【演劇ニュース】
空飛ぶ絨毯にランプの精。夢に描いたおとぎ話を、新国立劇場のために舞踊芸術監督のデヴィッド・ビントレーが創りあげた『アラジン』が、ゴールデンウィークに再演される。主演のアラジンとプリンセスには、初演の幕を開けた山本隆之、本島美和。初演で初主役を射止めた八幡顕光、小野絢子。そして新キャストとして抜擢された、福岡雄大、さいとう美帆。3組の合同リハーサルを見学したが、全てのペアの舞台に足を運ばずにはいられないほど、異なる個性を放っていた。山本、本島ペアはベテランの持つ落ち着きと、誇り高い自信。八幡、小野ペアは、元気で笑顔の絶えない、最もキャラクターに近い組み合わせ。福岡、さいとうペアは穏やかで気品がある中、やんちゃな部分も併せ持っている。3組のキャストたちに、それぞれの役についてコメントを頂いた。
「再演という事で、最初とは違ったアラジンを、観客に期待されています。3年間のうちにいろいろな経験を積み重ねたのでその力を出したいです」(山本隆之)。
「プリンセスは純粋ですが、好奇心旺盛な面も持っています。3組の主役キャストの中で一番大人同士の組み合わせですが、若々しさも見せたいです」(本島美和)。
「自分の素に近い役なので、物語に入っていきやすいですが、計算もしています。前回は芝居の間など、思っていた通りに見えなかった部分の反省点もあり、そこを改善してバランスよく演じたい」(八幡顕光)。
「ふたりとも初めての主役だったので、思い入れがある作品。緊張しましたし、テクニック的にも苦労しました。再演ですが、初演のフレッシュさは失わないよう気をつけ、いつかは宝石や、最終的にはお母さんの役も挑戦したいです」(小野絢子)。
「さいとう美帆さんとは、初めて本格的に共演します。とても踊りやすく、作品を通してアラジンたちのように、ふたりとも日々成長しています。やんちゃでピュア、そして素朴な心を持った少年がアラジン。プリンセスに出会って恋に落ち、力を貰うのです」(福岡雄大)。
「周りに大切にされているピュアで世間知らずのお姫様が、自分とは逆の経験をしてきた奔放な少年アラジンに出会って、知らないうちに恋をし、彼を愛して、外の世界を知るために少女はファンタジーの世界を冒険します」(さいとう美帆)。
口々に出てくる言葉が、やんちゃでピュア。役へのアプローチがそれぞれ違っても、行き着くキャラクターの姿は一貫していて、それこそがビントレーの目指した『アラジン』という舞台の楽しさなのだろう。ビントレーはいつも頭の中が宇宙のようで、ドラえもんのポケットを持っているみたいだと、八幡、小野ペアは話す。私たちの常識を遥かに超えた東日本大震災。心の傷跡が消えない私たちに、夢と冒険の楽しい世界を見せたいとダンサーたちは日夜、舞台創りに励んでいる。
公演は5月2日(月)から8日(日)まで、東京・新国立劇場 オペラパレスにて。チケットは現在発売中。
取材・文:高橋恭子