〈客席にこそドラマがある〉――舞台「観劇者」が、2021年6月30日(水)から7月4日(日)まで、池袋・BIG TREE THEATERで上演される。なぜこの場所で公演を観ることになったのか、その過去や経緯にふれながら、観劇する側の客9名の開場から終演後までを描き、普段はステージの上で演じる役者たちがお客さまに扮するという作品だ。今作の脚本・演出を手掛けるのは、自身も俳優として活動する開沼豊。そして、堀田竜成、外岡えりか、林明寛、大滝樹、岩佐祐樹、わたなべかすみ、吉田翔吾、斉藤レイ、長戸勝彦の個性豊かなキャスト陣が、さまざまな背景を持った"観劇者"に挑む。
この度ぴあではM列9番(高木蓮)役の堀田竜成、M列13番(野間洋平)役の岩佐祐樹、M列8番(佐々木真)役の吉田翔吾の3名にインタビューを実施。稽古がスタートして間もないなかでも息ぴったりの彼らから、脚本を読んでの感想から個々の印象まで、さまざまな話を聞いた。
――脚本を読んだ印象を聞かせていただけますか?
堀田「ストーリーが繋がっていないようで繋がっていて、個人プレーではありつつ、チームプレーが必要な内容なので、個々の表現力が大切になってくる気がします。かなり難しいです(笑)」
岩佐「(開沼)豊さんの作品に出させていただくのは、今回が2回目なんですけど、視点が面白いなって。個人的にセリフ回しや言葉遊びも好きです。僕らは普段(舞台に)出ていますが、今回観劇する側に立って、応援して下さる方の気持ちやどういう思いで劇場に来ているかとか、自分自身も理解が深まるような気がしていて。この舞台を通じて距離が近くなる、そんな作品になるんじゃないかなと」
吉田「斬新なことをやろうとしてるなって。コロナ禍のいま、いいところをついている作品ですよね。やりやすいアイデアショーだなと思いました。今回お客さんが主役の舞台じゃないですか。前に、『俺、将来何してるんだろう』とか思ったときに、新宿駅の人の多さを見て、自分と同じようにいろんなことを考えている人が、この数だけいるって実感して、そこに異常な宇宙を感じた、みたいなことがあって。『観劇者』の台本を読んで、そのときの気持ちを思い出しました」
岩佐「(笑)」
――(笑)。(取材時は)顔合わせと台本読みが終わられた段階とのことですが、どんな雰囲気でしたか?
岩佐「劇場に来るまでの経緯をほかの人が演じているシーンは、出演している僕らも普通にお客さんみたいな...」
――今回、なぜ観劇するに至ったかに繋がる過去のパートでは、録音された声と対話を重ねて演技をしていくという手法がとられているんですよね。
堀田「自分がいないときはひたすら(みなさんの演技を)聞いているので、お客さんと一緒ですよね。普通に役者が演じてる姿を見て楽しみました」
岩佐「掛け合いが素直に楽しかったです。吉田くんも面白くて」
堀田「最高ですよ。吉田さん最高ですよ」
吉田「いやいやいや...。ハードル上がってるわ(笑)」
――吉田さんは、舞台を観にきているものの、なぜか舞台に集中できないとある事情と戦っている、客席で唯一「早く終わってくれ!」と願っている佐々木真を演じられています。
吉田「ほかの皆さんは、過去が描かれるのに、僕だけない(笑)。みなさん特別な思いがあるじゃないですか。僕はないんですよ(笑)。ただ、一番お客さんからの共感を得られるんじゃないかって」
堀田「確かに(笑)。わかりやすいですよね」
吉田「僕は、岩佐さんの役がグッときましたけどね」
――岩佐さんが演じる野間洋平は、昼夜アルバイトをしながら、月に数回の観劇が生き甲斐という役どころです。
吉田「いつも苦しい思いをして働いているけど、好きなことのためならこんなにも頑張れるんだなって...」
岩佐「(夢中になっていることがあるので)嫌なことは気にならないんでしょうね。目的のために頑張ることが表現されている役なので、グッとくるというか」
――堀田さんは、過去に芸能養成所に通われていた元俳優で、現在はアルバイトをしているという高木蓮役ですが、自分自身と重なる部分はありますか?
