【演劇ニュース】
異国人との交際さえ考えられない明治時代、東京の町娘からヨーロッパの伯爵夫人へと変貌を遂げた女性で、ヨーロッパでは今もなお語り継がれているクーデンホーフ光子の半生を描いたミュージカル『MITSUKO』。『ジキル&ハイド』や『THE SCARLET PIMPERNEL』などでも知られるフランク・ワイルドホーンによる作品で、2005年にウィーンでコンサート版が誕生、2010年には日本でも上演され好評を得た。そして5月14日(土)より梅田芸術劇場 メインホールにて世界初演となるミュージカル版の開幕を前に、プレイベントが4月21日(木)に同劇場で開催された。当日は約500人のオーディエンスが来場し、光子を演じる安蘭けい、夫ハインリッヒを演じるマテ・カマラスの歌に酔いしれ、トークを堪能していた。
今年2月にウィーンを訪れた安蘭の様子や稽古場の映像が流れた後、マテが劇中曲『西と東』、安蘭が『後ろを振り向かずに』を、最後にふたりが『愛は国境を越えて』を披露。マテは日本語曲だが、とても滑らかに、胸に響く歌声で聴かせてくれ、安蘭も情感たっぷりに歌い上げた。その後のトークでは、脚本・演出・オリジナル作詞を手掛ける小池修一郎も登場。「もともとは明治時代に初めて国際結婚をした人くらいの印象しかなかったのですが、EUの父と言われる人物の母ということや、葛藤の多い人生を過ごしたことを知り、ドラマになると思いました。『後ろを振り向かずに』という曲は、図らずも今の日本の状況にマッチしていて、世の荒波を乗り越えて生きていこうとする人たちに勇気を与えてくれる歌だと思います」と、作品について語り、「マテさんは日本語がかなりできるようになっています。彼の温もりのある演技がとても魅力的で、安蘭けいさんも女優としての展開は大変見事なものがあります。ふたりのデュエットは期待以上に盛り上がりを見せてくれています」とキャストの魅力を語った。
また、安蘭は「光子さんのとてつもない孤独と、日本女性としての強さを肌で感じて帰ってきました」とウィーンを訪れた感想を述べ、「明治時代に自分の人生を切り開き、強く生きた女性がいることを多くの方に知って頂きたいし、それを伝えることが私に課せられた責任だと思う。今の日本でどんなメッセージが残せるのか、稽古しながら探っていきたい」と意気込みを語った。3月末に来日したマテは「私の夢は『MITSUKO』を日本で成功させることです。今回の震災を知ったとき、心の中から血が出るような思いでした。それでも『MITSUKO』が上演されると聞き、日本のために何かしなくてはいけないと思いました。素晴らしい演出家の小池先生、安蘭さんと一緒にお仕事させて頂けることをとても幸せに思っております」と、日本語も交えながらその思いを語った。
公演は5月14日(土)より大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて開幕した後、5月27日(金)より愛知・中日劇場、6月11日(土)より東京・青山劇場にて上演。チケットは発売中。
取材・文:黒石悦子