■音楽劇『ライムライト』vol.3■
チャップリン晩年の傑作映画として名高い『ライムライト』 。
その名作を2015年に世界で初めて舞台化、好評を博した作品が、4年ぶりに上演されます。
映画でチャップリンが演じた老芸人カルヴェロに扮するのは、初演に引続き石丸幹二。
カルヴェロと心を通わすバレリーナ テリーに実咲凜音、テリーに想いを寄せる作曲家ネヴィルは矢崎広が演じます。
ノスタルジックで美しく、切ない物語。
この作品に今回の再演から参加するネヴィル役、矢崎広さんにお話を伺ってきました!
◆ 矢崎広 INTERVIEW ◆
●映画『ライムライト』と、今回の舞台『ライムライト』
―― お稽古もかなり進んでいるかと思いますが、現在の稽古場はどんな雰囲気でしょう。
「いい緊張感があります。張りつめた空気がありながら殺伐としているわけではない、すごく良い雰囲気ですよ。本当に『ライムライト』の空気感という感じでしょうか。ゆったりと、でも繊細に...みたいな感じです」
―― 稽古が始まる前に原作であるチャップリンの映画をご覧になったと伺いました。どんな印象を受けましたか?
「70年近く昔の映画ですが、今見てもすごく面白い。というより、年齢を重ねるごとにどんどん響く作品になっていくのだろうと思いましたし、今の自分にも響くところがたくさんありました。僕も役者をやっているので、芸人カルヴェロの生き方、バレリーナとして再起するテリーの姿に感じ入るところがありますし、僕の演じる作曲家ネヴィルの姿にも、演じ手として共感するメッセージ性があります。それに、主人公は芸人ですが、どんな職業の方にも当てはまることが描かれているんじゃないかなとも思います。時代の移り変わりによって、今までの技法が通用しなくなっていく。身近なところでいえば、紙ではなくどんどんWEBに移行する世の中で、コンテンツをうまく使っていくにはどうすればいいのか。僕はツイッターやブログ、最近ではインターネットラジオなどもやっていますが、何が新しいのか、何がユーザーにひっかかるのか、そんな "ついていけてなさ" を感じることもあります。この作品は、何を大切にしてお仕事と向かい合っていけばいいのか。何が愛なのか。何を支えに人は生きていくんだろう? そんなことを色々と考えさせられる話だなと思いました」
―― 稽古場で拝見して、初演からずいぶん変わった部分もあるな、と思いました。
「今回は演出の荻田(浩一)さん、脚本の大野(裕之)さんとで構成を新たにされていますし、音楽の入り方など編成を変えている部分もあります。ご覧になる方にとって感じる部分が変わってくるんじゃないかなと思います。観やすくなり、かつ真に迫るものになったというか。映画『ライムライト』の世界観を大事にするという部分は変わっていないのですが、初演で抽象的に時代の説明をしていた部分を"省く"というのではなく、"他のシーンを綿密に"したという感じです。『ライムライト』らしさがより濃くなった」
―― 『ライムライト』らしさ。
「それはつまり、カルヴェロですよね。カルヴェロというひとりの人物をフィーチャーした。チャップリンの映画である『ライムライト』をやろうとしているのではなく、カルヴェロの物語......彼とテリーの心を追った物語になっていると思います」