ダニエル・キイスの同名小説をもとに 2006 年に初演され、これまで4度上演を重ねるほどの人気を博してき たミュージカル『アルジャーノンに花束を』。浦井健治が 9 年ぶりに主演を務めることでも注目を集める本作 が、4 月 27 日(木)に日本青年館ホールで開幕した。
32 歳でありながら幼児並みの知能しかないチャーリイ・ゴードン。「かしこくなりたい」と願う彼は、大学の 先生が頭を良くしてくれるという夢のような話に飛びつく。やがて手術によってチャーリイの知能は飛躍的に 向上していくが、それによって彼は、かつては気づかなかった人の心や世の中の構造を知ることになる――。
舞台中央には、大きなボックス状の舞台美術。チャーリイと同じ手術を受けた白ネズミ・アルジャーノンの登場場所でもあり、限られた世界で生きざるを得ないチャーリイやアルジャーノンの葛藤を象徴的に表す。今回、演出家が荻田浩一から、振付家でもある上島雪夫にバトンタッチしたことで、舞台はよりダンサブルに。キャストの熱演も相まって、人々の愛と葛藤が織りなす感動作がダイナミックに立ち上がっていた。
浦井にとっては 20 代で初めて主演を務め、第 31 回菊田一夫演劇賞(2006 年初演時)、第 22 回読売演劇大 賞最優秀男優賞(2014 年再演時)に輝くなど、演技派としての地位を不動のものとした記念碑的作品。「初 演からみんなで紡いできた気持ちを稽古場からたくさん感じて、感無量」と語りながらも、今回は新たな演出 家・キャストとの創作ということで「初めましての役として向き合う感覚。今回バージョンのものを皆で作る 素晴らしさを感じていた」という。
チャーリイの手術を担うストラウス博士役の東山義久、チャーリイを優しく導く教師アリス・キニアン役の北翔海莉は、共に本作初参加。「これまで演じてこられた人たちと全くタイプが違うが、崩さず、自分なりのアプローチができたら」「チャーリイの色々なところを正確にみるぶれない、裏切らない、無償の愛をテーマに。」と、それぞれ役への意気込みを語った。
浦井も彼らに「二人とも目で包んでくれる」と全幅の信頼を寄せ、東山がムードメーカーとして稽古場を盛り 上げてくれたこと、北翔が時に目に涙を浮かべた芝居で心を動かしてくれたことなどを明かした。また、過去 の上演でアルジャーノン役として共演した故・森新吾の名前も挙げ、森と東山が同じ DIAMOND☆DOGS のメ ンバーということから「(東山が)チャーリイやアルジャーノンを父性のように包む役で参加してくださるこ とが、自分にとってはすごく大きい」と思いを表した。
「お客様の心にいろいろな色の花束としてメッセージが届くような作品」と本作の魅力を、また「観終わった 後に、元気になるような、希望溢れる作品になれるように」と意気込みを語った浦井。初演から 17 年、混迷の 時代である今こそ必要とされる、不朽の名作だ。
文:羽成奈穂子
撮影:岩田えり
(C)ミュージカル『アルジャーノンに花束を』実行委員会
公演は5月7日(日)まで東京・日本青年館ホール、5月13日(土)、14日(日)大阪・:COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホールにて。ぴあでは東京公演の当日引換券、大阪公演の座席指定券を発売中。