■2016年版『ミス・サイゴン』 vol.6■
1989年9月20日にロンドンで世界初演された『ミス・サイゴン』は、2014年に25周年を迎えました。
ご存知"新演出版"も登場し、評判を呼んでいるこの作品。
2014年9月、ロンドンのプリンス・エドワード・シアターで上演された25周年記念公演が、待望の映画化になります。
映画はこの特別な一夜を最新の技術を駆使し撮影、さらに公演後には映画のために観客を入れずに撮った追加撮影も加った(通常ではありえないアングルも!)圧倒的な迫力の映像で、臨場感ある『ミス・サイゴン』の世界を切り取っています。
そして25周年記念スペシャル・フィナーレには、特別ゲストとしてオリジナルキャストであるジョナサン・プライス(エンジニア役)、レア・サロンガ(キム役)、サイモン・ボウマン(クリス役)が登場。新旧キャストの共演で行われたこのプレミアムなショーも、もちろんこの映画には収録!
日本では2017年3月よりTOHOシネマズ 日劇での公開が発表されているこの映画『ミス・サイゴン:25周年記念公演inロンドン』が、10月2日、日本最速プレミア上映として公開されました。
この上映を記念したトークショーに、10月19日より開幕する日本版『ミス・サイゴン』より、ダイアモンド☆ユカイさん、キム・スハさん、中野加奈子さんが登場。
スハさんと中野さんは、このロンドンの25周年記念公演に出演しています!
本日はそのトークショーンの模様をレポートします。
この映画、みなさんはひと足先にご覧になったとのことで、感想をユカイさん、
「自分もエンジニア役を10月からやりますので、楽しみに観ました。『ミス・サイゴン』は25年以上の歴史がありますから、やっぱり初演の(エンジニア役の)ジョナサン・プライスのイメージが強い。日本だと市村正親さんと...本田美奈子.さんのイメージが強いかな。でもこの映画を観て思ったのは、今まで思っていたイメージよりも、『ミス・サイゴン』自体が、時代とともに進化しているんだなということ。ロックバンドで言うとローリングストーンズみたいなね! そのくらい、毎回進化している。その進化の一番新しい姿をこの映画で観られる」
と語りました。
ちなみにユカイさん、この25周年記念公演でエンジニアを演じているジョン・ジョン・ブリオネスさん(フィリピン出身の51歳。舞台デビューは1989年のロンドンオリジナル版『ミス・サイゴン』)をリスペクトしているとのことで...。
「エンジニアを演じるということで、YouTubeとかで歴代のエンジニアを見たり、色々リサーチしたんですよ。やっぱり初代のジョナサン・プライスはすごい。そのイメージがガンっとあって、でもその中でジョン・ジョンを見たときに、これは新しい、何か今までのイメージを塗り替えるパワーと実力があり、"こんなこともやっちゃうの?"ということをやっていて、魅力がある。そこに勇気付けられました。自分はロックンローラーですから。帝劇では20何年も『ミス・サイゴン』を観ていらっしゃる方がいる中で、(僕のエンジニアは)「なんだアイツ」というか(笑)、賛否両論もあると思うんですが、ジョン・ジョンを見ると、やっぱり新しい風を吹かすくらい、思い切ってやってみようと前向きな気持ちになりました。大ファンですよ」と、その魅力を話します。
▽ ダイアモンド☆ユカイさん。この日の上映は「日本最速上映ですよ!3倍速で流れますよ!」というジョークを(笑)。
そのジョン・ジョンさんと共演していたキムさんは「ユカイさんがおっしゃったように、ジョン・ジョンさんはエネルギーに溢れた方です。近くで演技をしたときにまなざしの力強さが非常に印象に残りました。実際には私より背が低い方なんですが、エネルギーが力強いので、舞台でとても大きく見える。実際に共演してジョン・ジョンさんは非常に魅力的で尊敬できる俳優さんでしたが、隣にいらっしゃるユカイさんも、新しいエンジニアですごく魅力的なので私も楽しみです。皆さん、ユカイさんのエンジニアを観ないと後悔しますよ!」
と話したところで、ユカイさん、ちょっと照れたように「ありがとう!」。
同じく中野さんも、
「ジョン・ジョンとは2003年版のときも一緒で、その時もエンジニアをやっていたのですが、その頃からさらにパワーアップしている。リハーサルしながらも、ドリームランドのシーンなど、ひとりで色々なことを試しているんです。オープンな感じで、何事にもチャレンジする人です。でもプライベートではとても素敵なお父さんで、息子さん・娘さんも同じように両親の足跡をたどって演劇界に足を踏み入れようとしているんですよ(笑)。私たちもエネルギーをもらえて、頑張れる。一緒に舞台に立てたことを感謝しています」
と話していました。
さて、そのキムさんと中野さんは、前述のとおり、ロンドン版の『ミス・サイゴン』の舞台に立っていたおふたり。そのふたりが帝劇版に出演するのも、今回の話題のひとつでもあります。
中野さんは2001年から、そしてキムさんは2015年からイギリスの『ミス・サイゴン』に出演。
▽ キム・スハさん。日本語で「キム役のキムさんです!」とご挨拶していました。持ちネタ?(笑)
「私は実際には25周年のその年(2014年)には出演しておらず、2015年から参加したのですが、(映画用の追加撮影に参加し)記録として残る映画に参加できたこと、とても光栄に思います。
(2016年にはキム役のファーストカバーになり)実際には30回以上、キムとしてウエストエンドの舞台に立たせていただきました。映画のエピソードと交えてお話しますと、この映画の撮影は3日間くらい収録したのですが、午前中から収録がはじまり、夜の公演の前までずっと撮影していたんです。その時にキムのほかの役者さんたちが風邪になってしまい、その3日間、映画の撮影のあと(通常公演)は全部キム役を私が演じたのですが、とても大変だったという思い出があります(笑)。
メインはアンサンブルで出演していて、カバーでキムとして入っていたのですが、毎回毎回とても幸せでした。舞台に立つたびに新しいキムになるというか、心境が変わり、印象が変わっていました」
▽ 中野加奈子さん。前髪がジジになってますね!
