鈴木勝秀の名作朗読劇、オンラインにて新作上演!リーディングドラマ『シスター』公演レポート

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2013年に鈴木勝秀が書き下ろし、篠井英介&千葉雅子のタッグでわずか1回のみ上演されたリーディング公演『シスターズ』。

2017年3月にはタイトルも『シスター』と改め4年ぶりに上演、以降、実に38組に及ぶ俳優たちが、姉と弟、もしくは姉と妹の、少し不思議で、少し怖くて、とてもやさしい物語に挑んできました。

2020年4~5月には、新宿角座にて、7回目の公演として新たに17カップルの『シスター』が生まれるはずでした。が、このコロナ禍において、やむを得ず中止に。しかし、その新宿角座での公演に出演予定だった俳優たちを中心に、オンラインでのリメイク上演が決定。

すべて新作・撮りおろし。
しかも今回から、大嶋吾郎が『シスター』のために書き下ろした音楽が登場します。
演劇界にもファンが多く、朗読劇の新たなる定番作品となりつつあるスズカツの『シスター』。
この時代だからこそのオンライン配信演劇に、ご期待ください。

今回、佐津川愛美&浅利陽介、桑原裕子&村田充、佐藤真弓&陳内将が登場する第一回配信(配信期間:6/25(木)18:00~7/1(水)23:59)の公演レポートをお届けします。

■ 公演レポート ■

暗闇で息をひそめて、画面を見る。定番リーディング公演『シスター』の新たな魅力

鈴木勝秀の『シスター』と言えば、2013 年の初演(この時のタイトルは『シスターズ』)からはじまり、これまでにも個性豊かな俳優たちが演じてきた名作リーディング公演。姉と弟の物語が基本であるけれど、演じる俳優によって「姉と妹」になったりと、その時々でガラリと表情を変える、一風変わった作品でもある。そして、ふたり芝居の朗読劇の黄金パターン――"恋愛モノ"ではなく、ミステリアスな姉と弟の物語であるところも奇妙な中毒性があり、多くの人を惹きつけてやまない要因だろう。

実際、観客のみならず演者サイドにもファンが多いらしく、時を経て何度も出演する俳優も多い。これまで 6 度の上演を重ね、登場したカップルは全 38 組。今年 4~5 月には、新宿角座にて、7 回目の公演が行われるはずだったが、新型コロナウィルス感染症対策に伴い残念ながら中止に。だがこのたび、その角座出演キャストを中心としたメンバーで新たに撮った新作のオンライン配信が決定した。その第一回配信分を一足先に観劇したレポートを記す。

幼くして死んだ姉と、姉の死後生まれ、成長した弟の会話劇である。姉は幽霊なのか? それとも弟の妄想? ふたりの関係性に想像を巡らせながらも、テンポの良い姉弟の会話に引き込まれていく。まず最初のカップルは、佐津川愛美と浅利陽介。浅利の演じる"弟"は、頭でっかちで、捻くれていて、口が達者で、くるくる表情が変わる。椅子に座りテキストを手に、動きがほとんどない中で、これだけの豊かなキャラクター造形ができるものかと感嘆する。その浅利を受け止める佐津川は、もしかしたら"姉"というより弟の理想の女性なのではないか?と思える存在感。時に魔性めいて、弟を翻弄していくようで面白い。

続いてのコンビは桑原裕子&村田充。舞台経験豊富なこのふたりは、軽快なセリフ回しでありながら、ぐっと空気が濃密になったかのような重みを冒頭から出す。"弟"がリードしていた浅利・佐津川バージョンとは対照的に、こちらは"姉"がぐいぐいリードをしていく。桑原は、弟かわいさでついからかってしまうような、茶目っ気あふれる"姉"だ。一方、村田は淡々とそんな姉をいなしていく......のだが、その前半のクールさがあるからこそ、クライマックスで見せた熱情に心をゆさぶられた。死者のはずなのに生命力にあふれた姉、対して厭世的な弟――というパワーバランスも面白く、2 パターン観ただけで、同じ戯曲でこんなに印象が違うのか! という感想を抱く。

3 組目は佐藤真弓&陳内将。陳内の"弟"は、3 組中、最も年齢設定が低そうな青年だ。ぶっきらぼうな物言いも、思春期の青年が反抗しているようにも思えて、ちょっと可愛らしい。佐藤の"姉"は時に深い母性を感じさせながらも、同級生的気安さがある不思議な存在感。この姉弟はホンワカした空気感の中にも対等さを感じ、意外と歳の近い姉弟なのかな? などと想像を膨らませて観るうちに......ラストシーンの圧倒的な"癒し"に気づけば涙を流していた。同じ物語を 3 本続けて観たというのに、ここで心を揺さぶられるのか、と自分でも驚いた。

さて、先ほど姉と弟の関係性に想像を巡らせる......と書いたが、おそらく絶対的な正解はなく、それぞれのコンビでの"正解の形"があるのだろう。一字一句かわらぬセリフを演じていても、このふたりだと物語はこうなるのか、こちらのコンビではこうなるのか、とまったく違う物語が生まれる。もちろんそれは劇場で観ても同じなのだが、映像配信だと「あれ、このセリフの印象、さっきとずいぶん違うな」と巻き戻して確認することもできて、それは今までにはなかった楽しみでもある。もし、贔屓の役者を観たいという理由で配信を観る人も、せっかくなので他のコンビも観比べてみてほしい。意外な発見があるに違いない。
そしてこれは個人的な体験ではあるのだが、私はこの配信映像を、夜遅い時間、スマホの小さな画面で観た。『シスター』は姉と弟の何気ない会話から、どんどん自己の思考へ、深く深く潜っていくような作品である。俳優たちのセリフの掛け合い、柔らかい照明、大嶋吾郎の音楽......夜の闇の中で味わう『シスター』は、とても孤独で、とてもあたたかく、ドキドキしながらも、なんだか心音を聞いているかのような安心感があった。

そしてまるで自分が"弟"の心に同調してしまうかのような、『シスター』という物語を借りて自分の心のうちを旅していたような、奇妙な一体感。劇場でのリアルな体験は何物にも勝るけれども、それでも配信は配信で、ここでしかない味わいも生まれる。この物語を"我がこと"として追体験した感覚である。今だからこその新しい『シスター』との出会いを、ぜひ、感じてほしい。

(取材・文:山岡祥)

【公演概要】

[第一回配信]6 月 25 日 18:00~7 月 1 日 23:59
佐津川愛美・浅利陽介
桑原裕子・村田 充
佐藤真弓・陳内 将

[第二回配信]7 月 2 日 18:00~7 月 8 日 23:59
貴城けい・佐奈宏紀
笠松はる・輝馬

[第三回配信]7 月 9 日 18:00~7 月 15 日 23:59
とよた真帆・伊万里 有
木村花代・多和田任益
村岡希美・近藤公園

[第四回配信]7 月 16 日 18:00~7 月 22 日 23:59
貴城けい・宇野結也
高月彩良・佐藤永典
小野妃香里・佐奈宏紀

[第五回配信]7 月 23 日 18:00~7 月 29 日 23:59
彩乃かなみ・橋本真一
宮 菜穂子・澤村國矢
池田有希子・大山真志

[第六回配信]7 月 30 日 18:00~8 月 5 日 23:59
とよた真帆・陳内 将
久世星佳・伊藤裕一
篠井英介・菅原永二

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