やはり注目は、2007 年にトニー賞最優秀演出賞も受賞したマイケル・メイヤーさんの斬新で大胆不敵な演出。それが日本で初めて観ることができるというのだから、期待しちゃいますよね。
シェイクスピアの名作である『お気に召すまま』も、マイケルさんはまず時代設定からアレンジ。1967 年のアメリカを舞台に、"アーデンの森"はサンフランシスコで10 万人のヒッピーが集った社会現象Summer of Love 、"宮廷"は当時のワシントンDCとして描かれるのです!
1967年のアメリカということで、衣裳は宮廷にいるオーランドー(ジュリアン)やオリヴァー(横田栄司)は素敵なスーツ姿、同じくロザリンド(柚希)やシーリア(マイコ)もポップなデザインのワンピース。お揃い風のワンピース姿、すごくかわいかったです! そしてアーデンの森で暮らす人々のカラフルなヒッピースタイルは、小物までおしゃれでした~。
舞台セットにはサイケデリックなイラストがあしらわれ、音楽も『夢のカリフォルニア』や『White Rabbit』など当時を象徴する楽曲だし、劇中には伊礼彼方さんがベースを弾きながら歌うシーンなどもあって...そこに広がるのはシェイクスピアのイメージとはかけ離れた世界! ですが台詞は原作そのまま生かされているんです。例えば「アーデンの森」は、それがSummer of Loveでもあくまで「アーデンの森」と話される、ということです。
一見ちぐはぐのようですが観ていると違和感がない...というかむしろこの『お気に召すまま』が描くものが際立っているように感じました。
舞台となる1967年はマイケルさんが「アメリカが一番自由で幸せだった」と話す時代です。そんな自由と幸せの時代で生きるロザリンドを柚希さんがキュートに熱演。恋のせいで泣いたり笑ったり怒ったり喜んだり...一秒ごとにコロコロ変わる表情がとっても魅力的でした! 中でも"柚希さんの男装姿"という、ある意味男性以上にイケメンな状態で、オーランドーの一挙手一投足に反応する"恋する女の子"の顔は絶品! 観ているこちらまで幸せになっちゃいますよ。
そのほかにも、羊飼い・シルヴィアス(平野良)の"羊"が時代設定に合わせてかわいらしいナニカになっていたり、ジェークイズ(橋本さとし)の名台詞が思わぬ状況で発せられたりと、楽しいアレンジがあちこちに散らばっている本作。
新しい年の幕開けにピッタリな傑作喜劇『お気に召すまま』は、2月4日(土)まで東京・日比谷 シアタークリエにて上演中です!
文 中川實穗