2019年11月12日アーカイブ

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小川絵梨子芸術監督の2シーズン目が幕を開けた新国立劇場。個人と全体(=国家や社会構造、集団のイデオロギーなど)の関係性をテーマにした"ことぜん"シリーズの第2弾は、

新国立劇場初登場のミナモザの瀬戸山美咲を演出に迎え、2011年にノルウェーで起きた銃乱射事件をモチーフにした『あの出来事』(作:デイヴィッド・グレッグ/訳:谷岡健彦)を上演。

初日を約2週間後に控えた10月下旬、稽古場に足を運んだ。

今年3月に日本でも上映された映画『ウトヤ島、7月22日』でも描かれている、ノルウェーのウトヤ島で起きた、極右思想の青年による銃乱射事件を題材にした本作。

事件の生存者である合唱団指導者の女性・クレアが、事件の輪郭を知るため、そして少年を"人間"として捉えるべく事件後、様々な関係者とひとりずつ対話していくさまを描く。

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 メインキャストは南果歩小久保寿人の2人のみで、南がクレアを演じるが、興味深いのは、小久保が犯人の少年に加えて、

クレアが対話をする人々――精神科医、少年の父親、政治家、ジャーナリスト、少年の友人など、全ての関係者をひとりで演じ分けるという点。

クレアにとっては事件後に出会う人々の顔がみんな、犯人の少年と同じに見えるとも捉えることができる。

この日の稽古では冒頭、乱射事件のシーンを含め、いくつかのアクションの動きの確認が行われ、そのうちのひとつが、

クレアのことを心配する彼女の同性のパートナーとのケンカのシーンだったが、この同性のパートナーさえも小久保がそのまま演じる。

続いて稽古が行われたのが、少年の父親、少年の思想に影響を与えたとされる本を執筆したジャーナリスト、少年が党員として属していた極右政党の政治家、そして少年が通っていた学校で共にいじめられっ子だったという同級生とのシーン。瀬戸山は、この4人とクレアの対話シーンについて「この4人で、(この作品が)何を示しているのかがハッキリ見えてくると思う」と語る。

中でも、少年の父親とのシーンは「被害者」と「加害者の家族」の対峙であり、瀬戸山は「このひと(=父親)をしっかりやらないと、この芝居の根っこができない」と特に重視。

この日の稽古でも様々なパターンを試し、議論を重ね、時間をかけて少しずつふさわしいニュアンスを付け加え、人物像を作り上げていく。

この父親のキャラクターがなかなかのクセモノ。劇中でも語られる彼の言動、態度が少年の人格にも大きな影響を与えたことは想像に難くなく、クレアとの対話の中でも、

どこかふてぶてしさ、傲岸不遜さをうかがわせる。

もちろん、自分の息子が世界を震撼させる大量殺人を起こしたということで、事件後、彼もまた厳しい境遇にあることは間違いないのだが、

瀬戸山が小久保に求めるのは、父親が感じている"つらさ"の質の表現。事件から約1年後ほどではないかという物語の設定を踏まえつつ、

瀬戸山は「現在進行形で泣き出しちゃうような状態はもう通り過ぎてると思う。そうではなく(息子や事件のことが)理解さえできていない苦しみがある」、

「モラハラおやじっぽさ」「男性優位のヒロイズム」「根がマッチョで、その呪縛に息子は苦しんだと思う」など、かなり辛辣な言葉で評し、その人物像へのヒントを小久保に与えていく。

稽古場では南も積極的に発言。日本人と欧米の人々の宗教観、"死"や"魂"といったものへの捉え方の違いや極度の哀しみや苦しさに遭遇したときの人間の感情の出し方などについて、

瀬戸山、南、小久保で語り合う姿も見られた。

本作で小久保は犯人の少年をはじめ、先述の父親以外にも異なる性別、民族、思想の人物を

クレアとの短いやりとりの中で表現せねばならず、

通常の演劇で求められるものより質、量ともに大きいだろう。

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そして、南が演じるクレアは、単に「かわいそうな被害者」などという言葉でくくれない深さを持った人物である。

