毒々しさと生々しさのある松尾スズキ版『欲望という名の電車』

【演劇ニュース】

松尾スズキ演出版『欲望という名の電車』の公開通し稽古が、4月12日(火)の開幕を前に11日、東京・PARCO劇場にて行われた。本作はテネシー・ウィリアムズの傑作戯曲にして、これまでも数多くの名優たちによって舞台化されてきた人気作。誰もが知るこの名作を、松尾という奇才が演出するということで、演劇ファンならずとも高い注目を集める一作である。

"欲望"という名の電車に乗り、妹ステラ(鈴木砂羽)の元へやって来た姉ブランチ(秋山菜津子)。上流階級出身のブランチにとってステラの貧しい生活は衝撃であり、中でもステラの夫でポーランド系の粗野な男スタンリー(池内博之)とは、事あるごとに衝突を繰り返していた。そんな彼女の心に安らぎをもたらしたのが、スタンリーの親友ミッチ(オクイシュージ)。しかしスタンリーがブランチの過去を暴き出して......。

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『欲望~』という作品は、やはりブランチ役の俳優で成功か否かが決定づけられる。その点この秋山版ブランチは、間違いなく大きな成功を収めたと言えるだろう。松尾自身、「彼女なくしてはあり得ない。頼り切っています」と語るほど。というのも精神を病んでいるブランチは、ともすればただの浮いた人にも見えかねない。しかし秋山はブランチの狂気を強く印象づけながらも、そこに女性としての愛らしさ、切なさを浮き彫りにしてみせる。そんな彼女の熱演に松尾は、「3時間の芝居をほとんどひとりで引っ張る、女優としての底力を感じた」と評している。

また、スタンリー役の池内、ステラ役の鈴木は、初の松尾演出でかつてない役どころに挑戦。スタンリーは外へ外へと発散するエネルギーの強い役柄だが、その方向性は暴力的な面と弱々しい面へと真逆に向かう。それを池内は、荒々しくも情感あふれる演技で、見事スタンリー役をものにしてみせた。鈴木はかわいらしさとはかなさのあるステラ役を好演。女優として新たな一面を開花させている。

松尾はこう言う。「僕の芝居には笑い以外の要素もたくさんある。だから今回笑いがないことで、それ以外の深度が深くなり、不思議な世界観が作れました」と。だがそれと同時に、「そこからまた一周して、笑える部分も結構ある」と語るように、過去の『欲望~』では考えられなかったような笑えるシーンも。それはやはり松尾がどうしても惹かれてしまうと言う"人間の生々しさ"から派生するものであり、海外戯曲という絵空事ではない、むき出しの人間ドラマがここにはあるのである。

公演は4月12日(火)から5月1日(日)まで、東京・PARCO劇場にて。その後 、5月7日(土)・8日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、5月10日(火)に愛知・名鉄ホールでも上演。

取材・文:野上瑠美子


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