タニノクロウです。
前回はこの『アンダーグラウンド』を思いついたきっかけをお話しました。
今回は、前回の作品をどう作っていったか、ということをお話したいと思います。
と言っておきながら、ごめんなさい。正直なところ、よく覚えていないのです。
たとえば前回の上演当時に受けたインタビューを読み直してみても、何といいますか、自分から身体が半分くらいはみ出したような人間がしゃべっているように思えてしまいます。このときこの人はこんなことを考えていたんだな、というふうに、人ごとのように思えてしまう。
これはもしかしたら、演劇特有のことなのかもしれません。というのも、演劇において過去の作品というのは過去にしかないからです。小説や映画は、いくらでも再生可能ですが、演劇はそうはいきません。なので、いちおうの「再演」にはなっていますが、今回の作品は、自分にとってみればほとんど「新作」といってもいいぐらいなわけです。
というわけで、前回の作品をどう作っていったか、というのは、ちょっぴり胡散臭い言い方をすれば「体が覚えている」かもしれませんが、頭ではけっこう忘れてしまっています。外科手術という行為が、体の奥底のどこかにあるのかもしれない魂という名の見果てぬ大陸を探す、まるで大航海のように感じられる、なんてそんなことを思っていたのかもしれません。
それにしても、他の演出家の方々は、再演のとき、前作のことをどれぐらい覚えているものなのでしょうか。