【演劇ニュース】
琉球王国の興亡に、聡明で美しい少女・真鶴(まづる)の数奇な運命を絡めて壮大なスケールで描いた池上永一の長編小説『テンペスト』。このベストセラーを羽原大介(映画『パッチギ!』『フラガール』)の脚本と、堤幸彦(ドラマ『SPEC』、映画『BECK』)の演出でエンタメ色豊かに舞台化したのが本作だ。主演の仲間由紀恵と堤はヒット作『TRICK』シリーズでもタッグを組んだ仲。期待が高まる2月5日、東京・赤坂ACTシアターで行われた公開リハーサルを観た。
約150年前の琉球王国。男しか上級官僚になれないため、真鶴(仲間由紀恵)は男性と偽り科試(官僚になる為の試験)を受け合格する。孫寧温(そんねいおん)と名前を変え、王宮の踊り子で兄の孫嗣勇(そんしゆう/福士誠治)が見守る中、同僚の喜舎場朝薫(きしゃばちょうくん/安田顕)と共に財政再建に着手する真鶴。王室付きの巫女・聞得大君(きこえおおきみ/生瀬勝久)は予算を削られたことで激怒し、真鶴を訝しんで素性を調べ始める。薩摩藩士の浅倉雅博(山本耕史)と出会い、他国の人間ながら琉球を愛する浅倉に惹かれていく真鶴だったが。そんな彼女に、琉球乗っ取りを狙う清国の徐丁垓(じょていがい/西岡徳馬)の影が忍び寄り......。
琉球から沖縄へと移りゆく波乱万丈な歴史をベースに、聞得大君の霊力やその部下たちが展開する立ち回り、豪華な宮殿のセットや絢爛たる衣裳など、ファンタジックな見どころも満載の本作。仲間は男装での立ち居振る舞いやセリフ回しが凛として美しく、得意の琉球舞踊でも魅せる。相手役の山本も、少ない登場シーンで武士としての心情を細やかに伝えてさすが。一方で、手練の生瀬や安田らが随所で時事ネタの笑いをとるのも娯楽作ならでは。中性的な役どころの福士、5役を生き生きと演じ分ける西岡など、幅広い層が観て楽しめる仕上がりとなっている。
公開稽古前に行われた会見では、「いろんなハイテク技術を使って、ありとあらゆる要素を詰め込みました。ザッツ・エンタテインメントです」とアピールした堤。仲間が「最初から最後まで飽きることなくずっと観ていられる作品。強敵も多いので負けないように」と語ると、山本も「想像もつかない世界が広がっていると思うので、そこに自分がどうハマるか楽しみ」と意気込みを。「わらわは劇場一杯に広がります(笑)。この意味は劇場で観ないと分かりません!」という生瀬の笑いと共に会見は終了。豪華キャストで贈るエンタテインメント大作を、肩の力を抜いて楽しみたい。
公演は2月28日(月)まで、東京・赤坂ACTシアターにて上演。3月5日(土)から20(日)まで大阪・新歌舞伎座にて公演。
取材・文:佐藤さくら