■『エリザベート』への道 2012 第38回■
ウィーンでの誕生から今年で20年、日本でも広く愛されている『エリザベート』。
この大ヒットミュージカルが8月4日、愛知・中日劇場の昼の部で上演回数1000回を達成しました!
初演は2000年6月6日。
12年、のべ19劇場公演をかけてこの日、ついに大台突破となりました。
この日のエリザベートは春野寿美礼さん、トートは山口祐一郎さんです。
この日も熱く、素晴らしい舞台でした!
通常のカーテンコールのあと、この日は特別カーテンコールが行われました。
舞台上のスクリーンには
「ミュージカル エリザベート 上演1000回達成!」
の文字が。
そしてスタンレー役の久路あかりさんの司会で、初演から出演している7名がご登場。1000回欠かさず出演しているのは、ルイジ・ルキーニ役の高嶋政宏さん、マダム・ヴォルフ役の伊東弘美さん(伊東さん、最初の頃はリヒテンシュタインを演じていましたね!)、グリュンネ伯爵役の治田敦さん、そしてさけもとあきらさん、武内耕さん、河合篤子さんの6名。
また、ダブル&トリプルキャストのため1000回全出演ではありませんが、山口祐一郎さんも初演から参加されています。
中でもやはり、殊勲賞はこの方でしょう。
ルキーニ役の高嶋政宏さん!
「僕は今まで公演回数を数えたことも、キャスト表をみたことも、スケジュール表を見たこともなく今日までやってきました。600回の時とかは『なんや600回か』とか思っていたんですが、さすがの僕も1000回と訊くと、すごいなと思います。12年前はあまりの大変さに、袖で『くそー、受けなきゃよかった』とぜーぜー言いながらやっていたんですが、徐々に、僕の今までやってきた役の中でもこれほどリラックスする役はない、というほどになりました。...今この瞬間は1000回の感動に浸るんですけど、すぐに気持ちを入れ替えて、夜の公演にむけてまた死に、生き返りたいと思います!」と振り返りながらも力強く前向きなご挨拶!そして山口祐一郎さんは
「1000回おめでとうございます!僕は半人前ですが、最近は三分の一人前になりました(笑)。それでもトップランナーの6人のあとを追って、これからも懸命に励みたいと思います」とチャーミングにご挨拶されていました。
この日は、初演時の映像が流れるサービスも。
懐かしの映像に客席のお客さまからも大歓声。
山口さんや高嶋さんの映像が映しだされると、拍手も起こっていました。
そしてスペシャルゲスト、初演のエリザベート役、一路真輝さんが登場!
高嶋さんに花束を渡します。
この公演を観劇していたという一路さん、
「本当に素敵な世界に、私も半人前ですが出させていただけていたということを幸せに思いました。...祐さん、三分の一以上やってるよ!...本当に皆さん、おめでとうございました」とちょっと目を潤ませて祝福を贈っていました。
さらに演出の小池修一郎さんもご登場。「本当に1000回、本当に来たんだなと、今日客席で観させていただきました。本当に1000回実現したということに驚いています。今、映像をみて色々思い出しました。高嶋さんは「袖でぜーぜー」と言ってらっしゃいましたが、袖で奥様を見つけられましたね(笑)」
高嶋さんの奥様のシルビア・グラブさんは、初演時にマダム・ヴォルフ役でした。
「それから改めて、祐一郎さん長い間ありがとうございます。三分の一とか仰っていますが、祐一郎さんがやっぱりこの作品をひっぱっていらっしゃいます。そして高嶋さんが下で支えたと言う印象です。そこにたくさんのキャストがみんなで頑張って、マラソンのようなリレーのような形でやってきたのかなと思います。たくさんの方たちがこのプロダクションに携って今日を迎えることができました。まだこれから続きますし、この暑さですけれど――バート・イシュルのシーンでいつも思うのですが、名古屋公演っていつも夏なんですよ(笑)。その中でも劇場にきていただければと思います」と述べていらっしゃいました。
終演後には囲み取材も。
高嶋さんは「本当に1000回...僕、けっこういろんなことを意識しちゃう方なので、初日とか千秋楽とか何百回目とか。なるべく意識しないでやってきたんですが、今日はちょっと意識しましたね(笑)。しかも客席に初代エリザベートがいるということで、頑張ってやりました! 無事に今日も怪我することもなくできてツイているな、良かったなと思います。ありがとうございます」。山口さんは「今日1000回ということで、僕は半人前と申しましょうか、三分の一人前なんですが。高嶋さんは舞台の上で今日も無事にと仰いましたが、今日僕は(中日劇場での)初日だったんですが、大道具のほうも僕になんか親しみを感じてくださったのか、暗転の中で抱擁していただき素敵な初日でした(笑)。いろんなハプニングもあってとっても楽しい1000回でした」と相変わらずのユーモアで。そしてスペシャルゲスト、一路さん。
一路さんは名古屋出身ということで、特別カーテンコールの中で「帰省もかねてやってきました」と照れ臭そうにおっしゃっていましたが、
