11月10日(金)下北沢 本多劇場にて、来年25周年を迎える劇団ナイロン100℃の第44回公演『ちょっと、まってください』が開幕した。三宅弘城、大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、峯村リエ、村岡希美...といった劇団の主力俳優が集結し、水野美紀、遠藤雄弥、マギーという実力派客演陣が加わった劇団公演としては3年ぶりの新作。『グッドバイ』『8月の家族たち August:Osage County』『キネマと恋人』『陥没』など、近年話題作を次々と発表している作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、自身のホームである劇団で、いま自分が一番やりたい事を、KERA作品の神髄を表現出来る鉄人メンバー で上演するとあって注目が集まる。
物語は、どこの国かははっきりしないが、クラシカルな洋装に身を包んだ、裕福な家庭の居間から始まる。金持ちの父親(三宅弘城)、母親(犬山イヌコ)、息子(遠藤雄弥)、娘(峯村リエ)、使用人(マギー)などが四方山話に花を咲かせる。一方の屋外には宿無しの乞食の家族。その息子(大倉孝二)と娘(水野美紀)が、何やら込み入った話をしている。全く環境の違う2つの家族の日常の中に、少しずつ入り込んで来る異物感。この二つの家族にどんな接点が生まれ交差してゆくのか...。
物語が進んでゆくに従い、登場人物達を隔てている区別の不安定さ、定義付けしようとすれば煙に撒かれるような感覚、傍観する観客の観点も足下が揺らぐような、不思議な感覚にとらわれる。
KERAは、今公演の発表時には、別役実的な不条理喜劇を創りたいとコメントしていたが、別役作品へのパスティーシュもありながら、カフカ的なところもあり、だが、やはり唯一無二のケラリーノ・サンドロヴィッチの世界観が、そこにある。不条理な会話一つ一つに目を離せない密度があり、キャスト陣の技術の豊かさが堪能出来る作品に仕上がった。時に笑い、時に困惑しながら行き先不明の航海を楽しんでほしい。
公演初日を迎え、劇団員・三宅弘城は「(初日を迎えるまでは)結構、切羽詰まっておりましたが、力を合わせて一つの作品を作り上げていくのは劇団ならではだなと思いました。今は無事に初日を迎えることができてホッとしています。(お客様が入り)どんな風にご覧になり、どんな風に笑いがくるのか、楽しみだったのですが、喜んで頂けた感じだったので良かったです。爆笑するタイプのものとまた違う面白さがある作品だと思いますので、是非、劇場に来て頂けたらと思います。来年劇団は25周年、自分が出る作品は『睾丸』(仮題)という作品なので、タイトルに負けないように頑張りたいと思います」と、初日の感想を安堵した様子で語り、来年25周年を迎える劇団への所感を述べた。
公演は、12/3まで下北沢 本多劇場で公演。その後、各地を巡演する。チケットは発売中。
<公演概要>
ナイロン100℃ 44th SESSION『ちょっと、まってください』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:
三宅弘城 大倉孝二 みのすけ 犬山イヌコ 峯村リエ
村岡希美 藤田秀世 廣川三憲 木乃江祐希 小園茉奈/
水野美紀 遠藤雄弥 マギー
2017年11月10日(金)~12月3日(日)下北沢 本多劇場 他各地