堀田「高木蓮くんと僕は、負けず嫌いでプライドが高いところが似てますね。みんな頑張っているときに気を抜いている人を見ると、『ん!?』って思うこともあるし、そういう面では似てるのかなって。ただ、蓮くんは根っからの真面目で一人で頑張るタイプだけど、僕はただプライドが高くて負けず嫌いなのでそこは違うかも。僕、誰かと競ってないと頑張れないんですよ」
岩佐「血液型、何型?」
堀田「B型です」
岩佐「あれ? B型? 僕もB型なんですけど、Bって...」
堀田「え!? Bなんですか!?」
岩佐「Bって、いまの堀田くんの話と反対で、周りがちゃんとやっていないと自分が頑張ろうって考えるタイプがBらしくて」
堀田「あー、僕は逆かもしれないですね」
――ちなみに吉田さんは...。
吉田「僕はA型です。温和です。調和を大切にしています(笑)」
岩佐「そんな感じする(笑)。まあ、血液型は一参考ですけどね(笑)」
――岩佐さんは役とご自身が重なる部分はありますか?
岩佐「過去にバイトをしながら演劇を続けていたので、その経験からくる共感ポイントは高いかなと。ただ、彼は観劇以外は興味のない人だけど、僕はバイトのなかでも何かしらの楽しみを見つけたいタイプなので、その辺は少し違います」
――吉田さんは...?
堀田「吉田さん難しくないですか!?(笑)」
吉田「重なる点が...ひとかけらもない(笑)。佐々木が観劇に集中できなくなる理由があって、それと同じ経験もしてるんですけど、そこからの経過が真逆(笑)。でもこの劇中での出来事が佐々木にとっても初めてだったと思うんです。僕も同じようなことがあったので、気をつけるようにしていますし、佐々木もそうだと思うので、その点は一緒なんじゃないかなと」
――なるほど(笑)。それぞれ異なる背景を持っている人たちが一つの場所に偶然居合わせる感じって、映画みたいですよね。
堀田「確かに」
吉田「『ラブ・アクチュアリー』ですね」
岩佐「個人的には『有頂天ホテル』的な」
吉田「あー! そっちですね!俺ももう1個言いたい! そうだ、『フィッシュストーリー』ですね! (笑)」
――ありがとうございます(笑)。今回、岩佐さんは開沼さんが作・演出を手掛けられる舞台にご出演されるのが2度目だと思いますが、開沼さんはどういった演出をされる方ですか?
吉田「聞きたい!」
岩佐「台本的にはきっちりとしてそうなのに、演出の自由度は高かった記憶がありまして。前回の『LDK ミディアム2』は主演の田中稔彦さんが大幅にアレンジしても採用したりして。コメディって、演出で言葉のテンポ感を気にしたり、セリフ通りに言って、という方もいらっしゃるとは思うんですけど、豊さんは温和で、できるなら稽古を早く終わらせようとするタイプ、という印象です」
――ビシビシしごく、みたいなことではなく...。
岩佐「あー、全然! 逆にもっとないですか? 大丈夫ですか?っていうタイプだった記憶が...。この3年で変化していなければ(笑)」
――いまのお話を受けて、堀田さん、吉田さんはいかがですか?
吉田「今回の台本だったらある程度自由を利かせてくれたほうがいいのかな~、どうなんだろう。役によって違うとは思うんですけど。僕みたいに一人でやらなきゃいけない役は、直感的に『いまこれ言ったほうが面白い!』と思うものは言ってったほうが、パワーもエネルギーも出るからいいのかなって」
堀田「僕は自由度が高い舞台を経験したことがあまりなくて。自分の気づきとか、やりたいことはどんどん出して、ブラッシュアップできたらいいですよね。そうなりたいって思う部分もあるし、できるようになりたいですね」
――先ほどもちらっとお話しましたが、今回の『観劇者』では、予め録音された音声と対話する箇所がいくつも出てきます。そこについてはどう思われましたか?
