小川絵梨子演出で、繊細かつ心に染みる名作誕生。ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』上演中

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ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』
が現在、東京・シアタークリエで上演中だ。2015年にトニー賞5部門を受賞した作品を、新国立劇場次期芸術監督就任も予定されている気鋭の演出家、小川絵梨子が演出する注目作。小川はこれがミュージカル初演出。出演は瀬奈じゅん吉原光夫大原櫻子紺野まひる上口耕平横田美紀ら。05t_1651.jpg04_0155☆.jpg


原作は、アリソン・ベクダルの自伝的コミック。レズビアンである漫画家・アリソンは、ゲイである父ブルースが自ら命を絶った43歳という年齢になり、父との思い出、家族との思い出をたどる記憶の旅に出る。記憶の折々の場面で、父は何を考えていたのだろうか。そして死の瞬間は何を思っていたのだろうか......。05t_1605.jpg

父の思い出をたどる旅は、自らの人生を振り返る旅路でもある。瀬奈じゅん扮する現在のアリソンは劇中の大半において、常に傍観者のような視点で舞台上に立つ。そして、劇中には小学生のアリソン(笠井日向/龍杏美のWキャスト)、大学生のアリソン(大原櫻子)も登場。3人の女優が同じ女性の違う年代を紡ぐと同時に、時には一緒に同じ空間に立つ、演劇として非常に面白い構造。瀬奈は良い意味で力の抜けたナチュラルな立ち姿で、過去の自分に、家族に、温かい眼差しを注ぐ。それもそのはず、この家族はセクシュアル面では大多数ではないかもしれないが、きちんと愛情もコミュニケーションもある一家なのだ。それは、小学生時代のアリソンと弟のクリスチャン(楢原嵩琉/若林大空のWキャスト)、ジョン(阿部稜平/大河原爽介のWキャスト)に扮する3人の子役たちが、はつらつと愛らしく演じる姿からたっぷり伝わってくる。彼らが歌う『おいでよファン・ホーム』は、シュールだけれど楽しいナンバー。伸び伸びと、しっかりとした歌唱と楽しいダンスで子どもたちが魅せた。ちなみにこのミュージカル、音楽も秀逸で、トニー賞最優秀楽曲賞にも輝いている。
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そして、自らのセクシャリティに気付く大学生時代もよい。大原の演じるアリソンは、少しぶっきらぼうだけれど、思春期特有の繊細な傷付きやすさと、だからこそ持つ優しさがきちんと存在している。アリソンの恋人であるジョーンに扮する横田美紀の懐の大きさも良く、学生時代を担うこのふたりからは、瑞々しさが立ち上る。そして寮で暮らし家族と離れてくらすここでも、アリソンは父と電話で、手紙で、コミュニケーションをとり続ける。それでも、どこか軋みが出てきてしまうのは仕方のないことなのか。家族といえども別の人間。全てが理解できるわけでもない......。05t_1324☆.jpg

キーマンである父・ブルースは、吉原光夫。アリソンとは違い、ゲイであることを隠すことを選んだ彼。妻もいて子どももある、しかし同性に欲望が向かってしまう。複雑な内面を押し殺した難役で、身勝手さの中にも哀しみが伝わる、不思議と目が離せない存在だ。死の直前のナンバー『世界の境目』は、涙なしでは見られない圧巻のパフォーマンスだった。ほか、家族を繋ぐ母・ヘレンの紺野まひる、ブルースとの関係を匂わせる存在であるロイを演じる上口耕平、それぞれが丁寧に役と向き合っているのが伝わってきた。ベグダル家は特殊なところもあるかもしれない、だが家族間の問題はきっと、どの家族にもある。観ると、あなたもきっと自分の家族のことを、もしくは親のことに思いをはせるだろう。ほかではちょっと見ないような繊細な、それでいて心に染みるミュージカル。小川絵梨子の理知的な演出がうまく作品とフィットし、傑作が誕生した。04_0326.jpg05_1019.jpg05_0704.jpg

公演は2月26日(月)まで。チケットは発売中。05_0781.jpg

取材・文:平野祥恵
写真提供:東宝演劇部


【公演情報】
2月26日(月)まで上演中 シアタークリエ(東京)

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