」
――お互いが演じている役をみてどんな印象を持たれましたか?
山田
「面白い!いいなって思いました」
陳内
「(山田に)どんなところが?」
山田
「考え方と性格が違っても成立するんだって思いました。(陳内さんを見て)だから出てきた僕のプランみたいなものもあって」
陳内
「山田がアレンに苦戦していたときに、稽古でぼくがアレンをやった時があって。それまでは山田と自分の役を比較ていなかったんですよ。それで山田のクラウスを見たときに"こいつ僕と違ったタイプの気持ち悪いヤツだな"って思って。自分と役のキャラが被っていなかったので嬉しかったのと、こっちのほうがいいのかなってたまに嫉妬もあって(笑)。お互い優劣をつけようとか勝敗が欲しいわけじゃないけど、コイツのここがいいなって思える感じが頼もしいですね」
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
陳内
「とにかくたくさんの方に観てほしいです。何度観ても楽しめる作品ですので、ぜひぜひお越しください!」
山田
「アレンとクラウスはお客さんの心を動かせる重要なキャラクターです。どこまで強く伝えられるか、僕らのお芝居次第だと思いますので、とにかく頑張ります!」
【取材】げきぴあ編集部(金子珠美)
<プロフィール>
■陳内 将 (じんない しょう)
1988年1月16日生まれ
ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン柳沢慎也役で人気を得る。舞台はD-BOS STAGEのほか、「忍たま乱太郎」、「タンブリング」に出演。映画「ポールダンシングボーイ☆ず」、「メサイア」、ドラマ「スイッチガール!!」に出演するなど、順調に活躍の場を広げている。現在、「特命戦隊ゴーバスターズ」エンター役にて活躍中。
■山田 裕貴 (やまだ ゆうき)
1990年9月18日生まれ
「海賊戦隊ゴーカイジャー」ゴーカイブルー役で注目を集める。ドラマ「D×TOWN第三弾 ボクらが恋愛できない理由」、ドラマ「GTO」では藤吉晃二役を務めた。
♪♪♪稽古場フォトギャラリー♪♪♪
[中央:陳内将]
[左:大久保祥太郎、中央:三津谷亮]
[西井幸人]
[中央:山口賢貴]
[左から前山剛久、根岸拓哉、白又敦]
[左:志尊淳、右:大久保祥太郎]
[上鶴徹]
【撮影】吉田タカユキ(インタビュー・稽古場)
☆稽古場フォトギャラリー第2弾はコチラ
Dステ12th『TRUMP』
1/23(水) ~ 2/3(日) サンシャイン劇場(東京都)
2/8(金) ~2/10(日) ABCホール(大阪府)
※東京公演は1/22(火)0:00より当日引換券を発売