吉田「すげえ嫌だなって思いました(笑)」
堀田「シンプル(笑)」
吉田「ただ、僕に関してはそんなにないです(笑)」
岩佐「お芝居って生ものじゃないですか。録音された声が相手だと、日によって違うことがないので、不安もあります。声の相手を自分のなかでイメージすることも必要だし」
堀田「登場人物の背景を説明してくれるのが録音された音声で、出演する僕たちはその声の問いかけを受けて感情を表現することが多かったりするので、そういった点も難しいなって思います」
岩佐「表現力が問われるよね。一人で画を持たせなきゃいけないっていう」
堀田「台本見たときびっくりしましたもん。いまどきだし時代を先駆けた新しいものというか。新たにできたルールにのっとっているけれども、作品として成立している。新鮮な見せ方だなってシンプルに思いましたね」
――ここまでは『観劇者』の内容にふれながらお話を聞きましたが、ここからはそれぞれの印象についてお伺いします。
堀田「吉田さんは、(この段階では)プライベートであまり話せていないのですが、先日の本読みから全力で演じていて、感動というか、凄いなと」
岩佐「なんで(吉田くんは)眉をしかめてるの?(笑)」
吉田「どう返そうかなって思って(笑)」
堀田「一緒の舞台に出ながらも、いち観劇者として楽しみです。台本を手放してブラッシュアップしたあとはどうなるんだろうって...そんな顔やめてください!!(笑)」
吉田「ハードルが上がっておる(笑)」
堀田「岩佐くんは2~3年の付き合いですが、今回みたいな役で見るのは初めてなので、新鮮な気持ちというか。あ、岩佐大先輩、すごいなって...(笑)」
岩佐「吉田くんと同じような表情になるから(笑)」
堀田「今回は勉強をさせていただける場というか、いろんなところを見習って、お勉強できたらって思ってます」
岩佐「僕は、斉藤レイさん以外は知り合いで。長い付き合いの(堀田)竜成くんは、2.5次元舞台が持つエンターテインメントな部分での自由さと、ストレートなお芝居の自由さは違うと感じていて、ストレートの部分で最初は恐縮してるんだと思うんですけど、だんだんのびのびとしてくるんじゃないかな(笑)。性格的に自由にやりたい人だと思うので。ストレートの舞台でのびのびとやっている竜成くんを見るのが楽しみです。爆発力のある方なので」
堀田「そうなれるように頑張りたいですね」
岩佐「吉田くんは、一回イベントでご一緒したことがあって、全然違うルックスだったんですよ。眼鏡にコサック帽みたいな。結構変わった人なのかなって考えてたら、調和の取れた...しっかり地面に根をはるタイプというか。面白いけどしっかりしてる。素敵な...素敵なって一言で言っちゃうと雑だな...」
吉田「いやいや、俺も使いますから(笑)」
岩佐「いい人、すごく。薄い言い方で申し訳ないけど、いい人。こういう人が座組にいると助かるんだろうなって。頼りになるし、お芝居に対しても真面目なのが伝わってくるし、かつユーモアがあって。この作品の面白いところをたくさん引っ張ってくれるんじゃないかなって。今回ご一緒できて本当に嬉しいです」
吉田「もういいんじゃない?(笑)まず岩佐さんは、顔合わせの時や、いまも思ったんですけど、言葉がとても達者というか、上手ですよね。イベントのときもきれいにまとめてくれるんですよね。うまくゴールを決めてくれる」
堀田「言葉の魔術師ですからね...。本当にうまいですよ!僕は心からリスペクトしてます。言葉の引き出しがたくさんある。天才」
吉田「あと、落ち着きがすごいですよね。同じ年で、僕も同世代の人には落ち着いてるねって言われるんですけど、彼は落ち着いてますよね。あと(岩佐くんと)同じこと言っちゃうけどユーモアがあって、調和を重んじながら、いろんなところにレーダーをはって、助けてくれる」
岩佐「いいことたくさん言ってくれる...。ありがとうございます」
吉田「堀田さんは『観劇者』の顔合わせが初見で、僕が入った時にとてもいい笑顔で『おはようございます!よろしくお願いします!』って挨拶してくれて。その時に、素敵な座組にしてくれそうって思いました。あと、いま聞いている感じだと、すごい元気。いろんなことを考えた上での元気さを持っていて、稽古場にいてくれたら環境を華やかにしてくれる、スター的存在なんだろうなって」
堀田「そうなれるように頑張ります(笑)」
――それでは、『観劇者』が気になっているみなさんにメッセージをお願いします。
堀田「こういった状況の中で、見に来てくれる方が、ちょっとでも笑顔になれるように。いろいろ考えることもあると思うんですけど、この作品を通して考えなおすことが出来たり、次につながる作品になるように、キャスト、スタッフ一同頑張りますので、ぜひ嫌なこととか全部忘れてその場だけでも楽しめる舞台になればいいなと思うので、楽しみにしてきてください」
岩佐「今回の舞台『観劇者』は、共感性の高いものになるのかなと思いますし、豊さんの脚本も面白いですし、本当に個性豊かな方々が集まっているので、いい意味で何も考えずに足を運んで、2時間楽しく過ごしていただける作品になればいいなと。『観劇者』を観劇者として見て、自分が本当に楽しいな、幸せだなって思うことを再確認できる、僕たちも自身もそう思える時間にしたいです。僕たちも頑張ります」
吉田「僕らが演じるのが、足を運んでくださるお客さまなので、『観劇者』を通じて感じることも多いんじゃないかなと。みなさまが主役の舞台ですよ、と言ったらあれですけど、いろんなことがバシバシ伝わるんじゃないかと思うので、見に来ていただければ嬉しいです」
<公演情報>
「観劇者」
公演期間:6月30日(水)~7月4日(日)
会場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
チケット料金:全席指定-7000円
お問合せ先: サンライズプロモーション東京:0570-00-3337