もともと、難民や移民、シングルマザーなど多様な人物を集めた合唱団で指導をしていたという経歴、そして事件後も、

単なる怒りや悲しみだけを動機に関係者と対話をしているわけではなく、被害者でありながら、時に周囲から心ない言葉を浴びせられることも...。

クレアと彼女が対峙する者たちが繰り出す言葉、感情は、事件の全体像や犯人の人物像のみならず、"社会"の輪郭を浮かび上がらせていく。

ひとりひとりとの対話の積み重ねの末、最後にクレアは刑務所に赴き、少年と面会を果たす。そこで彼らはどんな言葉を交わし、何を見出すのか――?

『あの出来事』は11月13日より新国立劇場にて上演。

取材・文:黒豆直樹

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「70年代、ディスコブームの頃は日本が一番元気だった時代。僕はカッコつけたい年頃で、ジョン・トラボルタにあこがれてDJの世界に入ったんです。あの当時の熱気が蘇るミュージカルにとても期待しています」

そうギラギラと熱気をたぎらせながらマイクを握ったのは、DJ KOO。

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11月6日(水)、銀座にある都内最大級クラブ「CLUB DIANA」にて、12月13日(金)から東京国際フォーラムにて来日公演を迎えるミュージカル『サタデー・ナイト・フィーバー』のプレスイベントが開催され、その壇上で熱く語った。

彼の言葉に大きくうなづいたのはモデルのアン ミカ。いつになくセクシーな表情で思い出を語った。

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「私が初めてヒールを履いたのは、ディスコでした。まだモデルになる前です。当時、ディスコはかっこいい大人が集まる社交場。男性とのチークタイムで、私は大人の世界を知りました」

その熱っぽさは、気持ちがすっかり70年代にタイムトリップしていたためだろう。この日、彼女がまとっていたのは、当時ながらのスパンコールドレス。肩に真っ白なマラボーを揺らすゴージャスな装いは、確かに大人の社交場という表現の相応しいものだった。

さて、オープニングトークから2人をここまで熱くしたこのプレスイベント。実は、ただの記者発表ではなかった。会場は巨大なミラーボールが輝く銀座の老舗CLUB。そのフロアには作品のファンで結成された盛り上げ隊がひしめいていた。紫や赤の原色のミニドレスや、花柄のパンタロンに水玉のワンピースなど、思い思いの70年代ディスコファッションの身を包み、今からパーティを始めようというムードに湧いていた。

そんな彼、彼女たちのすぐ横、この日ばかりは、プレス席の雰囲気もいつになくそわそわしていたように思う。この中に1977年公開の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』を知るものが何人いるのかはわからない。でも、いつの間にか盛り上げ隊との境界線が失われ、誰もが前のめりになって、誰もがその人の登場を待ち望んでいた。

そうしてついにその人はやってきた。ステージのさらに上、2階に通じるステップから大きく手を掲げてミュージカルの主演、リチャード・ウインザーがやってきた。

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英国公演を終えたばかりという彼は、想像以上にジョン・トラボルタそのものだった。DJ KOO、そしてアン ミカさえ、胸元をチラりとはだけた純白のディスコファッションの身を包む彼の美貌に釘づけになった。見渡せば、フロアの盛り上げ隊、そしてプレス席の女性陣までも皆、同じ目をしている。

いやいや、これはプレスイベント。そういさめようとする心に、「ディスコは非日常」と、DJ KOOが笑う。追い討ちをかけてアン ミカの言葉も蘇る。彼の登場の直前、アン ミカが語ったその興奮は、「彼はね骨がセクシーなの。しかも、表情も繊細でね...」。

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大きく共感できた。耳からアゴのかけてのラインが、トラボルタを彷彿とさせた。しかも身のこなしのかっこいいこと。ステージに上がってすぐ、リチャードによるディスコダンスのレクチャータイムが始まったのだが、肝心のダンスより彼自身のダンスが気になって仕方がない。一挙手一投足に女性ファンが黄色い声援を飛ばした。今から、この盛り上がりでは、ミュージカル当日はみんな(筆者も含め)失神してしまうのではないか? 

