菅原永二と申します。
〈池田からの質問〉
旅先の想い出なんぞを聞かせていただけませんか?
さて、旅先で出会った素敵な異性とのアバンチュール体験談ということですが、
私の三十何年来の頗る不振の経歴に徴してみても、やはり女性は、男性よりも荒々しく、欲深い生き物であると感じずにはいられないのです。
私が夏の小淵沢を散策していたときのことです。
色黒の美女が、私に向かって、何かを訴えるかのように叫んでいました。
それは、まるで、獣の咆哮が如く荒々しく、ただ、そのものに対して好意を持った「貴方のことが好きです」と聞こえなくもない叫びでした。
恋とは突然始まるものだ。
私は思いきり両手を広げました。
次の瞬間、彼女は、待ってましたとばかり私の首筋に飛びつき、「ウー...」と唸りながら、キスをしました。所謂、急所です。
私は身体中で彼女の愛を受け止めました。
意識が遠のいていく中で、私は、彼女の愛が少しばかり強すぎるのを感じました。
名前はラブ。
甲斐犬の雌でした。
彼女は少し警戒心の強いタイプの娘だったようです。
そのあと、甲府の病院に行って七針縫いました。
女性とは難しい生き物です。