2月某日、T1project produce『シーチキンサンライズ』の稽古場に伺ってきました。
T1projectとは、脚本・演出家である友澤晃一を中心としたカンパニー。
友澤さんは富良野塾一期生で、舞台だけでなく『浅見光彦~最終章~』(TBS)、『長い長い殺人』(WOWOW)など、数々のドラマの脚本なども手がけている、注目の演劇人です。
『シーチキンサンライズ』は2007年初演。2009年の再演を経て今度が三演目となる作品。
今回は"大改訂版"と銘打ち、パワーアップしての上演です。
物語は、古びたプレハブの倉庫、漫才コンビ"シーチキン"の再結成興行の楽屋が舞台。
一時期は派手に売れたけれど、ひとりはピンとして売れっ子に、もうひとりは生活費にも事欠いている状況。
人生に大きな差がついてしまった元コンビは...
そして彼らの復活を祝い集った旧知の芸人たちは...。
主演はStudio Lifeの岩崎大。
ほかに歌手の宮脇詩音、ミュージカルを中心に活躍をしているtekkanらバラエティ豊かなキャスト陣で贈ります。
この日は、物語中盤あたりのお稽古中。
売れっ子になった元シーチキンの片割れ・リョウが集まった芸人たちと衝突しまくり、軋轢を生みまくっているシーンです。
"大改訂版"というだけあり登場する芸人さんたちも増えた今回の上演。必然的に出演者も増え、稽古場は人がいっぱい!
友澤さんからは「今日は(取材が入っているから)優しいバージョンの演出です」と前置き(笑)。
主人公・リョウを演じるのが岩崎さん。
傲慢な態度で悪態をつきまくり、売れない芸人たちの存在を否定し、恋人にも絶縁を言い渡したあげく「金か!?」と言い放つ。
Studio Lifeでの舞台姿からは想像のつかない苛烈な岩崎さんの顔!
そんなリョウの元相方・榊を演じるのは平井孝幸さん。
今はまったく売れていないが人望はあるようで、リョウの態度に怒る芸人仲間たちも、榊のために...とこの場に留まっているという状況。
あわや一触即発の危うい空気の中、枯れた雰囲気で佇む存在感に味があります。
ひとを不快にさせる言葉を吐きまくるリョウですが、しかし榊にだけは「おまえの芸人魂はどこへいったんだ」とぶつけるいらだちに、信頼や愛情がうっすらと見え。
なぜ彼がこんな態度を取っているのか、がこの物語のキーです。
リョウの存在でピリピリした雰囲気になっている楽屋ですが、登場人物は個性的な芸人多数。
面白い人たちばかりです。
特に女性陣がいい味出してました。
手違いで呼ばれた多喜子役の渡辺かな子さん。
いわゆるKYな感じで、いい具合に笑いを注入してくれます。
素でも、友澤さんに「お前はどこ(立ち位置)に行きたいんだ!」と言われた渡辺さん、「そうなんですよねえ!ジャマですよねえ...」と困った顔ですっとぼけた答えを返し、稽古場中大爆笑。
岩崎さんも思わずこの笑顔。
それから夫婦芸人"ダブルマキ"のマキコ役の上村公臣代さん。
時にリョウを諭すような関西弁が、ベテラン芸人の風格。カッコイイ!
その相方・マキオ役は『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』などミュージカルでも活躍しているtekkanさん。
マキオはリョウに対してきちんとキレる貴重な人です。
こちらはリョウの恋人・愛役の宮脇詩音さん。
...なのですが、リョウは田島冬子さん扮するプロデューサー、西方と結婚宣言。
いやー、ほんとにヤなやつです、リョウ。
さてとにかく狭い空間に登場人物がひしめきあっている稽古場。
そのシーンの中心で会話をしている人たち以外にも、というより、周囲にこそ、友澤さんの細かい演出は飛びます。
「エキストラ芝居は嫌いだ」「ちゃんと生きてくれ!」という言葉が印象的でした。
こちら↓はダメ出しを真剣な顔で聞いている皆さん。
また出入りも多いので、導線の確認が細かい。
「ちょっと上手」「ちょっと下手」の"ちょっと"が、10センチレベルなんですね。
「小劇場なんて身体いっこぶんで随分かわっちゃうんだから」と友澤さん。
芸人たちのお話なので、キャラクターは濃いし、彼らのやりとりを観ているだけでも面白い。
そんな笑いの中に、シーチキン復活舞台を前にした芸人たちの人間臭いドラマがしっかり描かれ、さらに愛につきまとうストーカーやら不審な事件が絡んで、物語は波打っていきます。
そしてラストには意外な感動が...!?
公演は3月13日(火)から18日(日)まで、中野ザ・ポケットにて。チケットは発売中です。
「げきぴあ」には友澤さんからのメッセージも届いていますので、併せてご覧いただければと思います!
おまけ★
この日の稽古場ではtekkanさんのお誕生日祝いが行われたそうです。
ということでサービスショットをいただきましたー!