「ロンドンでは2004年の新演出版からセカンドカバーとしてでジジ役で出演していました(2001年~2003年は英国ツアー版に出演)。セカンドカバーなのであまり舞台に立つことはないのですが、このあいだのロンドン公演では16回くらいジジ役を務めました。一生経験できないような貴重な経験を25周年のときにさせていただいて、とても感謝しています。25周年記念だった2014年の9月22日は、オリジナルのキャストの方が集まって、一日中、同窓会のようにすごく盛り上がったのですが、(記念公演とは別に)私たちには私たちの公演があって、そのあとに25周年の特別パフォーマンスがあったんです。映画にも収録されていますが、それは振り付けが少し違ったりしていましたので、1日、すごく集中していましたね。すごくエキサイティングな1日だったので...覚えていないほどです。1日、爆発していました(笑)。
(追加)撮影の日は、私たちは8時くらいからスタートだったのですが、クレーンとかを入れるために客席を平らにしなくてはいけないので、裏方の方は早朝から入っていました。その3日間は休みがないほどでした。映像は近距離で撮られるので、本当に「集中・集中!」という感じで、これもすごい経験でした」
そしてロンドン版には出演経験があるとはいえ、帝劇には初めて立つおふたり。
キム「本当にとても緊張しています。日本のミュージカル俳優だったらそこが最終の聖地であり、その聖地を目標に毎日頑張るというような場所だと聞いています。とても緊張はしていますが、そういった場所に立って演技が出来ること、とても光栄に思い、それに感謝しながら毎日稽古しています。観客の皆さんに私が演じる、キム・スハだけのキムをご覧いただけるように、稽古に励みたいと思います」
中野「わたしは日本人なのですが、10代の頃からロンドンに行ってまして、この歳になって初めて日本で舞台に立ちます。帝劇に立てるというのは素晴らしい経験で、このチャンスを頂いたことに感謝していますし、同時に『ミス・サイゴン』ファミリーが世界中にいますが、日本のサイゴン・ファミリーに迎え入れていただけて、素晴らしいキャストたちと一緒に演じられることはすごくラッキーなこと。毎日、精一杯やらせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」
そして同じく初めて帝劇に出演、エンジニアを演じるユカイさん。
改めてこの作品の魅力を
「やっぱり『レ・ミゼラブル』と並んで二大ミュージカルと呼ばれていますが、『ミス・サイゴン』はベトナム戦争の時代で、それは自分が小学生の頃の話。身近な感覚があって、リアリティをすごく感じます。ストーリーも、メインのキムとクリスの悲恋と並んで、狂言回しであるエンジニアの物語が密接に絡んでくる。悲しい話ですが、なんともいえないよく出来た話。そして何と言っても音楽がいい。最初に聴いたときにこれはプログレか!? って思ったくらい。美しいメロディであり、『アメリカン・ドリーム』みたいなぶっとんだ曲もあり。聴いているだけで涙が出ちゃうほど感動する、音楽の強い力を感じさせてくれるのが魅力」と語り、
さらに自身が目指すエンジニア像は
「正直、ミュージカル自体が初めてなので、ハイハイから始まっている。いまやっと歩けるようになって、あとは初日までには走れるようになるところまでいこうと思っています。やっぱり自分はロックンローラーだし、このベトナム戦争の時代に影響を受けたロックが一番好きなので、そういうことも含め、自分の人生のすべてをここにぶつけていこうと思います。これに懸けています。ロックのすべてをかけたエンジニアをエンジてみたいと思います。...親父ギャグです(笑)。
上の子どもが小学校1年生になって、この作品は小学生から観られるので(未就学児童入場不可のため)、妻が連れてくるといっています。大人向けのミュージカルの初体験が、パパの演じる『ミス・サイゴン』になることは間違いないです。観ても意味はわからないと思うのですが、素晴らしい音楽だし、演劇の、ミュージカルのサムシングを感じてもらいたいなと思っています」と話しました。
この3人が、日本版『ミス・サイゴン』に新しい風を吹かすのは間違いないですね。
2016年版サイゴン、開幕は今月です!
イベント最後のユカイさんのご挨拶は
「これ(映画)を観て、10月から始まる帝国劇場『ミス・サイゴン』にも来てくださいね!よろしくお願いします。"さぁ、のったのった!ウェルカム・トゥ・ドリームランド!"サンキュー!」
でした!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)