さて、レクチャーに続いて、本番さながらのディスコタイムが始まった。

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DJブースにはDJ KOO、ステージ中央にはリチャード、センターにはアン ミカ。流れる音楽はもちろん、名曲「サタデー・ナイト・フィーバー」。もう目も、耳も幸せすぎる瞬間だった。リチャードは全身から汗をほとばしらせ、アン ミカは恍惚の表情でカップルダンスに溺れ、その熱気に負けじと、盛り上げ隊の皆さんも踊り狂った!

さて、この熱いディスコタイムは、これから誰もが体験できる。ミュージカルの開催中、公演のカーテンコールの後に開催されるのだ。ダンスの経験なんて関係なし。熱気に触れたら、きっと誰もが勝手に踊り出してしまうだろう。なぜなら「ディスコは非日常!」なのだから。

さて、最後に3人のミュージカルにかける思いをお伝えしよう。

「キャスト一同、皆、日本に来るのを楽しみにしています。今日のイベントを通じて、日本の素晴らしさを体感しました。ミュージカルでは、若者たちの人生のエネルギー、悩みをどう解決していくのかを楽しんでいただきたいと思います」(リチャード・ウィンザー)

「リチャードは、髪の先、指の先、心の底までハッピーにしてくれるスーパーダンサー。僕も、側で観ていて一つ一つの動きにしびれました! そもそも、サタデー・ナイト・フィーバーという作品は日本にディスコブームを巻き起こし、今でも日本の音楽シーンに影響が続く名作です。今回のミュージカルは世界中を巻き込んで、40年前の熱気を超えて盛り上がるんじゃないかと思います。日本から世界に元気を送るミュージカルになる事を期待しています。僕は20歳になる娘と一緒に楽しむ予定です!」(DJ KOO)

「制作発表ってかしこまってるものなんですけど、散々踊ってみんな一つになって、ディスコタイムで盛り上がって(笑)。今日のこの勢いを体感して、きっと今回のミュージカルを通じて、日本全体がまた元気になるんじゃないかと思いました。作品では、ダンスシーンはもちろんかっこいいと思いますが、若者の葛藤や悩みや成長もしっかり描かれているいう事。人生って悩むからこそ、楽しみを味わえる、そのこともしっかり感じられると思います。きっと、1回観たら何度もきたくなるんでしょうね。家族や友達など、メンバーを変えて楽しみましょう」(アン ミカ)

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こうして、前代未聞の熱いプレスイベントは幕を閉じた。次に幕があがるのはいよいよミュージカルの本番だ。果たしてどんな興奮が待っているのか、ドキドキが止まらない。

ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」は、2019年12月13日(金)〜29日(日) までの全22回公演。会場は東京国際フォーラム・ホールC。チケットは発売中。

(取材・写真・文=浅水美保)

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劇団四季の人気ミュージカル『キャッツ』が11月11日、日本上演36周年を迎えた。
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『キャッツ』は"都会のゴミ捨て場"を舞台に、24匹の猫たちの生き様を描いていくミュージカル。日本では1983年に東京・西新宿のテント式仮設劇場で産声をあげたが、これは日本初のロングラン公演となり、日本の演劇シーンの記念碑的作品となった。『メモリー』『ジェリクルソング』など、アンドリュー・ロイド・ウェバーが手掛けた珠玉の音楽と、個性的な猫たちのキャラクターも愛される理由。11月11日時点での国内総公演回数は10220回で、これはウエストエンドの8950回、ブロードウェイの7485回をはるかに超えた記録となっている。

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