「わたしはおふたりとこうして並ばせていただいていることを非常に光栄に思います。たまたま1000回がわたしの地元の名古屋ということも何か縁を感じました。高嶋さんが「怪我もなく」と仰いましたがこの1000回の中ではいろいろなことが皆さんにおありになって、私自身もいろいろなことがあり(笑)、そういうことを思い出していました。またこれからいろんな人の思いの上で2000回、3000回と重ねていく作品になったらいいんじゃないかなと客席で感じさせていただきました」と感慨深げにご挨拶。
また高嶋さんに対しては「私と高嶋君は約6年間くらいシングルキャストで演じていた。戦友のような感じです。私が先に戦線離脱してしまって申し訳ないのですが、そんな高嶋君が今日、真ん中で1000回のご挨拶をされているのをみてちょっとうるっときてしまいました」というお話も。その後
山口「(一路さんが観ていて)緊張しました」
一路「やめてください!」
高嶋「ほんとにね、いろんなことチェックされてるんじゃないかと」
一路「してないですよ~!」
山口「ノートとってね(笑)」
高嶋「しかし1000回やると、最初がむしゃらにやっていたのが」
山口「何だったのかと」
高嶋「さっきの映像みて、うわー、あの声の出し方してたら夜の公演すらもたないぞとか、思いましたね。できたことができなくなり、できなかったことができるようになり...。同じ役を1000回やるって、まずないですからね」
山口「あと1000回頑張ってください!」
高嶋「いやいや、(1000回後に出ていられるのは)子ルドルフくらいじゃないですか(笑)」
とテンポのよい会話を交わす3人が、まさに「盟友」という感じです。また初演のときの苦労を問われると、高嶋さんが
「この前にも『王様と私』をやってはいましたが、ミュージカルというのは3歳くらいから踊りや歌をずーっとやってる人がやるもんだと思っていたんですよ。ウィーンの『エリザベート』のビデオを渡されて、これ見といてと言われて、はぁすごいな、で、これなんですか?って訊いたら「君、これやるんだよ」と言われ。「いやぁ無理無理! 僕、関係ないですこういうのとは」って断ったんですよ。でも小池修一郎さんから赤ワイン飲んで話そうと言われて、いいワインご馳走になって、酔っ払っちゃったから「やる?」っ言われて「やりますやります」って言っちゃったの(笑)。
それで稽古はじまったらもう...。毎日、「暗殺者なんだから、後ろに三島由紀夫さんが浮かび上がるような感じでやらなきゃだめだ!」とか。朝、おはようございますって稽古場に入って立っている姿から「そんな姿勢じゃだめなんだよ!」から始まって。稽古場で小池さんとぶつかって...僕、むかしドキュメンタリーでチベット行って高山病になった時以来思いましたね、「なんでこの仕事受けちゃったんだろう」って...。だからすべてが大変でした」。
でも苦労を話す表情も楽しそうなんですね、高嶋さん。
山口さんは「大変さもまあ、あったと思うんですが、それより今日の舞台のような(素晴らしい)舞台をみんなで目指していて、考える暇がなかった」。
そして「小池さんの意味不明な話にもふたりで付き合いましたね(笑)」「あと、タロットカードを小池さんに引かされたこともある」「とにかく1000回大変だったんですよ!」などと話している山口さん&高嶋さんをみて、一路さんは
「私は宝塚を退団したばかりで『エリザベート』という作品で、こういう変わった人たちにいっぱい囲まれて、その人たちと馴染むのが大変でした(笑)」。
これに対し山口さん&高嶋さんは「(当時は僕たちより)もっと変な人たちがいたんですよ!」と口を揃えていました。
そして「この作品は、ご自身の役者人生の中でどういう位置にあるか」を問われたお三方、
高嶋「暗殺犯、殺人者というのが初めてだったので、これをやったことによって、色んな役が、映画やドラマからもくるようになった。ターニングポイントというか、本当にきっかけの作品ですね」
山口「私もこういうカッコをするというのが初めてだったので、いろんな体験させていただいて、僕にとってもいろんな扉が開いたのかなと思っています(笑)」
一路「私も『エリザベート』は宝塚の初演から、東宝の初演、そして再演と本当に長く関わらせていただいて、また先日帝国劇場で『ルドルフ』にも出演し、『エリザベート』という作品のみならず、ハプスブルク家との縁を勝手に感じています。私にとってもとっても大事な世界です」
とそれぞれの思いを口にしていました。
最後に「目標は何回ですか?」と訊かれた高嶋さん。
山口さんは「あと1000回」、一路さんも「目指せ、目指せ!」と煽りますが、高嶋さんは「それは神のみぞ知る、で...」と控え目に話していました。
でも、きっと『エリザベート』という作品は、このあと2000回、3000回と続いていく作品になるのでしょう...!
中日劇場公演は8月26日(日)まで上演中。
その後、9月1日(土)から28日(金)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも上演されます。5月の東京から始まった『エリザベート』4大都市公演、梅田がラストです! チケットは発売中。